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葬儀社の見積書には、お布施の欄がありません。
葬儀の総額を出したつもりでいて、あとから「お寺にはいくら包めば」と気づく。そこで初めて、どこにも金額が書かれていないことを知ります。
鎌倉新書が2026年3月に行った調査では、葬儀で最も困ったことの1位が「お布施の相場・マナーがわからない」でした。2位の「葬儀の知識やマナーがわからない」を大きく上回っています。
困るのには理由があります。お布施は料金ではないので、定価が存在しないからです。
それでも、実務で使われている目安はあります。場面別の金額から、寺への聞き方、袋と渡し方まで順に整理します。
結論|先に3つ

1. お布施に定価はない
料金ではなく、寺への謝礼です。「お気持ちで」と言われるのが通常です。
2. 場面別の目安はある
通夜・葬儀は15万〜50万円、四十九日と一周忌は3万〜5万円、納骨は1万〜3万円が実務の幅です。
3. 迷ったら寺に聞く
聞くこと自体は失礼ではありません。檀家総代や同じ寺の親族に聞く手もあります。
お布施は葬儀社の見積もりに入っていない
葬儀プランの資料を取り寄せると、何が含まれて何が別枠かが分かります。お布施を別に見ておかないと、総額が2〜3割ずれます。
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お布施は「料金」ではない
ここを押さえておくと、金額の考え方が変わります。
お布施は、読経や戒名という役務に対する対価ではありません。本来は仏教の修行のひとつで、寺の護持のために差し出すものとされています。
だから寺は金額を言いにくい
「読経1回いくら」と定めると、対価になってしまう。多くの寺が「お気持ちで」としか答えないのは、この建前があるからです。
払う側から見れば不親切ですが、寺の側にも言えない事情があると知っておくと、聞き方を工夫できます。
税金の扱いも料金とは違う
寺が受け取るお布施は、宗教活動による収入として法人税がかかりません。領収書が出ないことがあるのも、このためです。
ただし、領収書がなくても相続税の控除には使えます。 日付・金額・寺院名をメモに残しておけば足ります。この点は後の節で詳しく扱います。
場面別の目安

実務で使われている幅です。地域・宗派・寺との付き合いの長さで動きます。
| 場面 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 通夜・葬儀・告別式(戒名を含む) | 15万〜50万円 | 戒名の位で大きく動く |
| 読経のみ(戒名を頼まない) | 10万〜30万円 | |
| 直葬の炉前読経 | 3万〜5万円 | 火葬炉の前で10分前後 |
| 初七日(繰り上げ) | 3万〜5万円 | 葬儀と一括のこともある |
| 四十九日 | 3万〜5万円 | |
| 納骨 | 1万〜3万円 | 四十九日と同日なら加算 |
| 開眼供養 | 1万〜3万円 | 本位牌・墓石に魂を入れる |
| 一周忌 | 3万〜5万円 | |
| 三回忌以降 | 1万〜5万円 | 回を追うごとに下がる傾向 |
| 閉眼供養(仏壇・墓の処分) | 1万〜5万円 | |
| 卒塔婆料 | 1本3,000〜1万円 | お布施とは別に包む |
この表は上限と下限の幅が大きく見えますが、実際に動かしているのは葬儀のお布施だけです。 四十九日から先は3万〜5万円に収まることがほとんどです。
葬儀が15万〜50万円と開くのは、次の節で扱う戒名が理由です。
葬儀のお布施は、戒名で動く

