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借地権の実家を相続したら|地主との交渉・承諾料の相場と、売る4つの出口

借地に建つ古い一戸建て 実家の売却・活用
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親が亡くなり、実家の権利証を探したら、土地の登記簿に親の名前がなかった。 出てきたのは「土地賃貸借契約書」——それが借地権です。

そして多くの場合、相続を知った地主から連絡が来ます。 「名義書換料をお願いします」と。

この記事では、その請求に応じる義務があるのかから始めて、相続後にやること、承諾料の相場、売るときの4つの出口までを、条文と金額で整理します。

結論を先に言うと、相続に地主の承諾は要りません。名義書換料を払う義務もありません。 ただし、売るときは承諾が要ります。 ここが分かれ目です。

みどりみどり
父が亡くなって、実家の土地が借地だと初めて知りました。地主さんから「名義書換料として150万円」と言われています。払わないといけないのでしょうか。
たくみ先生たくみ先生
払う義務はありません。 相続は「譲渡」ではないので、地主の承諾が要らないからです(民法612条の反対解釈)。承諾が要らない以上、承諾料も発生しません。 ただし売るときは話が別で、そのときは承諾料が要ります。混同されやすいところです。

結論|先に3つ言っておきます

借地権の実家を相続したときの結論3点

1. 相続するのに地主の承諾は要らない。承諾料も要らない

借地権は相続財産として、そのまま引き継がれます。 地主に拒否権はありません。 名義書換料を請求されても、応じる法的義務はありません。

2. 売るときは地主の承諾が要る。ここで承諾料が発生する

譲渡承諾料(名義書換料)の相場は、借地権価格の10%です。地主が承諾しない場合は、裁判所の許可(借地非訟)という手段があります。

3. 出口は4つあり、手取りが大きく違う

①地主に売る ②第三者に売る ③底地と同時に売る ④等価交換。 いちばん高く売れるのは③の同時売却です。

そのうえで、相続してすぐやるべきなのは、契約書を探すことと、建物の相続登記です。借地権そのものは、たいてい登記されていません。

借地権は「いくらか」を先に知らないと、交渉にならない

地主から名義書換料や更新料を提示されたとき、借地権価格が分からないままだと言い値になります。 借地権に強い専門家への相談は無料で、売ると決めていなくても使えます。

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そもそも借地権とは何か

所有権と借地権の違い

単に土地を借りるのではなく、「建物を建てて所有するために、土地を借りる権利」——これが借地権です。

所有権の家 借地権の家
土地 自分のもの 地主のもの(借りている)
建物 自分のもの 自分のもの
毎月の支払い なし 地代
固定資産税 土地+建物 建物のみ
売るとき 自由 地主の承諾が要る
建て替え 自由 地主の承諾が要る(契約による)

建物は自分のもの、という点が重要

借地権の実家でも、建物は親の所有物でした。だから建物には固定資産税がかかっていたはずですし、相続財産にも含まれます。

借地権にも財産価値がある

「借りているだけだから価値はゼロ」ではありません。 都心部では、更地価格の70〜90%が借地権の価値とされます。相続税の対象にもなります。

なぜ借地が多いのか

戦前から戦後にかけて、土地を手放さずに貸す形が広く使われたためです。東京・大阪の下町、寺社の周辺、旧市街地に集中しています。


相続に地主の承諾は要らない

相続と譲渡で地主の承諾が要るかどうか

根拠は民法612条

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない

ここでいう「譲り渡し」は、売買や贈与のことです。相続は、被相続人の地位をそのまま引き継ぐ「包括承継」であって、譲渡ではありません。

つまり

場面 地主の承諾 承諾料
相続 不要 不要
遺贈(相続人以外へ) 必要 必要
売却 必要 必要
贈与 必要 必要
建て替え 契約による 契約による

遺贈だけは注意

相続人以外の人(内縁の配偶者、孫、友人など)に遺言で渡す「特定遺贈」は、譲渡と同じ扱いになります。地主の承諾が要ります。

相続人に対する遺贈や、包括遺贈は承諾不要とされています。ここは遺言の書き方で結論が変わるので、遺言を残す側は注意してください。

地主から名義書換料を請求されたら

「相続なので、承諾も承諾料も不要と理解しています」と伝えるだけで足ります。 多くの地主は、これを知らずに慣習で請求しています。

払ってしまうと、後で返してもらうのは困難です。その場で即答せず、一度持ち帰ってください。


相続したら、まずやる5つ

借地権を相続したらまずやる5つ

1. 土地賃貸借契約書を探す

いちばん重要な書類です。契約日、存続期間、地代、建替や譲渡についての特約が書かれています。これが無いと、何も判断できません。

2. 建物の相続登記をする

借地権そのものは、たいてい登記されていません。 建物の登記が、借地権を第三者に主張する根拠になります(借地借家法10条1項)。

3. 地主に相続を通知する

法的な義務ではありませんが、実務上は必須です。地代の振込先や名義が変わることもあります。 通知は書面で、控えを残してください。

4. 地代の支払いを止めない

相続手続き中でも、地代は払い続けます。 滞納は契約解除の理由になります。 親の口座が凍結されている場合は、相続人の口座から払って記録を残してください。

5. 契約の期限を確認する

更新の時期が近いと、更新料の話が出てきます。 いつまでの契約かを、真っ先に確かめてください。更新の判断だけを詳しく知りたい場合は、更新料が払えないときの3つの出口にまとめています。

親が亡くなった直後の手続き全体は親が死んだらやること順番にまとめています。


建物の相続登記は3年以内に

借地権付き建物の相続登記

義務化されている

2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が義務です(不動産登記法76条の2)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。

