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相続した実家を売ることにした。内見に来た人が「古いですね」と言って帰っていく。不動産会社からは「水回りだけでも直せば印象が変わります」と言われた——。
150万円かけて、売値はいくら上がるのか。
多くの工事で、上がる額は工事費を下回ります。 ただし例外が3つあります。
- 結論|先に3つ
- 工事費は、売値にいくら乗るのか
- 回収できる工事は3つだけ
- 「リフォーム済み」として売り出すとどうなるか
- リフォームの見積書は、ここを見る
- やってはいけない工事
- 雨漏りとシロアリは、別枠で考える
- 買主は、リフォーム前提で見ている
- 売却にかかる期間は、どれくらい変わるか
- 買取なら、リフォームは要らない
- マンションの場合は、考え方が違う
- 「古家付き土地」として売るという選択
- 内見で見られているのは、どこか
- 建物状況調査(インスペクション)を使う
- 築年数で、考え方が変わる
- 相続した実家なら、耐震の要件を確認する
- 相続人が複数いるときの、費用の出し方
- 補助金は使えるか
- 費用をかけずに印象を上げる
- 「リフォームすれば高く売れます」と言われたら
- 売り出したあと動かないとき、工事を足すべきか
- 3つのケースで考える
- 工事をするなら、売る先を先に決めておく
- 引き渡しのあとで、もめないために
- 判断の順番
- やってはいけない7つ
- よくある質問
- まとめ|工事の前に、査定を取る
結論|先に3つ

1. 大きな工事ほど、回収率は下がる
水回りの全面改修は、かけた費用の3割から5割しか売値に乗りません。
2. 回収できるのは、安くて印象が変わる工事だけ
ハウスクリーニング、クロスの張り替え、庭木の剪定。この3つは費用対効果が合います。
3. 「上乗せ額」ではなく「売れるかどうか」で判断する
雨漏りやシロアリは、上乗せの話ではありません。直さないと買い手が付かないという別の問題です。
直さずに売った場合の金額を、先に知る
リフォームの判断は、現況での査定額がないと始まりません。仲介での想定価格と、買取での金額の両方が分かれば、工事にいくらまで出せるかが決まります。どちらも無料で、売ると決めていなくても取れます。
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工事費は、売値にいくら乗るのか

築40年前後の木造戸建てを想定した目安です。
| 工事 | 工事費 | 売値の上乗せ | 回収率 |
|---|---|---|---|
| ハウスクリーニング | 8万〜15万円 | 20万〜30万円 | 約200% |
| クロスの張り替え(全室) | 30万〜50万円 | 30万〜50万円 | 約100% |
| 庭木の剪定・草刈り | 5万〜15万円 | 10万〜20万円 | 約150% |
| 給湯器の交換 | 20万〜30万円 | 10万〜20万円 | 約60% |
| 外壁塗装 | 80万〜120万円 | 30万〜50万円 | 約40% |
| キッチン交換 | 60万〜120万円 | 20万〜40万円 | 約30% |
| 浴室のユニットバス化 | 80万〜150万円 | 30万〜50万円 | 約30% |
| 水回り全面(4点) | 150万〜250万円 | 50万〜80万円 | 約30% |
上乗せ額が伸びない理由
買主は、自分の好みで直したいと考えています。前の所有者が選んだ設備は、買主にとっては「まだ使えるから捨てにくいもの」になります。
建物の評価はゼロに近づいている
木造の法定耐用年数は22年です。築40年なら、査定上の建物価格はほぼ残っていません。設備を新しくしても、土地の値段が上がるわけではありません。
それでも工事を勧められる理由
内見での反応がよくなり、売却期間が短くなるためです。不動産会社にとっては正しい助言ですが、売主の手取りが増えるかは別の話です。
回収できる工事は3つだけ
1. ハウスクリーニング
水回りの油汚れと水垢、床の艶。内見の第一印象を決めるのは、設備の新しさではなく清潔さです。8万〜15万円で、写真の見栄えも変わります。