葬儀のお布施には、読経料と戒名料が含まれています。分けて請求されることもありますが、多くは一括です。
戒名の位と目安
| 位(男性/女性) | 目安 |
|---|---|
| 信士/信女 | 10万〜50万円 |
| 居士/大姉 | 50万〜80万円 |
| 院信士/院信女 | 80万円〜 |
| 院居士/院大姉 | 100万円〜 |
多くの家は信士・信女です。 院号がつくのは、寺に長く貢献してきた家や、寄進の実績がある家に限られます。
呼び方は宗派で違う
浄土真宗では戒名ではなく法名といい、「釈○○」の形をとります。位による差は原則ありません。日蓮宗では法号といい、「日」の字が入ります。
親の宗派が分からないときは、仏壇の位牌や過去帳を見てください。葬儀社に「宗派が分からない」と伝えると、判断がつかないまま進むことがあります。
戒名を頼まないこともできる
菩提寺がなく、納骨の予定もないなら、戒名を頼まない選択もあります。読経だけなら10万〜30万円です。
ただし菩提寺があるのに戒名を他所でつけると、納骨を断られることがあります。 墓が寺にあるなら、先にその寺へ相談してください。
四十九日・納骨・一周忌
葬儀が終わったあとの法要は、金額が落ち着きます。
四十九日は3万〜5万円
忌明けの法要です。ここに納骨と開眼供養が重なると、その分が乗ります。
| 内訳 | 目安 |
|---|---|
| 四十九日の法要 | 3万〜5万円 |
| 納骨 | 1万〜3万円 |
| 開眼供養(本位牌・墓石) | 1万〜3万円 |
| 合計 | 5万〜11万円 |
3つを同日にまとめると、1回の支払いが10万円前後になります。 別々の封筒に分けるか、一括にするかは寺に確認してください。
一周忌から先
一周忌は3万〜5万円。三回忌以降は1万〜5万円で、回を追うごとに下がっていくのが通例です。
七回忌を過ぎると1万〜3万円に落ち着き、参列者も家族だけになっていきます。
納骨先が決まっていないなら、四十九日の前に動く
墓石・納骨堂・樹木葬・墓じまいの費用を無料で比較できます。納骨の時期が決まると、お布施を包む回数も見通せます。
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御車代と御膳料

お布施とは別の封筒で用意します。ここを一緒にしてしまう人が多くいます。
| 名目 | 目安 | 必要な場面 |
|---|---|---|
| 御車代 | 5,000〜1万円 | 僧侶が自分で会場へ来るとき |
| 御膳料 | 5,000〜1万円 | 会食をして僧侶が参加しないとき |
不要になる場面
- 御車代は、こちらが送迎する場合やタクシーを手配した場合は不要です
- 御膳料は、僧侶が会食に出る場合は不要です。会食そのものをしないなら包みます
- 寺で法要を行い、そのまま解散するなら両方とも不要です
遠方から来てもらうとき
新幹線や飛行機を使う距離なら、実費を調べて上乗せします。1万円では足りません。先に交通手段を確認しておくと、当日に慌てません。
4割が「決め方がわからない」と答えている

全日本仏教会と大和証券が2022年度に行った調査(回答6,184)で、お布施をどう決めているかを聞いています。
| 決め方 | 割合 |
|---|---|
| 家族・親族の話を参考に納めている | 28.3% |
| お寺からの明示を参考に納めている | 11.2% |
| 自分以外の家族・親族が納めている | 6.2% |
| 前回(過去)の金額を参考に納めている | 6.2% |
| 関係者に聞いた金額を納めている | 3.9% |
| 葬儀会社などに相談して納めている | 3.5% |
| わからない | 39.1% |
約4割が「わからない」と答えています。 決め方を持っている人でも、最も多いのは親族に聞くという方法でした。
納得している人は半数
同じ調査で、決め方がある人(3,767人)にお布施額への納得感を聞いたところ、「納得感がある」と答えたのは49.8%でした。半数は納得しないまま納めています。
そして金額を寺が明示することを「必要」と考える人は53.5%。菩提寺に満足している層に限ると72.9%まで上がります。
聞きにくいと感じているのは自分だけではない、というのがこの数字の意味です。
寺に直接聞いてよい
前の節の数字が示すとおり、多くの人が明示を望んでいます。聞くこと自体は失礼ではありません。
聞き方を変えるだけでよい
- ✕「おいくらですか」
- ○「皆さんどれくらいお包みでしょうか」
- ○「先代のときはいくらでしたでしょうか」
金額を決めるのは寺ではなくこちら、という建前を崩さない聞き方です。これなら多くの寺が目安を答えます。
寺以外に聞く手もある
| 聞く相手 | 分かること |
|---|---|
| 檀家総代 | その寺の慣習。いちばん確実 |
| 同じ寺の親族・近所 | 実際に包んだ額 |
| 葬儀社 | 地域の相場。寺の個別事情は分からない |
| 過去帳・法要の控え | 前回いくら包んだか |
実家の仏壇の引き出しに、前回の法要の控えが残っていることがあります。 金額を書き留めている家は少なくありません。
包み方と表書き