借地権の実家では、登記の対象は「建物」です。土地は地主のものなので、こちらが登記することはありません。

借地権の登記がある場合

まれに賃借権の登記がされていることがあります。 その場合は、建物の相続登記に加えて、賃借権の移転登記も行います。

必要書類

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書
  • 建物の固定資産評価証明書
  • 相続人の住民票

費用

項目 金額
登録免許税 建物の固定資産評価額 × 0.4%
司法書士報酬 6万〜10万円
戸籍などの実費 5,000〜1万5,000円

建物は古いことが多く、評価額が低いので、登録免許税は数千円〜数万円で収まることがほとんどです。

制度の詳細は相続登記の義務化と10万円以下の過料に、書類の集め方は相続手続きの必要書類と集め方にまとめています。

戸籍集めと登記で止まる人が多い

借地権の実家は、建物が古く相続人が増えていることが多いです。出生から死亡までの戸籍をそろえる作業は、慣れていないと数週間かかります。 代行の見積もりだけなら無料で取れます。

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契約書が見つからないとき

借地の契約書がないときの確認方法

古い借地では、契約書そのものが存在しないことがあります。 口約束のまま何十年も続いているケースです。

契約書がなくても借地権は消えない

建物の登記があれば、借地権を第三者に主張できます(借地借家法10条1項)。契約書の有無は、借地権の存否とは別の問題です。

条件を確かめる4つの方法

  1. 地主に写しをもらう(地主側に残っていることがあります)
  2. 地代の振込記録から、金額と支払い開始時期をたどる
  3. 建物の登記事項証明書で、建築年月日を確認する(借地の開始時期の手がかり)
  4. 固定資産税の課税明細で、土地に課税されていないことを確認する

新しく契約書を作るときの注意

地主から「これを機に契約書を作りましょう」と言われることがあります。 応じること自体は問題ありませんが、元の条件より不利になっていないかを必ず確認してください。

特に危険なのは、旧法借地権を新法の契約に切り替えてしまうことです。更新の保護が弱くなります。

「従前の契約を承継するものであり、契約条件に変更はない」という一文を入れるよう求めてください。


古い契約書類と印鑑

旧法か新法かを見分ける

旧法借地権と新法の普通借地権の違い

境目は1992年(平成4年)8月1日です。この日に借地借家法が施行されました。

旧法借地権 普通借地権(新法)
適用 1992年7月31日以前の契約 1992年8月1日以降の契約
建物の区別 堅固・非堅固で分かれる 区別なし
当初の期間 堅固60年/非堅固30年 一律30年
更新後 堅固30年/非堅固20年 1回目20年、2回目以降10年
更新の拒絶 地主にほぼ不可能 正当事由が必要(旧法より認められやすい)

古い契約ほど、借地人に有利

旧法借地権は、契約時期が1992年7月31日以前なら、いま更新してもずっと旧法のままです。更新しても新法には切り替わりません。

実家が昭和からの借地なら、ほぼ確実に旧法です。これは強い権利です。

期間が過ぎていても、権利は消えない

契約期間が満了しても、建物が残っていて借地人が使い続け、地主が遅滞なく異議を述べなければ、同じ条件で更新されたものとみなされます(法定更新)。「期限が切れているから出ていけ」は通りません。


定期借地権だった場合は、話がまったく違う

定期借地権3種類の違い

1992年8月1日以降にできた制度で、更新がない借地権です。期間が来たら、建物を壊して土地を返します。

種類 存続期間 契約方式 期間満了時
一般定期借地権 50年以上 書面(公正証書でなくても可) 更地にして返す
事業用定期借地権 10年以上50年未満 公正証書に限る 更地にして返す
建物譲渡特約付借地権 30年以上 定めなし 建物を地主に譲渡して終了

住宅なら、まず一般定期借地権

分譲マンションや建売住宅で「定期借地権付き」と表示されているものです。1990年代後半以降に供給された物件に見られます。

残存期間で価値が決まる

定期借地権は、残りの年数が短いほど価値が下がります。 残り20年を切ると、売却は一気に難しくなります。

相続したときの判断

残存期間と、期間満了時の解体費用を先に見積もることです。解体費用は建物の所有者、つまり相続人が負担します。

解体費用の目安は実家の解体費用はいくら?にまとめています。


借地の多い住宅地の路地

借地権の価格はどう決まるのか

借地権割合の記号と割合

借地権割合を使う

国税庁の路線価図に、地域ごとの借地権割合が記号で示されています。

記号 借地権割合 主な地域
A 90% 都心の商業地
B 80% 繁華街・主要駅前
C 70% 都市部の住宅地
D 60% 都市部の住宅地
E 50% 郊外
F 40% 郊外・地方
G 30% 地方・農村部

