「親が施設に入ることになった」「実家に誰も住まなくなった」——そう気づいたときから、実家じまいは始まります。
ただ、いざ手をつけようとすると順番が分かりません。片付け業者が先か、不動産会社が先か、相続の手続きはいつやるのか。調べても「ステップ1:家族で話し合う」「ステップ2:片付ける」と並んでいるだけで、なぜその順番なのかは書かれていないことがほとんどです。
この記事では実家じまいの進め方を5ステップに整理したうえで、順番を間違えると具体的にいくら損をするのかを数字で示します。とくに「解体してから売るか、古家付きのまま売るか」は、判断を誤ると100万円単位で手取りが変わる分岐点です。相場の羅列で終わらせず、ご自身の実家に当てはめて計算できる形で解説します。
- 実家じまいの正しい順番は「①方針決定 → ②相続登記 → ③遺品整理 → ④査定 → ⑤出口の実行」の5ステップ
- 費用総額の目安は木造30坪・土地50坪の実家で約140万〜330万円。出口の選び方だけで2倍以上変わる
- 最大の分岐は「解体して更地で売る」か「古家付きのまま売る」か。解体関連費約145万円を土地値の上昇で回収できず、解体したほうが手取りが減るケースは地方では珍しくない
- 期間は最短でも半年、平均1〜2年。相続放棄3ヶ月・相続税申告10ヶ月・相続登記3年など法定期限が複数走っているため、着手が遅いほど選べる手が減る
なお、費用の数値はいずれも一般的な相場のレンジであり、地域・物件条件・業者によって上下します。ご自身のケースでは必ず見積もりと査定で実数を確認してください。
実家じまいとは?「家じまい」「生前整理」との違い
実家じまいとは、誰も住まなくなった実家を片付け、建物と土地の行き先を決めて、名義や契約をすべて清算するまでの一連の作業を指します。単なる大掃除でも不動産売却でもありません。「モノ」「不動産」「権利・契約」という性質の違う3種類の整理が同時に走るのが、実家じまいが厄介な理由です。
| 言葉 | 誰が主体か | 対象 | タイミング |
|---|---|---|---|
| 実家じまい | 子世代 | 実家の家財・建物・土地・契約すべて | 親の転居後、または相続後 |
| 家じまい | 本人または子 | 住まいそのものの処分 | 住まなくなったとき |
| 生前整理 | 親本人 | 持ち物・財産・情報 | 元気なうち |
| 遺品整理 | 遺族 | 故人の持ち物 | 死後(四十九日前後が多い) |
実家じまいは、このうち遺品整理と不動産処分を含んだ、いちばん範囲の広い概念だと考えてください。だからこそ「何から始めればいいか分からない」という状態になります。
実家じまいを始めるべきタイミング
実家じまいの着手時期は、大きく2つに分かれます。
①親が存命のうち(推奨)
親本人に「これは残す」「これは処分していい」を確認できるため、仕分けのスピードがまったく違います。何より売却の判断を親本人ができるのが大きい。相続後は相続人全員の合意が必要になり、意思決定のコストが跳ね上がります。
ただし親が認知症などで判断能力を失うと、たとえ子でも実家を売却できません。成年後見人の選任が必要になり、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可まで求められます。
②親の死後(相続してから)
現実にはこちらが多数派です。着手の目安は四十九日を過ぎた頃。ただし後述する法定期限が同時に走り出しているため、「落ち着いてから」と1年放置すると、使えたはずの税制特例を失うことがあります。
どちらにも共通するのは、空き家になった瞬間から費用だけが発生し続けるという事実です。
実家を空き家のまま放置する4つのリスク
リスク1:固定資産税が最大6倍になる
住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」があり、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されています。ところが空家等対策特別措置法にもとづき「特定空家」「管理不全空家」に指定され勧告を受けると、この特例が解除され土地の固定資産税は実質6倍(都市計画税も3倍)になります。2023年12月の改正で、特定空家の一歩手前である「管理不全空家」も勧告対象に加わり、指定のハードルは下がりました。