2. クロスの張り替え
黄ばみとタバコのヤニは、部屋を実際より古く見せます。全室で30万〜50万円。特に天井のクロスは効果が大きい割に、注目されにくい部分です。
3. 庭木の剪定と草刈り
外観の写真が変わります。伸びた庭は「管理されていない家」に見え、内見前に候補から外されます。
「リフォーム済み」として売り出すとどうなるか
工事をしたうえで売り出す場合、価格の付け方が変わります。
上乗せは「工事費の満額」にはならない
150万円かけたから150万円高く売り出す、とすると相場から浮きます。相場から離れた価格は、そもそも検索の条件から外れます。
売り出し価格と成約価格は違う
高く出しても、値引き交渉で戻されます。工事費を乗せた分がそのまま残ることは、まずありません。
買主の期待値が上がる
「リフォーム済み」と書けば、買主は全体が新しいと期待します。直していない部分の粗が、かえって目立ちます。
保証の話になりやすい
直した設備について、引き渡し後の不具合を問われやすくなります。手を入れた範囲は契約書に明記してください。
中途半端が最も損
やるなら全面、やらないなら現況渡し。部分的な工事は、費用だけかかって印象が変わらないという結果になりがちです。
リフォームの見積書は、ここを見る
複数社から取ったあと、金額だけで比べないでください。
「一式」の中身を出してもらう
「浴室改修工事一式 90万円」では比較できません。本体価格、解体費、給排水工事、電気工事、処分費に分けてもらいます。
グレードを揃える
A社が中級グレード、B社が上級グレードでは、金額が違って当然です。同じ型番で見積もりを取り直します。
追加費用が出る条件
床下や壁の中を開けてみないと分からない部分があります。「開けてみて追加が出るのはどんな場合か、いくらか」を先に聞いてください。
工期
売却を急いでいるなら、工期は費用と同じくらい重要です。1か月止まれば、その分だけ売り出しが遅れます。
保証
工事後の不具合に何年対応してもらえるか。売却後に問題が出たとき、この保証が効くかも確認します。
やってはいけない工事
間取りの変更
壁を抜いてLDKにする、といった工事です。100万円単位の費用がかかるうえ、買主の好みと合う保証がありません。
フルリフォーム
500万〜1,000万円をかけて再生する方法です。買取再販の業者がやることであって、個人がやると回収できません。
中途半端な設備更新
キッチンだけ新しく、浴室は昭和のまま。ちぐはぐな状態は、かえって古さを強調します。
買主が決まる前の造作
「こういう家が好まれるはず」という推測で作り込むと、外したときの損失が大きくなります。
雨漏りとシロアリは、別枠で考える

ここは回収率の話ではありません。
放置すると売れない
雨漏り、シロアリ、傾き、給排水の漏れ。この4つは、買主が住宅ローンの審査で引っかかる原因にもなります。
契約不適合責任がある
売った後に不具合が見つかると、修補や代金の減額を求められることがあります。個人が売主の場合、特約で期間を短くしたり免責にしたりできますが、知っていて告げなかった不具合は免責されません。
告知して値引きするという選択
直さずに、不具合を告知したうえで相応の値引きをする方法もあります。修理費より値引き額のほうが小さく収まることもあるので、両方の見積もりを取って比べてください。
費用の目安
| 不具合 | 修理費の目安 |
|---|---|
| 雨漏り(部分補修) | 10万〜30万円 |
| 屋根の葺き替え | 80万〜200万円 |
| シロアリ駆除 | 15万〜30万円 |
| 給排水管の交換 | 20万〜50万円 |
買主は、リフォーム前提で見ている
中古戸建てを買う人の想定
築古の戸建てを探している買主の多くは、購入後に自分で手を入れる前提でいます。予算は「物件価格+リフォーム費用」で組まれています。
リフォーム一体型ローン
購入資金と改修費用をまとめて借りられる住宅ローンです。買主にとっては、売主が直した家を高く買うより、自分で直したほうが金利の安いローンに乗せられることがあります。
つまり