調べ方

国税庁の路線価図で住所を検索し、道路に書かれた数字とアルファベットを読みます。 「300C」なら、路線価30万円/㎡、借地権割合70%という意味です。

計算例

土地100㎡、路線価30万円/㎡、借地権割合70%(C)の場合

  • 自用地評価額:30万円 × 100㎡ = 3,000万円
  • 借地権の相続税評価額:3,000万円 × 70% = 2,100万円

ここが誤解されやすい

この2,100万円は「相続税を計算するための金額」であって、売れる金額ではありません。 実際の売買では、これより低くなるのが普通です。


地代はいくらが妥当か

借地の地代の相場

固定資産税等の倍率で見る

住宅地なら、その土地の固定資産税+都市計画税の3〜5倍が、実務でよく使われる目安です。商業地では5〜8倍とされます。

計算してみる

土地の固定資産税が年8万円、都市計画税が年1万7,000円の場合

  • 年間の税額:9万7,000円
  • 地代の目安:29万1,000円〜48万5,000円(年額)
  • 月額に直すと:2万4,000円〜4万円

地主に固定資産税額を聞けるか

借地人は、その土地の固定資産課税台帳を閲覧できます(地方税法382条の2、387条)。市区町村の資産税課で、賃貸借契約書を示して請求してください。

地主に聞く必要はありません。 これを知らずに、言われた額をそのまま払い続けている借地人は多いです。

地代が安すぎる場合

昔からの契約では、固定資産税を下回る地代のままになっていることがあります。 この場合、地主からの増額請求は認められやすいです。

逆に、相場より明らかに高い地代を払っているなら、減額請求ができます(借地借家法11条1項)。

値上げを求められたときの対応

  1. 根拠(固定資産税の推移、近隣の地代)を示してもらう
  2. 納得できなければ、従来の額を払い続ける
  3. 地主が受け取りを拒否したら、法務局に供託する
  4. 協議がまとまらなければ、調停を申し立てる

支払いを止めるのだけは避けてください。 滞納は契約解除の正当な理由になります。


評価額と売却価格は一致しない

借地権の評価額と売却価格の差

売却価格が下がる理由

  • 買い手が限られる(地主の承諾が要り、住宅ローンも通りにくい)
  • 承諾料や更新料が、買い手の負担として織り込まれる
  • 地代を払い続ける義務が付いてくる
  • 建て替えのたびに承諾が要る

実勢の目安

相続税評価額の6〜8割で取引されることが多いとされます。上の例(評価2,100万円)なら、1,260万〜1,680万円という幅です。

ただし、これはあくまで目安です。地主との関係、残存期間、建物の状態、接道条件で大きく振れます。

評価額が高いと、相続税で不利になる

売れる金額より高い評価額で相続税がかかることがあります。借地権は、この「評価と実勢のねじれ」が起きやすい財産です。

相続税がかかりそうなら、借地権の評価に慣れた税理士に見てもらってください。

判断の目安は相続税申告は自分でできる?に、依頼したときの費用は相続税の税理士費用相場にまとめています。

税額が出そうなら、税理士紹介の無料問い合わせで、借地権の評価を扱えるかを含めて相談できます。


相続税の評価を、もう少し細かく

借地権の相続税評価の種類

使い方によって式が変わる

状態 評価の式
自分(親)が住んでいた 自用地評価額 × 借地権割合
建物を人に貸していた(貸家建付借地権) 借地権の価額 × (1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)
定期借地権 原則として経済的利益と残存期間をもとに計算

貸家建付借地権は安くなる

借地の上に建てた家をアパートとして貸していた場合、評価はさらに下がります。 借家権割合は全国一律30%です。

借地権の価額が2,100万円、全室賃貸なら 2,100万円 ×(1 − 0.3 × 1)= 1,470万円。

小規模宅地等の特例は借地権にも使える

「土地の上に存する権利」も対象なので、借地権にも適用できます。

区分 限度面積 減額
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

親が住んでいた借地の実家を、配偶者または同居の親族が相続する場合、80%減額の対象になります。借地権評価2,100万円なら、420万円まで下がる計算です。

適用には要件がある

同居していない子が相続する場合は、いわゆる家なき子特例の要件(持ち家がないなど)を満たす必要があります。 判断を誤ると税額が数百万円変わるので、必ず確認してください。


地主に払うお金の一覧

借地で地主に払うお金の相場
名目 相場 発生するとき
地代 固定資産税・都市計画税の3〜5倍(住宅地) 毎月または毎年
更新料 更地価格の3〜5%(借地権価格の5〜10%) 契約更新時
建替承諾料 更地価格の3〜5% 建て替えるとき
条件変更承諾料 更地価格の10% 木造から鉄筋に変えるなど
譲渡承諾料 借地権価格の10% 売るとき
増改築承諾料 更地価格の3〜5% 大規模な改築
名義書換料(相続) 不要 —

どれも法律で決まった金額ではない

すべて慣習と交渉で決まります。 「相場だから」と言われても、そのまま受け入れる必要はありません。

相続直後に重なりやすい

親の代で更新が近づいていて、相続と同時に更新料を請求される——これがよくある展開です。更新料と名義書換料をまとめて請求されたら、名義書換料の分は切り離してください。


更新料は払う義務があるのか

更新料を払う義務があるか

契約書に定めがあるかどうかで変わる

状況 支払義務
契約書に更新料の定めがある 原則としてある
契約書に定めがない 原則としてない
過去に何度も払ってきた 慣習として認められる余地がある
契約書がない 争いになりやすい

払わないとどうなるか

更新料を払わないだけでは、契約解除の理由にはなりにくいとされています。法定更新によって契約は続きます。

ただし地主との関係は決定的に悪くなります。 その後の建て替えや売却で、承諾を得るのが難しくなる点は計算に入れてください。

更新料が用意できず「返そうか」と考えているなら、先に借地権の更新料が払えない|「返す」を選ぶ前に知っておく3つの出口を読んでください。返す判断は、解体費を自己負担したうえで権利を無償で手放すことになります。

金額が高すぎると感じたら

根拠を聞いてください。 「更地価格をいくらと見て、何%で計算したのか」です。根拠が示せない請求は、交渉の余地があります。


建て替えたいとき

借地上の建物を建て替える手順

契約書の特約を見る

「増改築禁止特約」「無断建替禁止特約」があれば、地主の承諾が要ります。 特約がなければ、原則として自由です。

承諾料の相場は更地価格の3〜5%

木造から木造への建て替えなら、この範囲です。木造から鉄筋コンクリートなど、条件そのものを変える場合は、条件変更承諾料として更地価格の10%程度になります。

承諾が得られないとき

裁判所に、地主の承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法17条)。増改築許可の申立てです。

建て替えが必要かを先に判断する

借地上の古い建物は、建て替えても土地は自分のものにならないという前提があります。建築費を回収できるかどうかを、残存期間と合わせて考えてください。

実務では、建て替えずに売る判断のほうが多いです。


古い一戸建ての玄関前

売る4つの出口

借地権を売る4つの出口
出口 手取りの目安 地主の承諾 難易度
①地主に売る 借地権価格の70〜90% 不要(相手が地主) 低
②第三者に売る 借地権価格の60〜80% 必要 高
③底地と同時売却 借地権価格の90〜100% 必要(協力が前提) 中
④等価交換 土地の一部を所有権で取得 必要(協力が前提) 中