香典とは作法が違います。弔事ではなく、僧侶への謝礼だからです。
| 項目 | お布施 | 香典 |
|---|---|---|
| 袋 | 白封筒または奉書紙 | 不祝儀袋 |
| 水引 | なし(あっても白黒・双銀) | 黒白または双銀の結び切り |
| 墨 | 濃い墨 | 薄墨(四十九日まで) |
| 札 | 新札でよい | 新札は避ける |
| 表書き | 御布施 | 御霊前・御仏前 |
書き方
- 表の上段に「御布施」、下段に施主の姓またはフルネーム
- 中袋があれば、表に金額(漢数字)、裏に住所氏名
- 中袋がなければ、封筒の裏に金額と住所氏名
金額は「金参萬圓」のように旧字体で書くのが正式です。 ただし「金30,000円」でも問題として扱われることはまずありません。
御車代・御膳料の袋
それぞれ別の白封筒に「御車代」「御膳料」と書きます。お布施と同じ封筒にまとめないでください。
渡すタイミング

渡す場面は2つあります。どちらでも構いません。
| タイミング | 場面 |
|---|---|
| 法要の前 | 僧侶に挨拶するとき。「本日はよろしくお願いいたします」 |
| 法要の後 | お礼を述べるとき。「本日はありがとうございました」 |
直接手渡しはしません。 袱紗(ふくさ)から出して、切手盆か、なければ菓子折りの上に載せて差し出します。
袱紗がないとき
小さな盆で代用できます。それもなければ、袱紗を開いた上に載せて差し出します。封筒を素手でそのまま渡すのだけは避けてください。
複数の封筒を渡す順番
お布施を一番上にして、御車代・御膳料を下に重ねます。一度にまとめて差し出して構いません。

菩提寺がない場合
先祖代々の寺がない家では、そもそも誰に頼むかから決めることになります。
僧侶手配サービスという選択
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金額 | 定額3万〜5万円程度が中心 |
| 分かること | 事前に総額が確定する |
| 戒名 | 別料金で2万〜数十万円 |
| 注意 | 菩提寺がある家は使えない |
最大の利点は、金額が事前に分かることです。 この記事でここまで書いてきた「いくら包むか」の悩みが、そもそも発生しません。
葬儀社に紹介を頼む
葬儀社は地域の寺とつながりがあります。紹介を頼むと、金額の目安も一緒に教えてもらえます。
ただし、あとで納骨する墓が別の寺にある場合は、先にその寺へ連絡してください。 無断で別の僧侶に頼むと、納骨を断られることがあります。
相続税から引けるか

相続税を計算するとき、葬式費用は遺産総額から差し引けます。お布施もその対象です。
| 控除できる | 控除できない |
|---|---|
| 通夜・葬儀の読経料 | 初七日や四十九日の法要費用 |
| 戒名料 | 香典返しの費用 |
| 火葬・埋葬・納骨の費用 | 墓石・墓地の購入費 |
| 遺体・遺骨の回送費用 | 墓地の借地料 |
線引きは「葬儀そのものか、そのあとの法要か」です。 四十九日のお布施は控除できません。
領収書がなくても引ける
お布施は領収書が出ないことがあります。それでも控除は受けられます。
- 日付
- 金額
- 寺院名
この3つをメモに残しておけば、実務上は認められます。葬儀が終わったその日のうちに書き留めておいてください。 半年後には思い出せません。
相続税の申告が必要か分からないなら
基礎控除を超えるかどうかで、申告の要否が変わります。相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。
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つまずきやすい8つ

