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親が死んだらやること順番|直後〜3年の手続きを期限つきで時系列に整理

親が亡くなった後の手続き書類 死後の手続き
本記事にはプロモーションが含まれます。

親が亡くなった直後は、悲しむ時間もないまま手続きに追われます。しかも期限を過ぎると取り返しがつかないものが混ざっているのが厄介なところです。

たとえば相続放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税の申告は10か月。過ぎてしまえば、借金を背負ったり、加算税を払ったり、数百万円の特例を失ったりします。

この記事では、やることを時系列に並べ、それぞれの期限と「過ぎるとどうなるか」をセットで整理しました。上から順にこなしていけば、抜けは防げます。

みどりみどり
父が亡くなって、何から手をつけていいのか分からなくて…。
たくみ先生たくみ先生
全部を一度にやる必要はありません。期限の近いものから順に片付けていけば大丈夫です。順番に見ていきましょう。

実家の仏壇と位牌
  1. まず全体像|期限つきでやることを並べる
  2. 死亡当日〜翌日にやること
    1. 死亡診断書を受け取る
    2. 葬儀社を決める
    3. 遺体を搬送・安置する
  3. 葬儀の流れと費用の目安
    1. 一般的な流れ
    2. 形式と費用の目安
    3. 見積書で確認する3点
  4. 相続税がかかるか、5分で判定する
  5. 7日以内にやること|死亡届と火葬許可
  6. 14日以内にやること|役所での手続き
    1. 年金の停止
    2. 健康保険・介護保険
    3. 世帯主変更届
    4. 一度に済ませるコツ
  7. 早めに止めたい契約
  8. 3か月以内|相続するかどうかを決める
    1. 3つの選択肢
    2. まず財産と借金を調べる
    3. 3か月で間に合わないとき
  9. やってはいけない5つのこと
  10. 相続人を確定させる|戸籍集めが最初の関門
    1. 必要な戸籍
    2. 郵送請求のコツ
    3. 広域交付という近道
    4. 法定相続情報一覧図を作る
  11. 銀行口座と証券口座の手続き
    1. 口座はいつ凍結されるか
    2. 手続きの流れ
    3. 見つからない口座を探す
  12. 4か月以内|準確定申告
  13. 10か月以内|相続税の申告
  14. 遺産分割協議でもめないために
    1. 全員の合意が要る
    2. 実家があるともめやすい
    3. 話がまとまらないとき
  15. もらえるお金を取り逃さない
  16. 3年以内|相続登記は義務
  17. 実家をどうするか
  18. デジタル遺品をどうするか
    1. まず確認するもの
    2. 順番を間違えない
    3. ロックが解除できないとき
  19. 実家が空き家になったら、当面やること
    1. 月1回はやりたいこと
    2. 火災保険を切らさない
    3. 固定資産税は誰が払うか
  20. 親が元気なうちにできること
  21. 誰に相談すればいいか
  22. よくある質問
  23. まとめ

まず全体像|期限つきでやることを並べる

親が亡くなった後にやることの期限一覧

最初に地図を持っておくと迷いません。

期限 やること 過ぎるとどうなるか
当日〜翌日 死亡診断書の受け取り、葬儀社の手配 搬送・安置が進まない
7日以内 死亡届の提出、火葬許可証の受け取り 火葬ができない
10日/14日以内 年金受給の停止 受け取りすぎた年金の返還が発生
14日以内 健康保険・介護保険の資格喪失、世帯主変更 保険料の精算が遅れる
随時 公共料金・携帯・サブスクの停止 引き落としが続く
3か月以内 相続放棄・限定承認の判断 借金を引き継ぐことが確定
4か月以内 準確定申告 加算税・延滞税
10か月以内 相続税の申告・納付 小規模宅地等の特例などが使えない
1年以内 遺留分侵害額請求 請求権が消滅する
2年以内 葬祭費・埋葬料、高額療養費の請求 もらえるお金を取り逃す
3年以内 相続登記、生命保険金の請求 過料10万円以下/請求権の時効
5年以内 遺族年金の請求 請求権の時効

太字の6つが、過ぎると金銭的な損失に直結するものです。ここだけは押さえてください。


死亡当日〜翌日にやること

死亡当日から翌日にやること

死亡診断書を受け取る

病院で亡くなった場合は医師が発行します。自宅で亡くなった場合は、かかりつけ医に連絡してください。かかりつけ医がいない、または死因がはっきりしない場合は警察に連絡し、検案(死体検案書の作成)になります。