リスク2:建物が売れなくなる——人が住まない家は湿気がこもり、床下や壁内の腐朽が驚くほど速く進みます。数年放置すると「リフォームすれば住める家」から「解体費がかかるだけの負動産」に変わります。
リスク3:管理費用が毎年出ていく——固定資産税、火災保険、電気の基本料金、草刈り、遠方なら帰省の交通費。地方の戸建てでも年10万〜20万円はかかり、5年で50万〜100万円が消えます。
リスク4:損害賠償責任を負う——屋根瓦の落下や倒木で他人に損害を与えれば、土地工作物責任として所有者が賠償責任を負います。空き家であることは免責の理由になりません。
「とりあえず様子を見る」がいちばん高くつく、というのが実家じまいの原則です。
【結論】実家じまいの進め方は5ステップ|順番を間違えると数十万円損する

実家じまいの進め方は、次の5ステップです。この順番には理由があり、入れ替えると必ずどこかで損をします。
| ステップ | やること | 期間の目安 | ここでの注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 相続人と方針を決める | 1〜3ヶ月 | 相続放棄は「相続を知った日から3ヶ月以内」 |
| 2 | 相続登記で名義を変える | 1〜2ヶ月 | 3年以内に登記しないと10万円以下の過料 |
| 3 | 遺品整理・家財の処分 | 1〜3ヶ月 | 捨てる前に権利証・保険証券を必ず捜索 |
| 4 | 解体する前に査定を取る | 2週間〜1ヶ月 | 「現況」と「更地」の両方の価格を出してもらう |
| 5 | 出口を実行する | 3〜12ヶ月 | 譲渡益が出たら翌年に確定申告 |
やってはいけない3つの「逆順」

この順番が重要である理由は、逆順にしたときの損失を見ると一目で分かります。実家じまいで起きる失敗のほとんどは、次の3パターンのどれかです。
| やりがちな逆順 | 何が起きるか | 損失の目安 |
|---|---|---|
| 遺品整理より先に解体 | 家財が残ったままの解体は「残置物処分費」として上乗せされる。遺品整理より単価が高く、買取もされない | +10万〜50万円 |
| 査定より先に解体 | 古家付きのほうが高く売れるケース、解体不要なケースを潰す。更地にすると住宅用地特例も外れる | 解体費140万円が丸ごと無駄になることも |
| 相続登記を後回し | 売却の話が進んでから登記に着手すると戸籍収集で1〜2ヶ月止まり、買主が離れる。相続人がさらに亡くなれば関係者が倍増する | 機会損失+手続費用の増加 |
とくに2つ目の「査定より先に解体」は取り返しがつきません。建物は壊したら戻せないためです。解体の判断は、必ず査定結果を見てから行ってください。
実家じまいは何年かかる?
実務上の目安は最短6ヶ月、平均1〜2年です。内訳は合意形成に1〜3ヶ月、相続登記に1〜2ヶ月、遺品整理に1〜3ヶ月、売却活動に3〜12ヶ月。売却活動の期間がいちばんブレます。
2年、3年と延びる原因はほぼ1つで、ステップ1の合意形成でつまずいているケースです。相続人の1人が「まだ売りたくない」と言い続ける間、ずっと固定資産税と管理費が出ていきます。方針さえ決まれば実務は半年〜1年で片付きます。
実家じまいの費用総額はいくら?3パターンで比較シミュレーション
「実家じまいの費用は数十万円から数百万円」という説明では幅が広すぎて、自分の家に当てはめられません。ここでは条件を固定したモデルケースで、出口の選び方によって手取りがどう変わるかまで計算します。
モデルケースの前提
- 地方都市の郊外/木造2階建て・延床30坪・築45年・4LDK/土地50坪
- 相続人は子2人、住宅ローン残債なし、境界は未確定
- 古家付き土地としての想定売却価格は600万円、更地にした場合は800万円
パターン別の費用総額と手取り

| パターン | 売却価格 | 費用合計 | 手取り |
|---|---|---|---|
| A 古家付きで売る | 600万円 | 143万円 | 457万円 |
| B 解体して更地で売る | 800万円 | 303万円 | 497万円 |
