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死後事務委任契約の費用は、総額で50万円から200万円程度が目安です。幅が大きいのは、預託金がいくら必要かで総額が動くからです。
ただ、この契約でいちばん確かめるべきなのは金額ではありません。預けたお金が、どう管理されるかです。
2016年、高齢者から預託金を集めていた公益財団法人が破綻しました。約1,600人から集めた約9億円のうち、2億7,412万円が職員の賞与や事務所の開設費に使われていました。 破産した場合に戻る見込みは4割程度と報じられています。
国は2024年6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を出し、預託金の扱いを含めた留意事項を整理しました。この記事では、費用の内訳と、ガイドラインを踏まえて契約書で押さえる点をまとめます。
結論|先に3つ

1. 費用は3つに分かれる
契約書の作成費用、受任者の報酬、そして預託金です。見積書が1行になっている場合は、分けて出してもらいます。
2. 預託金は、事業者の運転資金と分けて管理されているか
国のガイドラインは、信託銀行や信託会社との信託契約による保全が望ましいとしています。
3. 「委任者が死亡しても契約は終了しない」と契約書に書いてあるか
民法では、委任は委任者の死亡で終了します。この一文がないと、いざというときに受任者が動けません。
何を頼めるかは、相談で洗い出す
死後事務は、葬儀だけではありません。入院の手続き、施設の退去、家財の処分、公共料金の解約まで、必要な範囲は人によって違います。 全国15拠点で、初回相談は無料です。
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費用の内訳

| 項目 | 目安 | 性格 |
|---|---|---|
| 契約書の作成費用 | 20万〜50万円 | 専門家に依頼したときの作成報酬 |
| 公証役場の手数料 | 数万円 | 公正証書にする場合 |
| 受任者の報酬 | 20万〜50万円 | 死後に事務を実行する対価 |
| 預託金 | 70万円〜 | 実費の前払い。葬儀や納骨の希望で変わる |
総額では50万円から200万円程度です。預託金が総額の半分以上を占めることも珍しくありません。
分けて見る理由は、性格がまったく違うからです。 作成費用と報酬は事業者の収入になりますが、預託金は預けているだけのお金で、余れば返ってくるはずのものです。
見積書が「死後事務パッケージ一式 120万円」のような書き方になっている場合、どこまでが報酬でどこからが実費かが分かりません。内訳を書いた書面を出してもらってください。
公正証書にする費用

死後事務委任契約は、口約束でも私文書でも成立します。ただ、実際に使う場面では公正証書にしておくほうが通ります。
- 銀行や役所で、受任者の権限を説明しやすい
- 原本が公証役場に残るので、紛失しても再発行できる
- 本人の意思能力を公証人が確認するため、後から争われにくい
費用は、日本公証人連合会が示す手数料によります。
| 内容 | 手数料 |
|---|---|
| 私署証書の認証 | 1万1,000円 |
| 任意後見契約公正証書 | 1契約 1万3,000円(3枚を超えると1枚300円加算) |
| 任意後見の収入印紙 | 2,600円 |
| 任意後見の登記嘱託手数料 | 1,600円 |
| 正本・謄本(書面) | 枚数×300円 |
死後事務委任契約そのものの手数料は、目的の価額に応じた額の2分の1とされています。任意後見契約と一緒に作ることが多く、その場合は委任契約の分が別に加算されます。
公証人に出張してもらう場合は、手数料が加算されます。入院中や施設に入っている場合はこの形になります。

預託金を、どこに置くか

ここが、この契約でいちばん重要なところです。
2024年6月のガイドラインは、預託金について次の2つを望ましいとしています。
- 事業者自身の運営資金とは明確に区分して管理すること
- 利用者に定期的に管理状況を報告すること
そのうえで、保全の方法として信託銀行または信託会社を相手方とする信託契約を利用することが望ましいとしています。
理由は、倒産隔離です。信託にしておけば、事業者が破綻しても預託金は債権者の取り立ての対象になりません。
ガイドラインは代わりの方法も挙げています。
- 士業などの業法の規制を受ける別法人に管理を委託する
- 事業者の運転資金と分別した預金で管理する
ただし、これらについては必ずしも倒産隔離が効かず、破綻時に十分な還付を受けられない可能性があると明記しています。
預託金が戻らなかった実例