死亡診断書は、このあとのほぼすべての手続きで使います。役所に提出すると原本は戻ってきません。5〜10枚コピーを取っておいてください。

  • 生命保険の請求
  • 銀行口座の解約
  • 年金の手続き
  • 携帯電話の解約

これらでコピーの提出を求められます。あとから取り直すと1通5,000円前後かかります。

葬儀社を決める

病院からは提携の葬儀社を紹介されますが、その場で決める義務はありません。搬送だけ依頼して、葬儀は別の会社に頼むこともできます。

とはいえ、病院の霊安室に置ける時間は数時間程度です。事前に決めていない場合は、次の順で判断してください。

  1. 親が生前に葬儀社を決めていなかったか(エンディングノート、契約書)
  2. 菩提寺があるか(宗派によって依頼先が変わる)
  3. 互助会に加入していないか(積立金が使える)

遺体を搬送・安置する

自宅に安置するか、葬儀社の安置施設を使うかを決めます。集合住宅で搬入が難しい場合は施設になります。安置費用は1日1万〜2万円程度です。

みどりみどり
バタバタしていて、葬儀社は言われるままに決めてしまいました…。
たくみ先生たくみ先生
よくあることです。ただし見積書は必ず書面でもらってください。「一式」でまとめられた見積もりは、あとから追加が乗りやすい点は解体工事と同じです。

葬儀の流れと費用の目安

葬儀は、亡くなってから数日のうちに、まとまった金額を決めなければならない数少ない場面です。

一般的な流れ

日程 内容
当日 搬送・安置、葬儀社との打ち合わせ、菩提寺への連絡
翌日 納棺、通夜
翌々日 告別式、火葬、(初七日法要を繰り上げることが多い)

形式と費用の目安

形式 内容 費用の目安
直葬・火葬式 通夜・告別式をせず火葬のみ 20万〜40万円
一日葬 通夜を省き、告別式と火葬 40万〜70万円
家族葬 近親者のみで通夜・告別式 60万〜120万円
一般葬 会社関係や近隣も招く 120万〜200万円

これにお布施(30万〜50万円が目安。宗派・地域差が大きい)と飲食・返礼品が加わります。

見積書で確認する3点

1. 「一式」でまとめられていないか

祭壇・棺・ドライアイス・搬送・式場使用料・火葬料が分かれているかを見ます。「一式」は、あとから追加が乗る余地を残します

2. 参列者の人数で変わる費用が分けられているか

飲食と返礼品は人数で変動します。固定費と変動費が分かれていない見積もりは比較できません。

3. 式場使用料と火葬料が含まれているか

公営斎場と民営では料金が大きく違います。市民料金が使えるかも確認してください。

たくみ先生たくみ先生
葬儀社を1社に絞る前に、電話で2社に概算を聞くだけでも違います。時間がないのは事実ですが、「時間がないから言い値」になりやすい場面でもあります。

なお、香典を受け取った場合は相続財産にはなりませんが、葬儀費用は相続税の債務控除の対象になります。領収書は必ず保管してください。


相続税がかかるか、5分で判定する

10か月の期限が効いてくるかどうかは、早めに知っておきたいところです。ざっくりですが、次の手順で見当がつきます。

手順1|法定相続人の数を数える

配偶者は常に相続人。子がいれば子、いなければ親、親もいなければ兄弟姉妹です。

手順2|基礎控除額を計算する

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

手順3|遺産をざっくり足す

財産 見方
土地 固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 0.8 で路線価ベースの概算
建物 固定資産税評価額がそのまま相続税評価額
預貯金 死亡日の残高
生命保険 受取額 −(500万円 × 法定相続人の数)
有価証券 死亡日の時価

手順4|比べる

遺産の合計が基礎控除以下なら、申告も納税も不要です。超えていれば申告が必要になります。

ただし、境界線に近い場合は自己判断しないでください。土地の評価は減額要素が多く、専門家が計算すると大きく下がることがあります。逆に、名義預金(子や孫の名義だが実質は親のお金)が加算されて増えることもあります。

「かかるかもしれない」段階で税理士に相談すれば、簡易判定だけなら無料で対応してくれる事務所も少なくありません。


7日以内にやること|死亡届と火葬許可

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった場合は3か月以内)に提出します。

項目 内容
提出先 死亡地・本籍地・届出人の住所地のいずれかの市区町村
提出できる人 親族、同居者、家主、後見人など
必要なもの 死亡届(死亡診断書と一体の用紙)、届出人の印鑑
手数料 無料