売主が先に直すと、買主の選択肢を狭めたうえで、その費用を価格に乗せきれない構図になります。
現況のままでいくらか、買取ならいくらか
リフォームの判断には、比べる数字が2つ要ります。仲介で売った場合の想定価格と、手を入れずに買い取ってもらう場合の金額です。並べて初めて、工事に出せる上限が決まります。
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売却にかかる期間は、どれくらい変わるか

判断材料として、時間も数字にしてください。
| 現況で売る | 工事してから売る | 買取 | |
|---|---|---|---|
| 準備 | 1〜2週間 | 1〜3か月 | 数日 |
| 売り出しから成約 | 3〜6か月 | 2〜5か月 | ——— |
| 引き渡しまで | 1〜2か月 | 1〜2か月 | 2週間〜1か月 |
| 合計 | 4〜8か月 | 5〜10か月 | 1か月前後 |
工事の間は売り出せない
見積もり、契約、着工、完成。この間、物件は市場に出ません。工期が長いほど、売れる時期は後ろにずれます。
その間も費用は出ていく
固定資産税、火災保険、管理の手間。空き家なら管理費もかかります。半年延びれば、その分の維持費が乗ります。
期限があるなら現況で
相続税の納付期限(10か月)、空き家の3,000万円特別控除(3年10か月)。期限が近いなら、工事という選択肢は事実上ありません。
買取なら、リフォームは要らない
そのままの状態で売れる
買取業者は、自社で改修して再販することを前提にしています。家財が残っていても、傷んでいても、そのまま引き取ります。
価格は仲介の6〜8割
その代わり、金額は下がります。仲介で1,500万円の家なら、買取では900万〜1,200万円が目安です。
それでも比べる価値がある
リフォームに150万円かけ、半年かけて仲介で売る場合と、手を入れずに今月中に買取で売る場合。手取りと時間の両方で比べてください。 差が思ったより小さいことがあります。
向いているケース
- 遠方で、何度も通えない
- 家財が大量に残っている
- 期限がある(相続税の納付、特例の期限)
- 近隣に売却を知られたくない
マンションの場合は、考え方が違う
戸建てとは前提が変わります。
建物の共用部は自分で直せない
外壁も屋上も管理組合の管轄です。個人が手を入れられるのは専有部だけなので、判断の範囲が狭くなります。
水回りの効果は戸建てより大きい
マンションの査定では、専有部の状態が価格に反映されやすくなります。同じ間取りの部屋と直接比べられるためです。
それでも全面改修は回収できない
回収率は5割前後が目安です。戸建てよりは高いものの、かけた分が戻るわけではありません。
管理費・修繕積立金の滞納
これは工事より先に確認してください。滞納があると、買主に引き継がれるため大きな減額要因になります。
リフォーム済み物件との競合
同じマンション内に買取再販の部屋が出ていると、そこと比べられます。価格で戦うか、現況渡しで安く出すかの判断になります。
「古家付き土地」として売るという選択
築古の家では、これが現実的な着地になることがあります。
建物に値段を付けない売り方
土地の価格で売り出し、建物はおまけとして引き渡します。買主は解体して建てるか、直して住むかを自分で選べます。
売主の利点
- 解体費(100万〜200万円)を出さずに済む
- 更地にしないので、住宅用地の特例が外れない
- 建物の不具合について、争いになりにくい
買主の利点
- 解体費の分だけ、土地を安く買える
- 使えると判断すれば、そのまま住める
注意点
古家の状態が悪すぎると、解体費を大きく見積もられて値引きを求められます。 解体費の相場を自分でも把握しておいてください。
更地渡しと比べる
「更地にして1,500万円」と「古家付きで1,350万円」なら、解体費150万円を考えると手取りは同じです。どちらが売れやすいかは、その土地の需要で決まります。
内見で見られているのは、どこか
工事を決める前に、買主が実際に見る場所を知っておいてください。
水回りの清潔さ
新しさより清潔さです。排水口のぬめり、シンクの水垢、浴室のカビ。ここは費用をかけずに変えられます。