2016年に破綻した公益財団法人日本ライフ協会の件です。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 預託金を預けていた人 | 約1,600人 |
| 預かっていた預託金 | 約9億円 |
| 流用された額 | 2億7,412万2,941円 |
| 負債総額 | 約12億円 |
| 返還できる見込み | 4割程度 |
流用されたお金は、職員の賞与や事務所の開設費に使われていました。
本来は、預託金を第三者の共助事務所に管理させる三者契約の仕組みでした。ところが、共助事務所を入れない二者契約が行われ、協会が自分で預託金を動かせる状態になっていました。
内閣府は公益認定を取り消し、事業の譲渡先も確保できず、民事再生を断念して破産に至りました。
この事件があったからこそ、2024年のガイドラインで預託金の分別管理と信託が明記されています。 契約の前に「分別管理していますか」と聞くのは、失礼な質問ではありません。
3つの契約が、それぞれ別の時間帯を担当する

死後事務委任契約だけでは、生きている間の不安は埋まりません。時間帯ごとに、担当する契約が違います。
| 時期 | 使う契約 | 担当すること |
|---|---|---|
| 判断能力があるうち | 財産管理等委任契約 | 通帳の管理、支払いの代行 |
| 判断能力が落ちてから | 任意後見契約 | 財産の管理、施設の契約 |
| 亡くなった後の事務 | 死後事務委任契約 | 葬儀、納骨、解約、行政の届出 |
| 亡くなった後の財産 | 遺言 | 誰に何を渡すか |
死後事務委任契約でお金の行き先は決められません。 財産を誰に渡すかは遺言の役目です。この2つを混同すると、遺言のない財産が法定相続人のところへ行き、頼んだ人の意図と食い違います。
ガイドラインは、判断能力が落ちたときの対応も求めています。事業者と任意後見契約を結んでいるなら速やかに任意後見監督人の選任を請求すること、結んでいないなら補助開始の審判の請求を促すこと。この対応を契約書に書いておくよう求めています。
頼めること、頼めないこと

頼めるのは、次のような事務です。
- 親族や関係者への連絡
- 遺体の引き取りと、葬儀・火葬・納骨
- 病院や施設への未払い分の精算
- 住まいの賃貸借契約の解除と、残置物の処理
- 電気、ガス、水道の解約
- 携帯電話やインターネットの解約
- 年金、健康保険、介護保険の資格喪失の届出
- デジタル契約の解約
頼めないのは、次のものです。
準確定申告などの税務申告 は頼めません。納税義務者は相続人(相続人がいない場合は相続財産法人)であって、受任者ではないためです。ガイドラインにも明記されています。
遺産の分配 も頼めません。遺言の役目です。
医療行為への同意 も、死後事務とは関係なく、誰にもできません。
公共料金と携帯電話の解約には注意が要ります。ガイドラインは、受任者が解約手続きを行えない事業者もあるため、事前に確認しておくことが望ましいとしています。契約の前に、実際に解約できるかを事業者側に確かめてもらってください。
賃貸住まいであれば、国土交通省と法務省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」が参考になります。賃貸借契約の解除と、残置物の処理をあらかじめ委任しておく形です。
何をいくらで頼むかを、書面で受け取る
見積書の内訳と、預託金の管理方法。この2つを書面でもらってから比べてください。見守り、身元保証、財産管理、任意後見、死後事務までを1か所で相談できます。初回相談は無料です。
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契約書に必ず入れる一文
民法653条1号は、委任は委任者の死亡によって終了すると定めています。死後事務委任契約は、この原則の例外を作る契約です。
そこでガイドラインは、次の趣旨を契約に明記することが望ましいとしています。
委任者が死亡した場合においても、本契約は終了せず、相続人は、委任者の本契約上の権利義務を承継する
この一文がないと、相続人から「委任は終了している」と主張されたときに、受任者が動けなくなる可能性があります。
あわせて、相続人との関係に問題がある場合は、受任者が辞任できる旨の規定を入れることも考えられるとされています。相続人の反対で事務の履行が著しく困難になったときの逃げ道です。
相続人には、先に話しておく
受任者は、民法645条により委任事務の経過と結果を報告する義務を負います。委任者が亡くなった後は、委任者の地位を引き継いだ相続人に対して報告することになります。
つまり、頼んだ本人が知られたくないと思っていても、死後には相続人と接点が生まれます。
ガイドラインは3つのことを求めています。
- 委任事務の範囲を決めるとき、できる限り推定相続人に事前に説明する
- 推定相続人が複数なら、特定の人に報告すれば足りる旨を契約で定めることも考えられる
- 事前に知らせないことを希望する場合、事務の執行が困難になる可能性を説明しておく
預託金の返還をめぐって相続人ともめる例が多いため、事業者には死後事務の内容に照らして的確な預託金額を算定し、推定相続人にも丁寧に説明することが望ましいとされています。
ガイドラインが求める5つ