いちばん高いのは③

借地権と底地が1つになれば、完全な所有権として売れます。 買い手が一気に広がり、住宅ローンも使えるので、価格が上がります。

地主にとっても、単独では売りにくい底地を現金化できるので、話が通りやすい方法です。

いちばん早いのは①

地主が買い取れば、承諾の問題自体が消えます。 ただし相手が1人しかいないので、価格交渉では不利になります。


4つの出口を、同じ土地で試算する

出口別の手取りの比較

前提

土地100㎡、更地価格3,000万円、借地権割合70%(記号C)、旧法借地権、木造築45年。

借地権価格は 3,000万円 × 70% = 2,100万円として計算します。

出口 売却額 差し引くもの 手取りの目安
①地主に売る 1,600万円 仲介手数料なし(直接取引) 約1,600万円
②第三者に売る 1,400万円 譲渡承諾料210万円+仲介手数料50万円 約1,140万円
③底地と同時売却 3,000万円を7:3で配分=2,100万円 仲介手数料70万円 約2,030万円
④等価交換 60㎡の所有権を取得 測量費50万円+登記費用 土地1,800万円相当

差は900万円

同じ土地でも、②と③では手取りが約890万円違います。 借地権の売却で最も大きな変数は、価格交渉ではなく「どの出口を選ぶか」です。

②が低くなる理由

譲渡承諾料が借地権価格の10%(210万円)かかり、そのうえ買い手が限られるため売却額自体も下がる——この二重の負担が効きます。

③が高い理由

借地権と底地が1つになって、普通の土地・戸建てとして売れるからです。買い手の数が桁違いに増え、住宅ローンも使えます。

現実には③が最初の選択肢

地主が応じてくれるかどうかが唯一の条件です。応じてもらえないと分かってから、①②を検討する——この順番が、手取りを最大にします。

税金を引いた後

③で2,030万円を手にした場合、取得費が不明なら概算取得費は約105万円。 課税譲渡所得は約1,925万円、長期譲渡なら税額は約391万円です。

空き家の3,000万円特別控除が使えれば、税額はゼロになります。使えるかどうかで400万円近く変わるので、必ず確認してください。


出口1|地主に買い取ってもらう

地主に借地権を買い取ってもらう流れ

流れ

  1. 借地権価格の目安を先に把握する
  2. 地主に売却の意向を伝える
  3. 価格を交渉する
  4. 売買契約と決済、建物の所有権移転

地主が買いたがる理由

底地だけでは使い道が乏しく、売っても安いからです。借地権を取り戻せば、更地として使えるようになります。

注意点

  • 相手が1人なので、相見積もりが取れない
  • 「借地権に価値はない」と言われることがある
  • 資金がなく、分割払いを提案されることがある

先に価格の根拠を持っておく

借地権割合から計算した評価額と、専門業者の査定額。 この2つを持って交渉に入ると、言い値になりません。


出口2|第三者に売る

第三者に借地権を売るときの承諾

地主の承諾が必須

承諾を得ずに売っても、地主は契約を解除できます(民法612条2項)。買い手も、それを知っているので買いません。

譲渡承諾料の相場は借地権価格の10%

借地権価格1,800万円なら、180万円程度です。

譲受人が将来相続する予定の親族である場合は、3%程度まで下がるのが実務の相場とされています。

誰が払うのか

売主(借地人)が払うのが一般的ですが、買主負担にする契約もあります。 どちらが払うかを、価格交渉と一体で決めてください。

仲介では売れないことが多い

承諾が取れるかどうかが不確定なうちは、一般の仲介では買い手が付きません。 住宅ローンの審査も通りにくい(土地に抵当権を設定できないため)。

借地権を専門に扱う買取業者は、地主との交渉を代行し、承諾が取れない場合は借地非訟まで見据えて買い取ります。

承諾が取れるか分からない段階でも、金額は聞ける

借地権は仲介で買い手が付きにくく、「売れない」と言われて止まりがちです。専門の買取業者は、地主との交渉込みで金額を出します。 査定は無料で、売ると決めていなくても取れます。

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出口3|底地と同時に売る

借地権と底地の同時売却

借地人と地主が組んで、完全な所有権として第三者に売る方法です。

なぜ高くなるのか

借地権単体でも、底地単体でも、買い手は限られます。 1つにまとまれば、普通の中古住宅・土地として売れるので、需要が一気に広がります。

代金の分け方

借地権割合で分けるのが基本です。借地権割合70%の地域なら、売却代金の70%が借地人、30%が地主という配分。

ただし交渉で動きます。 地主が「更地にする手間が省ける」と考えれば、借地人の取り分が増えることもあります。

進め方

  1. 地主に「一緒に売りませんか」と提案する
  2. 配分の考え方を先に合意する
  3. 共同で不動産会社に依頼する
  4. 同時に決済する

言い出しにくいとき

「相続でこの土地をどうするか考えている」と伝えるだけでも、地主側から提案が出てくることがあります。地主も高齢化していて、底地の相続に困っているケースが多いからです。