実務上は、葬儀社が代行してくれることがほとんどです。死亡診断書を渡せば提出まで行ってくれます。

死亡届を出すと火葬許可証が交付されます。これがないと火葬ができません。火葬後は火葬場で「火葬済」の証印が押され、埋葬許可証として納骨に使います。納骨まで必ず保管してください。


14日以内にやること|役所での手続き

14日以内に役所でやる手続き

ここがいちばん抜けやすいところです。役所は「教えてくれない」と思って臨んでください。

年金の停止

加入区分 期限
厚生年金 10日以内
国民年金 14日以内

亡くなった月の分まで受け取る権利がありますが、それ以降に振り込まれた分は返還が必要です。停止が遅れると、あとで返還請求が来ます。

ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は死亡届の提出を省略できます。省略できるかは年金事務所で確認してください。なお、未支給年金(亡くなった月までの受け取っていない年金)の請求は別途必要です。これは請求しないともらえません。

健康保険・介護保険

  • 国民健康保険……資格喪失届を14日以内に提出、保険証を返却
  • 後期高齢者医療……同上
  • 介護保険……資格喪失届を14日以内、介護保険被保険者証を返却
  • 会社の健康保険……勤務先を通じて手続き(5日以内が目安)

世帯主変更届

亡くなった方が世帯主で、残る世帯員が2人以上いる場合に必要です。14日以内。

残るのが1人だけなら自動的にその人が世帯主になるため、届出は不要です。

一度に済ませるコツ

役所に行く前に、次をまとめて持っていくと二度手間になりません。

  • 死亡診断書のコピー
  • 亡くなった方の保険証・介護保険証・年金手帳
  • 届出人の本人確認書類と印鑑
  • 亡くなった方のマイナンバーがわかるもの

多くの自治体に「おくやみ窓口」があり、必要な手続きをまとめて案内してくれます。予約制のところが多いので、電話で確認してから行ってください。


早めに止めたい契約

停止・解約のチェックリスト

放っておくと引き落としが続きます。実家が空き家になる場合はとくに重要です。

契約 注意点
電気・ガス 実家を解体するなら着工前に停止
水道 解体工事で散水に使うため、直前まで残す
固定電話・インターネット 違約金の有無を確認
携帯電話 死亡診断書のコピーが必要なことが多い
NHK受信料 世帯が消滅する場合は解約
新聞・定期購読 自動更新に注意
サブスク(動画・音楽・通販) クレカ明細から洗い出す
クレジットカード 未払い分は相続債務になる
各種会員サービス ジム、カルチャー教室など

洗い出しのコツは、通帳とクレジットカードの明細を12か月分さかのぼることです。年払いのサービスは月次の明細だけ見ても出てきません。

たくみ先生たくみ先生
実家を空き家にする場合、火災保険だけは切らさないでください。建物が残っている限りリスクは続きます。空き家は補償が制限されることがあるので、契約内容の確認も必要です。

3か月以内|相続するかどうかを決める

相続の3つの選択肢

ここが最初の大きな分岐点です。自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に判断します。

3つの選択肢

選択肢 内容 手続き
単純承認 プラスもマイナスも全部引き継ぐ 手続き不要(何もしなければこれ)
限定承認 プラスの財産の範囲でのみ債務を引き継ぐ 相続人全員で家庭裁判所へ申述
相続放棄 一切引き継がない 各自が家庭裁判所へ申述

何もしないと自動的に単純承認になります。ここが怖いところです。

まず財産と借金を調べる

3か月で判断するには、その前に調査が要ります。

  • プラスの財産……不動産(固定資産税の納税通知書)、預貯金(通帳、キャッシュカード)、有価証券、生命保険
  • マイナスの財産……借入金、ローン、未払いの医療費・税金、連帯保証

借金の有無は、信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)に開示請求すれば分かります。相続人からの請求が可能で、1,000円前後・2週間程度で結果が出ます。

3か月で間に合わないとき

財産調査が終わらない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てられます。3か月の期限内に申し立てる必要があります。

みどりみどり
父に借金があったかどうか、まだ分からなくて…。
たくみ先生たくみ先生
その場合こそ期間伸長を使ってください。「分からないまま3か月が過ぎた」がいちばん危険です。放置すると単純承認とみなされます。