| C 3年放置してから解体・売却 | 760万円 | 327万円 | 433万円 |
注目してほしいのは、費用がいちばん安いパターンAが、手取りでは1位ではない点です。実家じまいは「費用をいくら抑えたか」ではなく「最終的にいくら手元に残ったか」で判断してください。逆に費用も手取りも悪化するのが、パターンCの「とりあえず放置」です。
費用の内訳一覧
| 費目 | A 古家付き | B 更地 | C 放置後 |
|---|---|---|---|
| 遺品整理・家財処分 | 40万円 | 40万円 | 40万円 |
| 相続登記(登録免許税+司法書士) | 15万円 | 15万円 | 15万円 |
| 確定測量・境界確定 | 50万円 | 50万円 | 50万円 |
| 建物解体・付帯工事 | — | 140万円 | 140万円 |
| 建物滅失登記 | — | 5万円 | 5万円 |
| 仲介手数料(税込) | 26万円 | 33万円 | 32万円 |
| 保有コスト(税・保険・管理) | 12万円 | 20万円 | 45万円 |
| 合計 | 143万円 | 303万円 | 327万円 |
見落とされがちなのが確定測量の50万円です。古い戸建てでは境界標が失われていることが多く、境界未確定の土地は買主が住宅ローンを組みにくいため、実質的に測量が必須になります。「解体費だけ用意すれば足りる」と考えていると、ここで資金計画が崩れます。
ステップ1|相続人と方針を決める(相続開始〜3ヶ月)
実家じまいの成否の8割はこの最初のステップで決まります。作業ではなく合意形成の段階なので後回しにされがちですが、ここが曖昧なまま片付けや査定に進むと、あとで全部やり直しになります。
最初に確認する4つのこと
①相続人は誰か——被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて確定します。前婚の子や認知した子が判明することがあり、ここを飛ばすと遺産分割協議そのものが無効になります。自力なら1〜2ヶ月、司法書士に頼めば数万円で代行できます。
②遺言書はあるか——自宅の金庫、仏壇、貸金庫、公証役場の遺言検索システム、法務局の自筆証書遺言保管制度を確認します。法務局に預けられていない自筆証書遺言は、開封前に家庭裁判所の検認が必要です。勝手に開封しないでください。
③負債はないか——実家に抵当権が残っていないかを登記事項証明書(法務局で1通600円)で確認します。負債が上回るなら相続放棄の検討が必要で、これには3ヶ月の期限があります。
④実家をどうしたいか、相続人それぞれの希望——「売る」「貸す」「誰かが住む」「手放す」のどれかです。ここで全員の希望を出し切らないと、査定を取った後に「やっぱり売りたくない」が出てきます。
「とりあえず共有名義」がいちばんの悪手
話し合いがまとまらないとき、「ひとまず兄弟の共有名義にしておこう」という結論に流れがちです。これは実家じまいで最も避けるべき選択です。
共有名義の不動産は、売却にも解体にも共有者全員の同意が必要です。いまは仲が良くても、10年後に共有者の1人が亡くなれば持分は配偶者や子に相続され、関係者が3人から6人、10人へと増えていきます。所有者不明土地の多くはこうして生まれました。売る方向で揃っているなら、代表者1人の名義にして売却代金を分ける「換価分割」のほうが確実に早く終わります。
相続放棄を選ぶなら3ヶ月以内
売れる見込みがなく負債のほうが大きいなら、相続放棄という選択肢があります。期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内で、家庭裁判所への申述が必要です。
注意点が2つあります。第一に、相続放棄は実家だけを捨てて預貯金は受け取る、という使い方はできません。すべての財産を放棄することになります。第二に、放棄すると次順位の相続人(親、兄弟姉妹)に権利と管理義務が移るため、相談なく放棄すると親族に迷惑をかけます。全員が放棄した場合は相続財産清算人の選任が必要で、数十万円の予納金を求められることもあります。
「実家は要らないが他の財産は受け取りたい」なら、いったん相続したうえで相続土地国庫帰属制度を使う道もあります。
ステップ2|相続登記で名義を変える(2024年から義務・3年以内)