においと湿気
玄関を開けた瞬間の印象で、その後の見え方が決まります。
日当たりと風通し
これは工事で変えられません。内見の時間帯を、日当たりのよい時間に合わせてください。
収納の量
押し入れやクローゼットを開けられます。中を空にしておくと広く見えます。
外構と庭
道路から玄関までの印象です。5万円の草刈りで、100万円の外壁塗装より印象が変わることがあります。
近隣の様子
隣家との距離、道路の広さ、周辺の建物。これも変えられない要素です。
建物状況調査(インスペクション)を使う
何をするか
建築士などが、構造と雨漏りの状況を目視で調べます。費用は5万〜10万円、半日程度です。
売主が使う意味
「どこを直すべきか」を、工事を売る側ではない第三者に判断してもらえます。 不動産会社の勧める工事が妥当かを確かめる材料になります。
買主への効果
調査済みであることは、買主の不安を減らします。既存住宅売買瑕疵保険の加入につながる場合もあります。
媒介契約での説明
宅建業法により、不動産会社は媒介契約のときに、あっせんできるかどうかを説明することになっています。聞かれる前に、自分から相談してかまいません。
築年数で、考え方が変わる
| 築年数 | 基本の方針 |
|---|---|
| 築15年以内 | 設備は生きている。クリーニングのみ |
| 築15〜25年 | 給湯器など、壊れているものだけ直す |
| 築25〜40年 | クリーニングとクロス。設備は触らない |
| 築40年超 | 建物の価値はほぼゼロ。土地として売る前提 |
築40年を超えたら
査定額のほとんどが土地の値段です。建物にお金をかけても、査定の計算には反映されません。 解体して更地にする選択肢と比べる段階です。
解体との比較
解体費は木造30坪で100万〜200万円。更地にすると住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がります。建物を残したまま「古家付き土地」として売るほうが、手取りが多くなることもあります。
相続した実家なら、耐震の要件を確認する
空き家の3,000万円特別控除
相続した家を売るとき、譲渡益から最大3,000万円を控除できる制度です。要件を満たせば税額が大きく変わります。
ただし、控除額は一律ではありません。 令和6年1月1日以後の譲渡では、被相続人居住用家屋等を取得した相続人が3人以上の場合、1人あたり2,000万円に下がります。
また、区分所有建物(マンション)は対象外です。売却代金が1億円以下であること、相続後に貸したり住んだりしていないことも要件になります。
旧耐震の家は、条件がある
1981年5月31日以前に建てられた家では、耐震改修をするか、取り壊して更地で売る必要があります。
2024年から緩和された
買主が引き渡し後、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しをすれば要件を満たす形になりました。売主が先に工事をする必要がなくなったため、以前より判断が楽になっています。
適用の期限
相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。工事に時間をかけると、この期限に間に合わなくなります。
相続人が複数いるときの、費用の出し方

工事をするかどうかで、もめる場面があります。
費用を出した人が損をしないように
誰かが立て替えて工事をしても、売却代金は法定相続分で分けることになります。立て替えた分を先に返す、という取り決めを先にしてください。
書面に残す
金額、支払日、精算方法。遺産分割協議書に1行入れておけば、後から争いになりません。
全員の同意が要る
共有名義の場合、工事も売却も共有者全員の同意が必要です。1人が反対すれば動きません。
もめるくらいなら現況で売る
「直したほうが高く売れる」という意見と「余計な出費だ」という意見が対立したとき、現況での査定額を全員で見るのがいちばん早い解決策です。数字が出れば、議論の前提がそろいます。
補助金は使えるか
売却前提の工事に使える制度は限られます。
耐震改修の補助