出口4|等価交換

借地権と底地の等価交換

土地を分けて、一部を借地人の所有権に、残りを地主の所有権にする方法です。

例

100㎡の借地、借地権割合60%の場合

  • 借地人:60㎡を所有権で取得
  • 地主:40㎡を完全な所有権として取り戻す

向いているケース

  • 土地が広く、分割しても使える
  • 現金の授受を最小にしたい
  • どちらも売る意思はないが、権利関係を整理したい

注意点

  • 分筆の測量費用がかかる(30万〜80万円)
  • 分けた後の土地が接道義務を満たすか
  • 譲渡所得税が発生する(固定資産の交換の特例で繰り延べできる場合がある)

狭い土地では成立しません。 実家の敷地が30坪程度なら、現実的ではないと考えてください。

接道条件の確認は再建築不可物件の実家を売るも参考になります。


地主が承諾しないとき|借地非訟

借地非訟の流れと費用

地主が譲渡を承諾しない場合、裁判所に「承諾に代わる許可」を求められます(借地借家法19条1項)。

申立てできる条件

借地権の譲渡が、地主に不利となるおそれがないこと。 買主の資力や、使い方が変わらないことが判断材料になります。

期間

申立てから決定まで、おおむね6か月〜1年です。受理から1〜1か月半で第1回審問、その後は約1か月ごとに進みます。

費用

項目 目安
申立手数料(印紙) 借地権が設定された土地の価格を基礎に算定
鑑定委員会の費用 数十万円
弁護士費用(着手金) 借地権価格2,000万円以下で40万円程度
裁判所が定める譲渡承諾料 借地権価格の10%前後

使う前に考えること

時間と費用がかかり、地主との関係は決定的に悪くなります。 まずは交渉、次に専門業者の代行、最後に借地非訟という順序が現実的です。

地主の介入権

借地非訟を申し立てると、地主は「自分が買い取る」と主張できます(借地借家法19条3項)。その場合、裁判所が価格を定めて地主が買い取ることになります。


もう1つの道|底地を買い取って所有権にする

底地を買い取って所有権にする

売るのではなく、地主から底地を買い取って完全な所有権にするという選択もあります。

買い取る価格の目安

底地の価格は、更地価格から借地権価格を引いた額が基準です。借地権割合70%の地域なら、底地は30%。

ただし実勢では、底地単体の流通性が低いため、更地価格の10〜15%程度で取引されることもあります。借地人が買う場合は、この安い水準では売ってもらえないことが多く、20〜30%あたりで交渉になります。

買い取った後に何が変わるか

  • 地代の支払いがなくなる
  • 建て替え・売却に承諾が要らなくなる
  • 住宅ローンが使えるようになる
  • 資産価値が上がる(借地権のままより高く売れる)

資金の目安

更地価格3,000万円、借地権割合70%の土地なら、底地の交渉価格は600万〜900万円といったところです。

向いているケース

  • その家に住み続ける予定がある
  • 将来、子に引き継ぐ
  • 地主が高齢で、底地を手放したがっている

向いていないケース

  • すぐ売って現金化したい(買い取ってから売ると、二重にコストがかかります)
  • 資金を借入でまかなう(借地権のままでは担保価値が低く、融資が付きにくい)

売ったときの税金

借地権を売ったときの税金

譲渡所得の計算

譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除 = 課税譲渡所得

税率

所有期間 税率(所得税+住民税+復興特別所得税)
5年超(長期) 20.315%
5年以下(短期) 39.63%

相続で取得した場合、親が取得した日を引き継ぎます(所得税法60条1項)。昭和からの借地なら、確実に長期です。

取得費が分からないとき

取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%を取得費とみなします(概算取得費)。古い借地では、権利金を払った記録が残っていないことが多く、この5%になりがちです。

譲渡価額1,500万円なら、取得費は75万円。 課税対象が大きくなるので、権利金の領収書や当時の契約書は必ず探してください。

譲渡費用に入るもの

  • 譲渡承諾料(名義書換料)
  • 仲介手数料
  • 建物の解体費用(土地を売るために取り壊した場合)
  • 測量費

空き家の3,000万円特別控除は使えるか

使える場合があります。 この特例の対象は「被相続人居住用家屋及びその敷地等」で、敷地等には土地の上に存する権利、つまり借地権も含まれます(租税特別措置法35条3項)。

ただし要件が細かく、1981年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始の直前に被相続人が1人で住んでいたこと、譲渡が相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までであることなどを満たす必要があります。

借地権で使えるかどうかは、必ず税理士に確認してください。 税金の全体像は相続した実家の売却にかかる税金にまとめています。


更地にして返すという選択

更地にして返す場合の費用

原則として更地返還

契約が終了したら、建物を解体して土地を返すのが原則です。解体費用は借地人の負担です。

解体費用の目安

建物 費用
木造30坪 90万〜150万円
鉄骨造30坪 120万〜210万円
鉄筋コンクリート30坪 180万〜300万円

借地は道が狭い旧市街地に多く、重機が入らないと費用が上振れします。

建物買取請求権がある

契約期間が満了し、更新されない場合、借地人は地主に対して建物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法13条1項)。

ただし、借地人の債務不履行で解除された場合には使えません。 また、建物が古すぎると時価がほぼゼロになります。

現実的な判断

解体して返すのは、いちばん損の大きい出口です。売れる可能性を先に確かめてから決めてください。


買い手が付かない理由を、1つずつ潰す

借地権が売れない理由と対処
売れない理由 対処
地主の承諾が取れるか不明 事前に譲渡の可否と承諾料の額を書面で確認する
住宅ローンが通らない 地主の承諾書(抵当権設定承諾)を用意する/現金購入者を狙う
契約書がない 地代の記録と建物登記で、条件を再現して書面化する
建物が古く、そのままでは住めない 解体前提の価格で出す/買取業者に回す
残存期間が短い(定期借地) 早く動く。時間が経つほど下がる