方針が決まったら、売却や解体より先に相続登記を済ませます。理由は単純で、故人名義のままでは実家を売ることも、解体の請負契約を結ぶこともできないからです。
2024年4月1日から相続登記は義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。この義務は施行日前に発生した相続にもさかのぼって適用され、その期限は2027年3月31日です。長年名義を放置している実家がある方は、すでに残り時間がわずかです。
相続登記の費用と必要書類
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4% | 評価額500万円なら2万円 |
| 司法書士報酬 | 6万〜15万円 | 相続人の人数・不動産の個数で変動 |
| 戸籍・住民票などの取得費 | 5,000円〜2万円 | 取り寄せる自治体数による |
| 登記事項証明書 | 1通600円 | 現況・抵当権の確認用 |
必要書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式、相続人全員の戸籍謄本と住民票、遺産分割協議書と印鑑証明書、固定資産評価証明書などです。3年以内の申請が難しい事情がある場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで義務だけを先に果たせます。ただし名義変更ではないため売却はできず、あくまで暫定措置です。
ステップ3|遺品整理・家財の処分をする

名義が整ったら家の中を空にします。実家じまいでいちばん体力と時間を使う工程で、遠方に住んでいるならほぼ確実に業者の力を借りることになります。
遺品整理の費用相場【間取り別】
| 間取り | 費用相場 | 作業人数・時間の目安 |
|---|---|---|
| 1R・1K | 3万〜8万円 | 1〜2名/2〜4時間 |
| 1DK | 5万〜12万円 | 2名/半日 |
| 1LDK | 7万〜20万円 | 2〜3名/半日〜1日 |
| 2LDK | 12万〜30万円 | 3名/1日 |
| 3LDK | 17万〜50万円 | 3〜4名/1〜2日 |
| 4LDK以上・戸建て | 22万〜70万円 | 4名以上/2〜3日 |
金額の幅が大きいのは、荷物量に加えて作業環境で変わるためです。エレベーターのない上階、トラックを横付けできない狭い前面道路、庭の物置や大型の植木といった条件でそれぞれ数万円の加算があります。仏壇・神棚の魂抜き供養(3万〜10万円程度)や家電のリサイクル料金も別途です。
捨てる前に必ず探す6つのもの
業者に一括で任せる前に、以下は自分の手で探してください。誤って処分すると、あとの工程が止まります。
- 登記識別情報通知・権利証……紛失しても売却は可能だが、司法書士の本人確認情報の作成に5万〜10万円かかる
- 実印と印鑑登録カード……遺産分割協議書に必要
- 預金通帳・証券会社からの郵便物……相続財産の把握漏れを防ぐ
- 生命保険・火災保険の証券……火災保険は解約すると未経過分が返戻される
- 建築確認済証・検査済証・建築時の図面……建物の適法性や再建築の可否判断に使う
- 土地の測量図・境界確認書……あれば確定測量の費用を大きく圧縮できる
とくに5と6は書類棚か仏壇の引き出しに眠っていることが多く、見つかれば数十万円の節約になります。
遺品整理の費用を下げる4つのコツ
1. 3社以上から見積もりを取る——遺品整理に定価はなく、同じ物量でも会社によって倍近い差がつきます。相見積もりは値下げ交渉より、適正価格の水準を知るために取ります。
2. 見積もりは訪問で取る——電話やメールだけの概算は、当日「思ったより多い」と追加請求される典型です。追加費用が発生する条件を書面に明記してもらってください。
3. 買取とセットで依頼する——家具・家電・骨董品・着物・貴金属を買い取れる業者なら、その分が作業費から相殺されます。買取額は見積書に分けて記載してもらいます。
4. 自分で減らせる分は先に減らす——衣類や書籍など自治体の回収に出せるものを先に処分しておくと、必要なトラックの台数が変わることがあります。