多くの自治体にあります。旧耐震の木造住宅が対象で、数十万円から100万円規模のこともあります。ただし工事後に一定期間の居住を求められる場合があるので、売却前提で使えるかは要確認です。
省エネ改修の補助
窓の断熱改修などが対象です。国の制度と自治体の制度があります。こちらも居住要件がつくことがあります。
解体の補助
老朽化した空き家の解体に補助を出す自治体があります。着工前の申請が条件なので、壊してからでは間に合いません。
確認先
市区町村の建築指導課、住宅政策課、空き家担当課です。制度名が自治体ごとに違うので、「空き家の改修と解体で使える補助はありますか」と聞くのが早い方法です。
費用をかけずに印象を上げる
工事でなくても、できることがあります。
荷物を空にする
家財が残っていると部屋が狭く見えます。空にするだけで、内見の印象は大きく変わります。
照明をすべて点ける
内見前に、全部屋の照明を点けておきます。切れた電球は交換します。数千円です。
においを抜く
閉め切った家は独特のにおいがします。前日から換気し、内見の直前も窓を開けます。
水回りを乾かす
水滴が残っていると、湿気の多い家という印象になります。
写真は晴れた日に撮ってもらう
掲載写真の明るさで、問い合わせ数が変わります。
家財が残っているなら、そこから
荷物があると内見の印象が落ち、買取でも減額の要因になります。不用品回収は量と品目で金額が変わるので、複数社に出すと幅が見えます。見積もりだけなら無料です。
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「リフォームすれば高く売れます」と言われたら
聞くべきこと
「工事後の想定売却価格はいくらですか」と聞いてください。現況の査定額との差が、工事費を上回るかどうかがすべてです。
答えられない場合
根拠のない提案です。数字が出てこないなら、その工事は見送ってかまいません。
紹介された業者の見積もり
不動産会社が提携するリフォーム会社の見積もりは、相場より高いことがあります。別の会社からも取って比べてください。
「売れなければ買い取ります」という提案
買取保証と呼ばれる仕組みです。安心感はありますが、保証価格は相場より低く設定されるのが通常です。金額を確認してから判断してください。
売り出したあと動かないとき、工事を足すべきか
3か月経っても内見が入らない、という段階の話です。
まず理由を分ける
問い合わせが来ないのか、内見までは来るのか。前者は価格か写真の問題、後者は物件そのものの問題です。
問い合わせがない場合
工事ではなく、価格と掲載内容を見直します。写真の枚数、撮り直し、間取り図の有無。ここは費用がほとんどかかりません。
内見は来るが決まらない場合
理由を営業担当に聞いてもらいます。「暗い」「におい」「水回り」といった具体的な指摘があれば、対応できるものだけ手を入れます。
それでも動かないなら
追加の工事より、価格を下げるか買取に切り替えるほうが確実です。 工事をしても売れなければ、費用と時間の両方を失います。
値下げの幅
小刻みに下げると、買主に「まだ下がる」と思われます。1回で相場まで下げるほうが、結果として高く売れることがあります。
3つのケースで考える

ケース1|築45年・遠方・家財あり
工事は勧められません。通う費用もかかり、期限も読めません。家財の処分だけ済ませて、買取と仲介の両方で金額を取るのが現実的です。
ケース2|築25年・駅から徒歩10分・空室
需要のある立地です。クリーニングとクロスの張り替え(合計50万円前後)までは回収できる見込みがあります。水回りには手を付けず、まず売り出してください。
ケース3|築35年・雨漏りあり・相続税の納付が近い
雨漏りは直すか告知するかの二択です。期限があるなら、告知して値引きするか、買取で早く終わらせるほうが安全です。工事で1〜3か月止まると、納付に間に合わなくなります。
工事をするなら、売る先を先に決めておく
順番を間違えると、工事が無駄になります。
媒介契約より先に工事をしない
どの会社に頼むかで、勧められる工事は変わります。先に工事をしてしまうと、「それは不要でしたね」と言われることがあります。
複数社に同じ質問をする