承諾の見通しを、先に紙にする

買い手がいちばん恐れるのは「買った後に承諾が取れない」ことです。

地主に対して、「第三者への譲渡を承諾する意向があるか」「承諾料はいくらか」を書面で確認しておくと、売却の話が一気に進みます。

金融機関の承諾書

借地権付き建物に住宅ローンを付けるには、地主から「土地に抵当権が設定されることを承諾する」という書面が必要になるのが一般的です。これが取れるかどうかで、買い手の層がまったく変わります。

一般の仲介では止まりやすい

承諾の交渉は、不動産の売買仲介の標準的な業務からは外れます。 「借地は扱えない」と断られたら、専門に扱う会社に切り替えてください。

売れないときの立て直し全般は実家が売れないにまとめています。

「借地だから」で断られたら、扱える相手に変える

一般の仲介では、地主との交渉まで踏み込まないことが多いです。借地権を専門に扱う会社なら、承諾の取得や借地非訟まで見据えて金額を出します。 複数から取ると、金額の幅が見えます。

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地主との交渉を有利に進める5つ

地主との交渉を有利に進める方法

1. 先に数字を持つ

借地権割合から計算した評価額と、専門業者の査定額。 この2つがないまま交渉に入ると、地主の言い値になります。

2. 相続の通知と、売却の相談を分ける

相続の通知は事務連絡として済ませ、売却の話は改めて持ち出すほうが、話がこじれません。同時に出すと、名義書換料と譲渡承諾料が混ざります。

3. 地主側の事情を聞く

地主も高齢化し、底地の相続に困っていることが多いです。「一緒に売る」提案が通るかどうかは、ここで決まります。

4. その場で決めない

金額を提示されたら、一度持ち帰る。 「専門家に確認します」と伝えるだけで、根拠のない請求は下がることがあります。

5. やり取りを書面で残す

口頭の合意は、後で覆ります。 承諾の意向、承諾料の額、支払いの時期は、必ず書面かメールで残してください。


売らずに持ち続ける選択

借地権を持ち続ける場合の収支

建物を賃貸に出す

建物を人に貸すのに、地主の承諾は原則として要りません。 借地権の転貸ではなく、建物の賃貸だからです。

ただし、契約に「転貸禁止」の特約がある場合は確認が必要です。

年間のコスト

項目 年額の目安
地代 24万〜48万円
建物の固定資産税 3万〜10万円
火災保険 2万〜5万円
修繕費の積立 10万〜30万円

判断の基準

家賃収入が、上のコスト合計を明確に上回るかどうかです。古い木造では、修繕費が読めず、赤字になることが多いです。

空き家のまま持ち続けるのは最悪の選択

地代を払い続けながら、収入はゼロ。 建物は傷み、価値は下がり続けます。 借地は「持っているだけで毎月出ていく」点が、所有権の空き家より厳しいです。


解体後の更地

相続放棄という選択肢

借地権を相続放棄すべきケース

検討すべきケース

  • 地代の滞納が積み上がっている
  • 建物が老朽化し、解体費用のほうが借地権価格より高い
  • 定期借地権で残存期間が短い
  • 他に相続財産がほとんどない

期限は3か月

相続を知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。

放棄しても、すぐには手を離れない

相続放棄をしても、現に占有している場合は、次の管理者に引き渡すまで保存義務があります(民法940条1項、2023年4月改正)。

全員が放棄したら

相続財産清算人の選任が必要になり、予納金として数十万〜100万円かかることがあります。

判断の詳細はいらない実家は相続放棄できる?にまとめています。


きょうだいで共有名義にしない

借地権を共有名義にする危険

借地権も共有できますが、勧められません。

理由

  1. 売るには共有者全員の同意に加えて、地主の承諾も要る(ハードルが二重になる)
  2. 地代の負担でもめる
  3. 次の相続で当事者がさらに増える

現実的な分け方

  • 1人が取得し、他のきょうだいに代償金を払う(代償分割)
  • 売却して現金で分ける(換価分割)

借地権は、所有権の不動産よりも「決められない状態」の害が大きいです。承諾を取る交渉に、全員の足並みが要るからです。

共有にしてしまった場合の解消方法は共有名義の実家は売れる?にまとめています。


地主が代替わりしたとき、底地が業者に売られたとき

底地が売られたときの借地権

借地権は消えない

建物の登記があれば、新しい地主にもそのまま主張できます(借地借家法10条1項)。契約の内容も、そのまま引き継がれます。

「新しい所有者になったので、契約を結び直してください」と言われても、条件を変える必要はありません。

業者が底地を買うケース

近年、底地を専門に買い取る業者が増えています。 買い取った後、借地人に対して次のいずれかを持ちかけてくるのが典型です。

  1. 借地権を買い取らせてほしい
  2. 底地を買い取ってほしい
  3. 地代の増額に応じてほしい
  4. 一緒に売却しませんか

4番目は歓迎してよい

同時売却は借地人にとっても手取りが最大になる出口です。業者は売却の実務に慣れているので、話が早く進むこともあります。

1〜3番目は慎重に

金額の根拠を必ず確認してください。 業者は借地権価格を低く見積もり、底地を高く見積もる傾向があります。

その場で判断せず、自分側でも査定を取ること。比較する数字がないまま交渉に入ると、必ず不利になります。

地主が個人から法人に変わった意味

個人の地主は「先代からの付き合い」で融通が利くことがありますが、法人は経済合理性で動きます。 逆に言えば、数字で話せば通るということでもあります。


誰に相談すればいいか

借地権の相談先の使い分け

借地権は、扱える専門家が限られます。 「不動産に強い」だけでは足りません。

相談先 扱える場面 費用の目安
借地権専門の不動産会社 価格査定、地主との交渉、買取 査定は無料
弁護士 借地非訟、地代の争い、明け渡し 着手金40万円前後〜
司法書士 建物の相続登記 6万〜10万円
税理士 相続税評価、譲渡所得の試算 相続税申告で遺産総額の0.5〜1%
不動産鑑定士 借地権価格の鑑定(裁判で使う) 30万〜60万円