1社ずつ電話をかけて訪問日程を調整するのは、遠方に住んでいると現実的ではありません。一括見積もりなら1回の入力で複数社から見積もりが届き、料金と作業範囲を横並びで比較できます。高額請求を避けるいちばん手軽な自衛策です。
より詳しい料金の内訳や悪徳業者の見分け方は、遺品整理業者の費用相場|間取り別料金と悪徳業者を避ける7つの確認点で解説しています。
ステップ4|解体する前に実家の価値を調べる(査定)
家が空になったら、解体業者ではなく不動産会社に先に連絡します。実家じまいの進め方で、ここがいちばん間違えられているポイントです。
なぜ「解体より査定が先」なのか
①古家付きのほうが高く売れることがある
築古の戸建てでも、リフォーム前提の実需層や買取再販業者には値がつきます。とくに再建築不可の土地や市街化調整区域では、建物を壊すと二度と建てられず、更地にした瞬間に価値が激減します。この判断は査定に出さなければ分かりません。
②解体費を買主が負担してくれることがある
「解体更地渡し」という条件で売買契約を結び、解体費を売買価格に織り込む方法があります。売主が先に解体費を立て替える必要がなく、売れ残りリスクも負いません。
③更地にすると固定資産税が上がる
建物を壊した時点で住宅用地の特例が外れるため、翌年から土地の固定資産税は最大6倍になります。すぐに売れる見込みがないまま解体すると、売れるまでの保有コストが跳ね上がります。
査定を依頼するときは、必ず「現況(古家付き)の価格」と「更地にした場合の価格」の両方を出してもらってください。この2つの差額が、次のステップの判断材料そのものになります。
一括査定の使い方と、営業電話を減らすコツ
相続した実家は、多くの場合ご自身の生活圏から離れた場所にあります。地元の不動産会社を1社ずつ訪ねるのは現実的ではないため、一括査定で複数社の価格を同時に取るのが効率的です。ポイントは3つです。
- 備考欄に「相続した空き家」「更地価格も知りたい」と書く……相続案件の経験がある会社かどうかが返信で分かります
- 連絡方法を「メール希望」に設定する……多くのサービスに指定欄があり、電話の本数を抑えられます
- 依頼社数は4〜6社にとどめる……多すぎると連絡対応だけで疲れます
なお、極端に高い査定額を出す会社には注意してください。媒介契約を取るために高い数字を提示し、契約後に値下げを求めてくる手法があります。飛び抜けて高い1社と低い1社を除いた中央値を、その実家の実力値と考えるのが安全です。
売る決心がついていなくても構いません。解体するかどうかを判断する材料として、まず現況価格と更地価格の2つを把握してください。相続した実家に強いサービスは相続した実家におすすめの不動産一括査定サービス比較で比較しています。
ステップ5|出口を決める(売却・解体・活用・手放す)

査定額が出そろったら、いよいよ出口を確定します。選択肢は大きく4つです。
出口1|古家付き土地として売る
建物を残したまま売る方法です。解体費を負担せずに済み、住宅用地の特例が続くため保有コストも低いまま。買主は自分の希望で建て替えやリフォームができるので、立地が良ければ十分に売れます。
デメリットは買主の層が狭くなることと、契約不適合責任です。築古物件は「契約不適合責任を免責」とする特約を付けて売るのが一般的ですが、知っている不具合(雨漏り、シロアリ、給排水の不良など)は必ず告知してください。黙っていると免責特約があっても責任を問われます。
出口2|解体して更地で売る|解体費用の相場
建物を解体して土地だけにする方法です。買主の層が広がり売却期間も短くなる傾向がありますが、費用は先払いです。
| 構造 | 坪単価の目安 | 延床30坪の場合 |
|---|---|---|
| 木造 | 3万〜5万円 | 90万〜150万円 |
| 鉄骨造 | 4万〜7万円 | 120万〜210万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 6万〜9万円 | 180万〜270万円 |
見積書で必ず確認したいのが、本体工事とは別に計上される付帯工事です。後出しの追加請求になりやすい部分です。
| 付帯工事の項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 残置物(家財)の処分 | 10万〜50万円 |