家庭裁判所へ提出する相続放棄の申述書

やってはいけない5つのこと

相続で単純承認とみなされる行為

相続放棄を考えている段階でこれをやると、単純承認したものとみなされ、放棄できなくなります

1. 亡くなった方の預貯金を引き出して使う

葬儀費用に充てる程度なら認められる余地はありますが、生活費に使えば単純承認と判断されるおそれがあります。

2. 遺品を処分・形見分けする

経済的価値のあるものを処分すると、相続財産の処分にあたります。家財の片付けは、放棄するかどうかを決めてからにしてください。

3. 不動産の名義を変える

相続登記をした時点で、相続を承認したことになります。

4. 借金を返済する

「少しだけ返しておこう」が命取りになることがあります。

5. 賃貸物件を解約して敷金を受け取る

敷金の返還を受けるのも財産の受領にあたります。

たくみ先生たくみ先生
借金がありそうなら、遺品には手をつけない。これが鉄則です。片付けたい気持ちは分かりますが、3か月の判断が終わるまで待ってください。

相続人を確定させる|戸籍集めが最初の関門

相続放棄の判断と並行して進めるのが、誰が相続人なのかの確定です。これがないと遺産分割も相続登記もできません。

必要な戸籍

  • 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票(または戸籍の附票)

厄介なのが1つ目です。人は結婚、転籍、法改正などで何度も戸籍を作り替えています。昭和・平成の改製をまたぐと、5〜10通になることも珍しくありません。

本籍地の市区町村で「相続に使うので、出生から死亡までの戸籍をすべてください」と伝えると、その役所にある分は出してくれます。前の本籍地が別の市区町村なら、そこにも請求します。これを出生までさかのぼって繰り返します。

郵送請求のコツ

遠方の役所には郵送請求ができます。必要なのは次の4点です。

  1. 申請書(各役所のサイトからダウンロード)
  2. 本人確認書類のコピー
  3. 定額小為替(郵便局で購入。1通450円が目安)
  4. 返信用封筒(切手を貼る)

定額小為替は多めに入れ、「不足があれば連絡ください」「余りは小為替で返却してください」と申請書に書いておくと往復が減ります。

広域交付という近道

2024年3月から、本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本を請求できるようになりました(戸籍の広域交付)。最寄りの役所の窓口で、亡くなった方の出生からの戸籍をまとめて取得できる場合があります。

ただし制限があります。

  • 窓口に来られるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属のみ(兄弟姉妹は不可)
  • 郵送や代理人による請求は不可
  • コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外

きょうだいが亡くなった場合や、代理人に頼む場合は従来どおりの請求になります。

法定相続情報一覧図を作る

戸籍が揃ったら、法務局で法定相続情報一覧図を作ってもらいましょう。無料で、何通でも交付を受けられます。

これがあると、銀行・証券会社・年金事務所での手続きで、分厚い戸籍の束を持ち歩かなくて済みます。金融機関ごとに戸籍を提出して返却を待つ、という往復がなくなるので、口座が複数あるほど効果があります。

みどりみどり
戸籍を集めるだけで、そんなに大変なんですね…。
たくみ先生たくみ先生
ここでつまずいて止まる方がいちばん多いです。自分で集めるのが厳しければ、司法書士に頼めば3万〜5万円程度で代行してくれます。10か月の期限を考えると、外注する価値は十分あります。

銀行口座と証券口座の手続き

金融機関の相続手続きの流れ

口座はいつ凍結されるか

「死亡届を出すと凍結される」と思われがちですが、役所と金融機関はつながっていません。実際に凍結されるのは、金融機関が death を知ったときです。

  • 相続人が届け出た
  • 新聞のお悔やみ欄や葬儀の案内で知った
  • 支店の担当者が把握していた

凍結されると、入金も出金も止まります。公共料金の引き落としも止まるので、実家の電気・水道が止まってしまうことがあります。名義変更や口座振替の変更を先に済ませておくと慌てずに済みます。

手続きの流れ

  1. 金融機関に death を連絡し、必要書類の案内を受ける
  2. 残高証明書を請求する(相続税の申告に必要。1通800円前後)
  3. 戸籍一式または法定相続情報一覧図、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書を提出
  4. 払い戻しまたは名義変更(2週間〜1か月かかる)

残高証明書は「死亡日時点」で発行してもらってください。相続税の申告では死亡日の残高を使います。

見つからない口座を探す

通帳もカードも見つからない口座は、次の方法で探せます。

  • キャッシュカードや通帳のない金融機関からの郵便物を探す
  • 大手銀行の全店照会(1つの支店で申し込むと全支店の口座を調べてくれる)
  • ゆうちょ銀行の貯金等照会
  • 証券会社は証券保管振替機構(ほふり)の登録済加入者情報の開示請求