最初に当たるのは不動産会社

金額が分からないと、他の専門家に相談しても判断材料がないからです。査定は無料で、売ると決めていなくても取れます。

弁護士が要るのは、争いになってから

地主が承諾しない、地代の増額を争う、明け渡しを求められている——この段階で初めて必要になります。交渉の入口から弁護士を立てると、相手も身構えます。

税理士は「借地権の経験があるか」で選ぶ

借地権の評価は、貸家建付借地権や小規模宅地等の特例が絡むと一気に複雑になります。 扱った件数を聞いてから決めてください。


やってはいけない5つ

借地権の相続でやってはいけないこと

1. 名義書換料をその場で払う

相続では不要です。 一度払うと取り戻せません。

2. 地代を止める

滞納は契約解除の正当な理由になります。 相続でもめている間も払い続けてください。

3. 地主の承諾を取らずに売る

契約を解除されます。 買い手にも迷惑がかかります。

4. 旧法から新法へ、安易に契約を切り替える

更新の保護が弱くなります。 「契約書を作り直しましょう」には慎重に応じてください。

5. 何もしないまま放置する

建物の相続登記は3年以内が義務です。 放置している間に相続人が増え、承諾を取る交渉がさらに難しくなります。

空き家のまま置いた場合のリスクは実家を空き家のまま放置する6つのリスクにまとめています。


ケース別の考え方

借地権の相続のケース別の考え方

ケース1|旧法借地権、都心、借地権割合70%

資産価値が高いケースです。底地と同時売却を第一に検討してください。 地主に相続が起きる前に動くのが有利です。

ケース2|定期借地権、残存15年

時間が経つほど価値が下がります。 早く売るか、期間満了時の解体費用を積み立てるか、どちらかを早めに決めてください。

ケース3|地主が高齢、または地主も相続が起きている

交渉の相手が変わると、話が最初からになります。 いま話ができるうちに、方向性だけでも合意しておくのが有利です。

ケース4|地代が長く滞納されている

契約解除のリスクがある状態です。まず滞納を解消し、そのうえで出口を考えてください。 解除されると建物買取請求権も使えなくなります。


よくある質問

Q. 地主から「相続を認めない」と言われました

A. 認める・認めないの問題ではありません。 相続は法律上当然に承継されるので、地主に拒否権はありません。 建物の相続登記を済ませ、地代を払い続けてください。

Q. 借地権は相続税の対象になりますか?

A. なります。 自用地評価額 × 借地権割合で評価します。土地を持っていないのに課税されるため、想定外の税額になることがあります。

Q. 地代を値上げすると言われました

A. 固定資産税の増額や近隣相場との比較など、根拠があれば認められます(借地借家法11条)。納得できない場合は、従来どおりの額を供託して争えます。 支払いを止めるのは避けてください。

Q. 建物を賃貸に出すのに、地主の承諾は要りますか?

A. 原則として不要です。建物を貸すのは、借地権の転貸ではありません。 ただし契約に特約がある場合は確認してください。

Q. 借地権付きの家は住宅ローンを使えますか?

A. 使えることもありますが、通りにくいです。土地に抵当権を設定できず、地主の承諾書が必要になるためです。買い手が現金購入者に絞られることが、売りにくさの主因です。

Q. 地主が底地を第三者に売ってしまいました

A. 建物の登記があれば、新しい地主にも借地権を主張できます(借地借家法10条1項)。契約はそのまま引き継がれます。 ただし新しい地主が不動産業者だと、買取や明け渡しの交渉を持ちかけてくることがあります。

Q. 借地権を担保に融資を受けられますか?

A. 建物に抵当権を設定する形になります。 借地権にも効力は及びますが、実行時に地主の承諾が要るため、金融機関は慎重です。

Q. 契約期間が切れたまま何十年も経っています

A. 法定更新により、契約は続いています(借地借家法5条)。期間の定めのない状態ではなく、更新された状態です。建物がある限り、権利は保護されます。

Q. 譲渡承諾料は経費になりますか?

A. 譲渡所得の計算上、譲渡費用として控除できます。 領収書を必ず残してください。

Q. 地主に売却を打診したら「更地にして返せ」と言われました

A. 契約期間中であれば、その要求に応じる義務はありません。 期間満了時でも、建物買取請求権があります(借地借家法13条)。専門家を入れて交渉してください。

Q. 借地権と底地、どちらを先に動かすべきですか?

A. 同時が最も高くなります。 どちらか一方だけを先に売ると、残った側の価値が下がります。 地主と足並みをそろえる価値は大きいです。

Q. 実家が借地かどうか、どうやって確かめますか?

A. 土地の登記事項証明書を法務局で取り、所有者欄を見てください。 親の名前がなければ借地です。固定資産税の課税明細に土地が載っていないことでも判断できます。

Q. 地主から「更地にして返せば、立退料を払う」と言われました

A. 契約期間中なら応じる義務はありません。 金額が妥当かは、借地権価格と比べて判断してください。 借地権価格を大きく下回る立退料であれば、売却したほうが手取りは多くなります。

Q. 借地の上に、増築部分が登記されていません

A. 未登記の増築部分があると、売却時に問題になります。 表題部の変更登記をしてから売るのが原則です。解体前提の売却なら、そのままでも進むことがあります。

Q. 親が地主から土地を買い取る話を進めていました

A. 口頭の合意は、相続人に当然には引き継がれません。 書面が残っていないか探し、地主に意向を確認してください。 話が生きているなら、底地買取は有力な選択肢です。

Q. 借地権を売ると、地代の精算はどうなりますか?

A. 決済日を基準に日割りで精算するのが一般的です。前払いしている場合は、買主から返してもらいます。

Q. 地主が行方不明です