| ブロック塀・門扉の撤去 | 5,000〜1万円/㎡ |
| 庭木・庭石・池の撤去 | 5万〜30万円 |
| カーポート・物置・浄化槽の撤去 | 3万〜15万円 |
| アスベスト事前調査 | 3万〜10万円(全建築物で義務) |
| アスベスト除去 | 使用箇所と面積により数十万円〜 |
| 重機が入らない場合の手壊し加算 | 本体工事費の1〜3割増 |
残置物処分の10万〜50万円に注目してください。ステップ3の遺品整理を先に済ませておけば、この費用はほぼゼロにできます。「遺品整理より先に解体するな」と書いた理由がここにあります。
解体後は工事完了から1ヶ月以内に建物滅失登記を申請する義務があります(土地家屋調査士に依頼して4万〜6万円)。放置すると建物の固定資産税が課され続けます。
【重要】解体費を回収できる損益分岐点の計算

ここが実家じまい最大の分かれ道です。「更地のほうが売れやすい」は事実ですが、売れやすさと手取りの多さは別の話です。
先ほどのモデルケース(古家付き600万円・費用143万円・手取り457万円)で計算すると、更地化による売値の上昇が約160万円を超えて初めて、解体したほうが手取りが多くなります。土地50坪なら坪単価3.2万円以上の上昇が必要という計算です。次の式に査定結果を当てはめてください。
解体してよい条件
(更地の査定額 − 古家付きの査定額) > (解体費+付帯工事費+建物滅失登記費) + (売れるまでの固定資産税の増加分)
この不等式が成り立たないなら、解体は手取りを減らすだけです。「更地のほうが売りやすい」という理由だけで解体を決めないでください。
なお多くの自治体には老朽危険空き家の除却補助金があり、解体費の5分の1〜2分の1、上限50万〜100万円が交付されるケースがあります。ただし着工前の申請が必須で、契約後の申請は受け付けられません。制度の有無・金額・要件は自治体ごとに異なるため、解体を決めたら市区町村の空き家担当窓口に確認してください。
解体業者の選び方と見積書のチェック項目は、実家の解体費用はいくら?坪数別の相場と補助金・安くする方法にまとめています。
出口3|貸す・活用する
売らずに収益を生ませる選択で、賃貸・駐車場・資材置き場などがあります。
ただし築40年超の戸建てを賃貸に出すには、水回りと屋根の改修だけで200万〜500万円かかることが珍しくありません。月6万円の家賃で300万円を投じるなら、空室ゼロでも回収に4年以上。需要のない立地で「貸せば何とかなる」は成立しません。
建物を解体したうえでの土地活用(駐車場、太陽光、資材置き場、事業用定期借地など)を検討する場合は、田舎の実家・土地の活用方法9選で初期費用と利回りの目安を比較しています。
出口4|相続土地国庫帰属制度で手放す
2023年4月に始まった相続した土地を国に引き取ってもらう制度で、売れない・貸せない・引き取り手もいない土地の最後の選択肢です。
ただし条件は厳しく、建物が建っている土地は対象外です。つまり解体して更地にしたうえで申請します。担保権が設定された土地、境界が不明な土地、埋設物や土壌汚染がある土地も却下されます。
費用は審査手数料が土地1筆14,000円、承認時の負担金が原則20万円。解体費140万円+負担金20万円を払って手放すことになるため、まずは売却の可能性を探るのが先です。
実家じまいで使える税金の特例と期限

実家じまいには、知っているかどうかで税額が数百万円変わる特例があります。どれも期限付きです。
空き家の3,000万円特別控除
相続した実家を売却して利益(譲渡所得)が出たとき、最大3,000万円まで控除できる特例です。主な要件は次のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物でないこと
- 相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所も一定要件で可)
- 相続後、売却まで事業・貸付・居住に使っていないこと
- 売却代金が1億円以下で、耐震改修または取壊しをして売ること
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