2024年6月のガイドラインは、内閣官房、内閣府、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の連名で出されました。事業者に求めているのは、おおむね次の5つです。
- 重要事項説明書を使って、契約内容を丁寧に説明する
- 預託金を運転資金と区分し、管理状況を定期的に報告する
- 解除の方法・解約事由・返金の扱いを説明し、契約書に明記する
- 判断能力が低下したときの対応を、契約書に書いておく
- 推定相続人への説明と、報告先の定めを置く
3については、消費者契約法3条1項4号により、事業者は解除に必要な情報を提供する努力義務を負うとされています。違約金を定める場合も、適切な額でなければなりません(同法9条1項)。
契約前に確認する10項目

- 見積書の内訳 — 作成費用、報酬、預託金が分かれているか
- 預託金の管理方法 — 信託か、別法人への委託か、分別預金か
- 管理状況の報告 — 頻度と方法が契約書にあるか
- 預託金の残金 — 余ったら誰に返すか
- 不足したとき — 追加で誰が払うか
- 委任事務の範囲 — 何を頼み、何を頼まないか一覧になっているか
- 契約終了の定め — 死亡で終了しない旨の条項があるか
- 解約と返金 — 途中でやめたときいくら戻るか
- 判断能力が落ちたときの対応 — 任意後見への移行が書かれているか
- 事業者の体制 — 何年営業しているか、担当者が辞めたらどうなるか
10番目は見落とされがちです。契約してから実行までに20年空くことも珍しくありません。自分より先に事業者がなくなる可能性を、前提に入れてください。
実家がある場合に、追加で決めること
持ち家がある場合、死後事務委任契約でできることは限られます。不動産の処分は財産の分配にあたるため、遺言の役目になるからです。
死後事務委任契約で頼めるのは、次の範囲です。
- 家財道具の搬出と処分
- 電気、ガス、水道の解約
- 火災保険の解約手続き
- 空き家になった後の一時的な管理
これらの費用を預託金に含めるかどうかを、先に決めます。家財の処分費用は、間取りと物量で数十万円動きます。見積もりを取っておくと、預託金の額を決めやすくなります。
家財の処分費用を、預託金に入れる前に
間取りと物量で、遺品整理の費用は数十万円変わります。 先に相場を出しておくと、預ける金額を決められます。見積もりは無料で、複数社を比べられます。
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よくある質問
Q. 家族がいても契約できますか
できます。子が遠方にいる、高齢のきょうだいしかいないという場合にも使われます。ただし、推定相続人には事前に説明しておくほうが、後の手続きが進みます。
Q. 誰に頼めますか
行政書士、司法書士、弁護士などの専門家のほか、民間の終身サポート事業者、NPO法人があります。友人や知人に頼むこともできますが、実行するのは自分が高齢になった後なので、年齢の近い人に頼むのは避けます。
Q. 預託金は必ず必要ですか
必須ではありません。相続財産から払う形にすることもできます。ただし、口座が凍結されると相続人の協力が要るため、葬儀費用だけでも預けておくほうが動きやすくなります。
Q. 預託金が余ったらどうなりますか
契約の定めによります。相続人に返す、寄付する、事業者が受け取るなど、書き方はさまざまです。ガイドラインは残金の扱いを契約書に明記するよう求めています。
Q. 途中で解約できますか
できます。返金の条件は契約書によります。解約の手順と返金額の計算方法を、契約前に書面で確認してください。