「この家を現況で売るといくらか」「工事をするなら何を勧めるか、その場合の想定価格はいくらか」。この2つを各社に聞くと、判断がそろいます。
答えが割れたとき
3社に聞いて、2社が「不要」と言うなら不要です。1社だけが大きな工事を勧めるなら、その根拠を数字で確かめてください。
専任か一般か
専任媒介にすると1社に任せる形になり、その会社の方針に沿って進みます。工事の判断に迷いがあるうちは、一般媒介で複数社の意見を聞く方法もあります。
買取の金額も並べる
工事をしない前提の金額です。これがあると、「工事をして仲介で売る」と「何もせず買取で売る」の手取り差がそのまま出ます。
引き渡しのあとで、もめないために
工事をした場合もしなかった場合も、共通してやることです。
現況を写真で残す
引き渡し時点の各部屋、水回り、屋根、外壁。日付の分かる形で残しておくと、後から「引き渡し前からあった不具合だ」と言われたときの材料になります。
告知書を丁寧に書く
雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、火災や事故の履歴。知っていることは書いてください。書かなかったことが後で分かると、免責の特約が効かなくなります。
設備の一覧を作る
給湯器、エアコン、換気扇。動くもの、動かないものを一覧にして引き渡します。「動くと思っていた」という食い違いが、いちばん多いトラブルです。
工事の書類を渡す
直した部分があれば、見積書と保証書を買主に渡します。買主にとっては安心材料になり、売主にとっては範囲を明確にする記録になります。
判断の順番

1. 現況で査定を取る(仲介と買取の両方)
これがないと、何も判断できません。
2. 不具合の有無を確認する
雨漏り、シロアリ、傾き、漏水。あれば見積もりを取ります。
3. 「直さないと売れない」ものだけ直す
上乗せ目的の工事は、この段階では考えません。
4. クリーニングと庭の手入れをする
費用対効果が最も高い部分です。
5. それでも売れなければ、値下げか買取に切り替える
追加の工事より、価格を動かすほうが確実です。
やってはいけない7つ
1. 査定を取る前に工事を決める
比べる数字がないまま判断することになります。
2. 上乗せ目的で水回りを全面改修する
回収率は3割程度です。
3. 不具合を知りながら告げない
契約不適合責任の免責が効かなくなります。
4. 相見積もりを取らない
リフォームの見積もりは会社によって倍近く違うことがあります。
5. 特例の期限を忘れて工事を進める
相続から3年10か月という区切りがあります。工期が延びて期限を越えると、控除が使えなくなり、税額のほうが工事費を上回ることがあります。
6. 1社の意見だけで決める
工事を勧める会社と、現況を勧める会社では、根拠にしている数字が違います。3社に同じ質問をすれば、どちらが妥当かは自然に見えてきます。
7. 家財を残したまま内見を受ける
部屋が狭く見え、傷みも隠れます。工事より先に、まず空にしてください。
よくある質問
Q. 古い家は、更地にしたほうが売れますか
A. 買い手の層は広がりますが、解体費が100万〜200万円かかり、固定資産税も上がります。古家付き土地として売り、解体費相当を値引きする方法もあります。
Q. 内見のときに、家財はすべて出しておくべきですか
A. 出したほうが印象はよくなります。ただし全部出すと生活のイメージが湧きにくいという意見もあり、最低限の家具を残す考え方もあります。
Q. クロスの張り替えは、全室やるべきですか
A. 費用対効果を考えると、リビングと水回りに面した部屋を優先してください。全室にこだわる必要はありません。
Q. 不動産会社に「このままでは売れない」と言われました
A. 別の会社にも査定を出してください。買取の会社なら、そのままで金額が出ます。1社の見立てで判断しないでください。
Q. 耐震診断は受けたほうがいいですか
A. 空き家の3,000万円特別控除を使うなら関係します。それ以外の場合、診断だけでは売値は変わりません。
Q. リフォーム済みとして売ると、契約不適合責任は重くなりますか
A. 直した部分について「新しい」という前提が生まれます。手を入れた範囲は、契約書に明記してください。