2024年1月1日以降の譲渡からは、売却後の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合も対象になりました。一方で相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円に縮減されています。
取得費加算の特例
相続税を納めた人が対象で、支払った相続税のうちその不動産に対応する分を取得費に加算できる制度です。期限は相続税の申告期限の翌日から3年以内、つまり相続開始から3年10ヶ月以内。3,000万円特別控除とは併用できないため、どちらが有利かは試算して選びます。
期限カレンダー
| 相続開始からの期間 | 手続き | 遅れると失うもの |
|---|---|---|
| 3ヶ月 | 相続放棄・限定承認 | 負債を引き継ぐことが確定する |
| 4ヶ月 | 準確定申告 | 加算税・延滞税 |
| 10ヶ月 | 相続税の申告・納付 | 小規模宅地等の特例などが使えなくなる |
| 3年 | 相続登記(義務) | 10万円以下の過料 |
| 3年10ヶ月 | 取得費加算の特例 | 譲渡所得税が増える |
| 3年経過日の属する年の12月31日 | 空き家の3,000万円特別控除 | 最大3,000万円の控除 |
税制の要件は改正が多く、個別の事情で判定が変わります。金額が大きいので、売却の方針が固まった段階で一度は税理士に確認することを強くおすすめします。費用の目安は相続税の税理士費用相場にまとめています。
よくある質問
Q. 実家じまいは何から始めればいいですか?
まず相続人の確定と方針決定です。片付けや査定ではありません。誰が相続するかが決まっていないと、業者への発注も売却契約も進められないためです。
Q. 費用は誰が払うのが一般的ですか?
実家を相続する人が負担し、その分を遺産分割で調整するのが一般的です。売却前提なら売却代金から精算し、立替の負担を減らす方法もあります。誰がいくら払うかは着手前に書面で決めておいてください。 後から揉める最大の原因です。
Q. お金がない場合でも進められますか?
進められます。遺品整理は買取とセットにする、解体は「解体更地渡し」で買主に負担してもらう、自治体の補助金を使う、といった方法で初期負担を抑えられます。まず査定を取り、売却代金で費用を賄えるかを確認してください。
Q. 親が反対している場合はどうすればいいですか?
「処分」ではなく「安全と管理」の話から入ってください。誰も住まない家が傷むこと、災害時に責任を負うこと、いま決めておけば親の希望を反映できることを順に伝えます。いきなり売却を持ち出すと感情的な反発を招きます。
Q. 仏壇や神棚はどう処分すればいいですか?
菩提寺や近隣の寺社で魂抜き(閉眼供養)をしてから処分します。費用は3万〜10万円程度。遺品整理業者の多くが供養の手配まで請け負っているため、見積もり時に相談してください。処分前に写真を残し、思い出の品は一箱だけ取っておくと、親族間の感情的な対立を防げます。
まとめ|実家じまいの進め方は「順番」がすべて
実家じまいの進め方を、もう一度整理します。
- 相続人と方針を決める——ここで8割が決まる。共有名義は避ける
- 相続登記で名義を変える——2024年から義務。3年以内、過料10万円以下
- 遺品整理・家財の処分——解体より先に。権利証と図面は必ず捜索
- 解体する前に査定を取る——現況価格と更地価格の両方を
- 出口を実行する——売る・解体する・貸す・国に返す
費用総額はモデルケースで約140万〜330万円。ただし重要なのは費用の絶対額ではなく、最終的にいくら手元に残るかです。とくに解体の判断は「更地の査定額 − 古家付きの査定額」が解体関連費を上回るかどうかで決めてください。
そして実家じまいで最も高くつくのは「何もしないこと」です。空き家は毎年10万〜20万円の維持費を食い続け、建物は売れないところまで傷み、法定期限は一つずつ過ぎていきます。
最初の一歩は実家がいくらで売れるのかを知ることです。査定は無料で売却の義務もありません。現況価格と更地価格の2つが手に入れば、この記事の判断基準はすべて使えます。
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