Q. 遺言だけでは足りませんか
足りません。遺言は財産を誰に渡すかを決めるもので、葬儀や解約の手続きを実行する人は指定できません。遺言執行者は財産に関する事務が中心です。
Q. 任意後見契約とどちらを先に結びますか
同時に結ぶのが一般的です。任意後見は生前、死後事務は死後を担当するため、片方だけでは空白が生まれます。
Q. 費用を抑える方法はありますか
頼む範囲を絞ることです。葬儀と納骨だけに限る、家財の処分は含めないといった形で、事務の数を減らせば報酬も預託金も下がります。
Q. 契約したことを、誰に伝えておけばいいですか
かかりつけ医、施設、民生委員、親しい友人など、亡くなったことを最初に知る立場の人に伝えます。受任者の連絡先を書いたカードを財布に入れておく方法もあります。
Q. 実家の売却も頼めますか
死後の売却は頼めません。財産の処分にあたるため、遺言で決めます。生前の売却であれば、財産管理等委任契約や任意後見の範囲で対応できます。
まとめ
- 費用は契約書の作成費用・受任者の報酬・預託金の3つ。総額50万〜200万円が目安
- 見積書が一式になっている場合は、内訳を書面で出してもらう
- 公正証書にすると、権限の説明がしやすく、意思能力も争われにくい
- 預託金は事業者の運転資金と区分し、信託銀行・信託会社との信託契約で保全するのが望ましい
- 分別預金や別法人への委託では、倒産隔離が効かない可能性がある
- 2016年、約1,600人・約9億円の預託金のうち2億7,412万円が流用され、戻る見込みは4割程度だった
- 「委任者が死亡しても契約は終了しない」旨を契約書に明記する(民法653条1号の例外)
- 受任者は死後、相続人に報告する義務を負う(民法645条)
- 準確定申告と遺産の分配は、死後事務委任契約では頼めない
- 公共料金と携帯電話の解約は、受任者では受け付けない事業者がある
- 判断能力が落ちたときの対応を、契約書に書いておく
死後事務委任契約で見るのは、金額ではありません。預託金がどこに置かれるか。この1点を書面で確かめてから、契約してください。
この記事について
執筆:葉山 湊(はやま みなと)
自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。税理士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。制度や統計については、必ず一次情報(厚生労働省・e-Gov法令検索・調査の発表元)にあたって記事に反映しています。
本記事の主な出典は次のとおりです。
・預託金の管理、契約書に明記する事項、相続人への報告:内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)
・公証人の手数料:日本公証人連合会「任意後見契約公正証書を作成する費用」、同「手数料」
・預託金が流用された事例:日本経済新聞「預託金流用の公益財団法人、破産手続きに移行」、消費者委員会「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての調査報告」(平成29年1月)
・委任の終了と報告義務:e-Gov法令検索「民法」第645条・第653条
・残置物の処理:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
費用の目安は事業者によって幅があります。本記事の内容は2026年9月23日時点の公表情報にもとづきます。実際の契約条件は、重要事項説明書と契約書をご確認ください。