Q. 実家が遠方で、工事の立ち会いができません
A. 立ち会いなしで進める会社もありますが、仕上がりの確認が難しくなります。遠方なら、工事をせず買取で売るほうが現実的です。
Q. 和室を洋室に変えたほうが売れますか
A. 費用は1室30万〜60万円です。買主の好みによるため、確実に上乗せされるとは言えません。空室で内見してもらい、反応を見てから判断しても遅くありません。
Q. 外壁の塗装は、見た目が悪いとやはり不利ですか
A. 印象は下がります。ただし80万〜120万円をかけても上乗せは30万〜50万円です。高圧洗浄だけ(5万〜10万円)で見た目を上げる方法もあります。
Q. 「解体更地渡し」で売ると、解体費は誰が払いますか
A. 売主です。契約で決済前に解体を終える形が多く、費用は売主負担になります。その分を価格に乗せられるかは、土地の需要次第です。
Q. リフォーム費用は、譲渡所得の計算で経費になりますか
A. 資本的支出にあたる部分は取得費に加えられます。修繕の範囲なら譲渡費用になりません。領収書は必ず残してください。
Q. 内見の前に、シロアリの点検はしたほうがいいですか
A. 築30年を超える木造なら、しておくと安心です。無料点検を行う業者もありますが、そのまま契約を勧められることがあるので、点検だけと伝えてください。
Q. 中古住宅の瑕疵保険には入れますか
A. 建物状況調査に合格することが条件です。入れれば買主の安心材料になりますが、不具合があると加入できません。
Q. 不動産会社が「うちの提携業者なら安くできます」と言っています
A. 安くなる場合もありますが、紹介料が乗っていることもあります。必ず外部の会社からも見積もりを取ってください。
Q. 工事をしたら、査定額は上がりますか
A. 上がりますが、工事費の全額ではありません。工事前と工事後の想定価格を、同じ会社に出してもらうと差が見えます。
Q. 空き家のまま何年も置いていました。まず何をすべきですか
A. 換気と通水をしてから、査定を取ってください。傷みの程度が分からないまま工事の話を進めないでください。
Q. 火災保険で直せる部分はありますか
A. 台風や落雷など、自然災害による損傷であれば対象になることがあります。加入内容を確認してください。
Q. 売主が個人でも、契約不適合責任は免責にできますか
A. 特約で可能です。ただし知っていて告げなかった不具合については免責されません。 期間を「引き渡しから3か月」と限る方法が一般的です。
Q. 内見の立ち会いは必要ですか
A. 空き家なら不要です。営業担当に任せるほうが、買主も質問しやすくなります。
Q. 工事の途中で買い手が見つかったらどうなりますか
A. 工事を止めるか、完成を待って引き渡すかを協議します。契約前に工事の予定を伝えておいてください。
まとめ|工事の前に、査定を取る

1. 大きな工事は回収できない
水回り全面150万円で、上乗せは50万〜80万円です。
2. 効くのは、安くて印象が変わるもの
クリーニング、クロス、庭。この3つだけで足ります。
3. 不具合は「上乗せ」ではなく「売れるかどうか」
雨漏りとシロアリは、直すか告知して値引きするかの二択です。
4. 相続した家なら、耐震の要件は買主側で対応できる
2024年からの取り扱いです。先に工事をする必要はありません。
5. 迷ったら、現況の査定額を2つ取る
仲介での想定価格と、買取での金額。この2つがそろえば、工事に出せる上限が決まります。
工事を決める前に、比べる数字を2つそろえる
現況のままでいくらになるか、手を入れずに買い取ってもらうといくらか。この2つが出れば、リフォームに何円まで出せるかが計算できます。どちらも無料で、売ると決めていなくても取れます。
本欄はプロモーションを含みます。掲載内容・条件は各サービスの公式サイトで最新のものをご確認ください。
この記事について
本記事の内容は2026年9月9日時点の公表情報にもとづきます。工事費と売値の上乗せ額は、地域・築年数・物件の状態によって変わります。金額の大きい判断をする前に、複数の不動産会社とリフォーム会社にご確認ください。