先に潰しておくと、当日に慌てません。
| つまずき | 何が起きるか |
|---|---|
| 葬儀の見積もりにお布施が入っていると思った | 総額が2〜3割ずれる |
| 御車代・御膳料をお布施と同じ封筒に入れた | 名目が分からなくなる |
| 薄墨で書いた | 弔事の作法。お布施は濃い墨 |
| 封筒を素手で直接渡した | 切手盆か菓子折りの上に載せる |
| 卒塔婆料をお布施に含めた | 別に包む。1本3,000〜1万円 |
| 菩提寺に連絡せず別の僧侶に頼んだ | 納骨や戒名で断られることがある |
| 四十九日のお布施を相続税から引いた | 葬儀そのものではないので控除できない |
| 包んだ金額を記録しなかった | 次の法要でまた同じ悩みを繰り返す |
最後の1つが、いちばん効きます。 同じ寺との付き合いは何十年も続きます。今回の額を残しておけば、次からは迷いません。
よくある質問
Q. お布施はいつ用意すればいいですか
葬儀の当日までに用意します。通夜の前に渡す場合もあるので、通夜の前日までに包んでおくと安心です。
Q. 家族葬でもお布施の金額は同じですか
参列者の人数では変わりません。読経の回数と戒名で決まるので、一般葬と同じ幅になります。
Q. 一日葬だと通夜の読経がないぶん、安くなりますか
寺によります。「二日分から一日分に」と考える寺もあれば、戒名を含めた一式として変えない寺もあります。 先に確認してください。詳しくは一日葬の費用と流れで扱っています。
Q. お布施をクレジットカードや振込で払えますか
現金が原則です。僧侶手配サービスの一部はカード決済に対応しています。 寺に直接納める場合は現金と考えてください。
Q. 生活が苦しく、目安の金額を用意できません
正直に相談してください。減額に応じる寺は少なくありません。 黙って少なく包むより、事情を伝えたほうが関係は保たれます。
Q. 卒塔婆は必ず立てるものですか
宗派と地域によります。浄土真宗では原則として立てません。 立てる場合は1本3,000〜1万円を、お布施とは別の封筒で「卒塔婆料」として包みます。
Q. 香典の一部をお布施に回してもいいですか
問題ありません。香典は喪主が受け取るもので、使い道に決まりはありません。葬儀費用やお布施に充てるのが通常の流れです。
まとめ
- お布施は料金ではないので定価がない。寺が金額を言いにくいのはこのため
- 実務の目安は、通夜・葬儀15万〜50万円、四十九日と一周忌3万〜5万円、納骨1万〜3万円
- 葬儀の幅が大きいのは戒名の位で動くから。多くの家は信士・信女
- 御車代5,000〜1万円と御膳料5,000〜1万円は、お布施とは別の封筒で用意する
- 決め方が「わからない」人は39.1%。金額の明示を望む人は53.5%。聞くことは失礼ではない
- 聞き方は「皆さんどれくらいお包みでしょうか」。檀家総代や過去帳も手がかりになる
- 白封筒に濃い墨で「御布施」。新札でよい。袱紗から出して切手盆に載せて渡す
- 菩提寺がなければ僧侶手配サービスで定額3万〜5万円。ただし墓がある寺には先に連絡する
- 相続税から引けるのは葬儀そのものの読経料と戒名料まで。四十九日以降は引けない
- 領収書がなくても、日付・金額・寺院名のメモがあれば控除できる
- 今回包んだ額を記録しておくと、次の法要で迷わない
出典
- 葬儀で困ったこと:鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年2月27日〜3月3日、回答2,000件)
- お布施の決め方・納得感・明示の必要性:公益財団法人全日本仏教会/大和証券株式会社「仏教に関する実態把握調査(2022年度)報告書」(2023年3月1日、回答6,184)
- 葬式費用の控除:国税庁 タックスアンサー No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」