A. 不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる方法があります。地代は法務局に供託して、滞納にならないようにしてください。

Q. 借地権の実家に、私が住み続けることはできますか?

A. できます。 相続で借地権を取得すれば、そのまま住み続けられます。 地代を払い、契約条件を守っていれば、地主から明け渡しを求められることはありません。

Q. 一般定期借地権のマンションを相続しました

A. 残存期間を必ず確認してください。 期間満了時には解体費用の負担が発生し、管理組合が積み立てていることが多いです。残存期間が短いほど売却は難しくなります。

Q. 借地権と底地を、私と地主で交換するのは贈与になりますか?

A. 等価であれば贈与にはなりません。 固定資産の交換の特例(所得税法58条)で、譲渡所得の課税を繰り延べられる場合があります。 等価でない場合、差額が贈与とみなされることがあるので、税理士に確認してください。

Q. 借地権の実家を、住まずに子に引き継がせたいのですが

A. 相続であれば承諾は不要なので、そのまま引き継げます。 ただし建物が古いと、次の代で建て替えか売却の判断が必要になります。 建替承諾が取れる契約かどうかを、いま確認しておいてください。

Q. 地主から「借地権を返してくれれば、更地にする費用は出す」と言われました

A. 解体費用の負担だけでは、借地権価格に見合いません。 借地権2,100万円の土地で、解体費150万円を出してもらうだけでは、1,950万円を放棄することになります。 必ず借地権価格と比べてください。

Q. 借地権付き建物の火災保険は、誰が入りますか?

A. 建物の所有者、つまり借地人(相続人)です。 相続後は名義変更を忘れないでください。 失効していると、事故時に地主から責任を問われることがあります。

Q. 遺産分割協議がまとまらないうちに、地主から更新を求められました

A. 相続人全員の共有状態として、更新に応じることはできます。 ただし更新料の負担割合でもめやすいので、先に分割の方針を決めてから更新の手続きに入るほうが安全です。

Q. 借地権の価格を、自分で調べる方法はありますか?

A. 国税庁の路線価図で借地権割合を確認し、更地価格に掛ければ評価額の目安は出ます。 ただし実勢価格はそこから下がります。 専門業者の査定を1つ取ると、幅が見えます。


まとめ|承諾が要る場面と、要らない場面を分ける

借地権を相続してからの判断の順番

進める順番

  1. 土地賃貸借契約書を探す(旧法か新法か、特約の有無)
  2. 建物の相続登記を3年以内に済ませる
  3. 地主に相続を通知し、地代を払い続ける
  4. 名義書換料を請求されても、その場で払わない
  5. 借地権割合から評価額を計算する
  6. 専門業者の査定で、実勢の金額を知る
  7. 4つの出口を、手取りで比べる
  8. 地主に「一緒に売る」提案をしてみる

借地権の実家は、「売れない」のではなく「売り方が違う」だけです。

相続では地主の承諾が要らない。売るときは要る。 この2つを分けて理解しておけば、不要な支払いも、無用な対立も避けられます。

実家じまい全体の流れは実家じまいの進め方に、売れないときの立て直しは実家が売れないにまとめています。

借地権は、専門に扱う相手でないと金額が出ない

一般の不動産会社では「借地は扱えない」と断られることがあります。 地主との交渉を含めて引き受ける専門の窓口なら、承諾が取れるかどうかも含めて判断できます。 相談・査定は無料です。

下記はいずれも首都圏が対象です。それ以外の地域では、地元で借地権を扱う不動産会社か、借地非訟の経験がある弁護士に相談してください。

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この記事について

執筆:葉山 湊(はやま みなと)

自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。司法書士・税理士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。制度や法令については、必ず一次情報(法務省・国税庁・裁判所)にあたって記事に反映しています。

本記事の主な出典は次のとおりです。

・賃借権の譲渡・転貸の制限:民法 第612条

・相続放棄後の保存義務:民法 第940条第1項

・借地権の存続期間・更新:借地借家法 第3条〜第6条

・借地権の対抗力:借地借家法 第10条第1項

・地代等増減請求権:借地借家法 第11条

・建物買取請求権:借地借家法 第13条第1項

・増改築の許可:借地借家法 第17条

・譲渡・転貸の許可と地主の介入権:借地借家法 第19条

・定期借地権:借地借家法 第22条〜第24条

・相続登記の申請義務:不動産登記法 第76条の2

・借地権割合・相続税評価:国税庁 財産評価基本通達(路線価図の借地権割合)

承諾料・更新料の相場に公的な統計はなく、本記事の数値は取引実務で言われている目安です。本記事の内容は2026年9月8日時点の公表情報にもとづきます。 法務・税務の判断は個別事情によって変わります。実行前に必ず専門家にご確認ください。

この記事を書いた人
葉山 湊実家じまいガイド運営者

企業の財務・事業の調査(デューデリジェンス)や資産の評価を本業としています。費用は内訳と前提条件に分けて示し、制度や税金は法令と国税庁・法務省・国土交通省・各自治体などの一次情報で確かめて、出典と情報の時点を記事に明記しています。

税理士・司法書士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。個別の税務・法律の判断は、専門家にご確認ください。

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