最後のものはあまり知られていませんが、亡くなった方がどの証券会社に口座を持っていたかを一括で調べられます。手数料は6,050円程度です。


4か月以内|準確定申告

亡くなった方に確定申告が必要な所得があった場合、相続人が代わりに申告します。

  • 期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
  • 提出先は亡くなった方の納税地の税務署
  • 相続人が複数なら、連署で1通提出するか、各自が提出して他の相続人に内容を通知する

必要になる主なケース

  • 事業所得や不動産所得があった
  • 給与が2,000万円を超えていた
  • 公的年金等の収入が400万円を超えていた
  • 医療費控除で還付を受けられる

最後の1つは見落とされがちです。入院や介護で医療費がかさんでいた場合、申告すれば還付を受けられることがあります。義務ではありませんが、やる価値があります。


10か月以内|相続税の申告

遺産の総額が基礎控除額を超える場合に必要です。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円

これ以下なら申告も納税も不要です。ただし小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額をゼロにする場合は、申告が必要です。「使えば非課税だから申告不要」は誤りで、この勘違いは非常に多く見られます。

10か月というのは、遺産分割の話し合いまで含めると余裕がありません。遺産分割がまとまらないまま期限を迎えると、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減が使えません。いったん法定相続分で申告・納税し、後日更正の請求をする形になり、手間も費用も増えます。

税理士に依頼する場合の費用相場は、相続税の税理士費用相場にまとめています。


遺産分割協議でもめないために

相続人が確定し、財産の全体像が見えたら、誰が何を取るかを話し合います。これが遺産分割協議です。

全員の合意が要る

多数決ではありません。相続人全員が合意しないと成立しません。一人でも反対すれば前に進みません。

合意した内容は遺産分割協議書にまとめ、全員が署名して実印を押し、印鑑証明書を添付します。これが相続登記や口座の解約で必要になります。

実家があるともめやすい

現金なら等分できますが、実家は割れません。ここが対立の起点になります。

分け方 内容 注意点
現物分割 不動産はA、預貯金はBと分ける 金額の差が出やすい
代償分割 Aが実家を取り、Bに現金を渡す Aに支払う現金が必要
換価分割 売却して代金を分ける 全員が納得しやすい
共有 持分を分けて共有する 将来の売却で全員の同意が要る

実家じまいの文脈でおすすめしにくいのが共有です。その場は平等に見えますが、売るときに全員の同意が必要になり、相続人の誰かが亡くなればさらに人数が増えます。「とりあえず共有」は問題の先送りです。

話がまとまらないとき

家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てます。調停委員が間に入って話し合う手続きで、費用は数千円から始められます。ただし解決までに半年から1年以上かかることが多く、その間に相続税の10か月が過ぎます

期限が迫っているなら、いったん法定相続分で申告・納税し、分割がまとまってから更正の請求をするという進め方になります。その際は「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付してください。これを忘れると、あとから小規模宅地等の特例が使えなくなります。

みどりみどり
兄と意見が合わなくて…。感情の問題もあって。
たくみ先生たくみ先生
「3年で3,000万円の控除が消える」「10か月で特例が使えなくなる」という数字を先に共有してください。感情論より、失うものの金額のほうが話をまとめてくれることが多いです。

もらえるお金を取り逃さない

申請しないともらえないお金

どれも「申請しないともらえない」お金です。役所から案内は来ません。

制度 金額の目安 期限 窓口
葬祭費(国保・後期高齢者) 3万〜7万円(自治体による) 2年 市区町村
埋葬料(健康保険) 5万円 2年 協会けんぽ・健保組合
高額療養費 自己負担限度額を超えた分 2年 保険者
未支給年金 亡くなった月までの年金 5年 年金事務所
遺族年金 要件により異なる 5年 年金事務所
生命保険金 契約による 3年 保険会社

生命保険は保険証券が見つからないと請求できないと思われがちですが、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を使えば、契約の有無を一括で確認できます(利用料3,000円程度)。心当たりがあるのに証券が見つからないときの最後の手段です。


3年以内|相続登記は義務

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

  • 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
  • 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料
  • 2024年3月以前に発生した相続にもさかのぼって適用され、その場合の期限は2027年3月31日

長年名義を放置している実家がある方は、残り時間がわずかです。

遺産分割がまとまらず3年以内に登記できない場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで義務を果たせます。ただしこれは「相続人であることを申し出る」だけの制度なので、不動産を売却するには結局きちんとした相続登記が必要です。


実家をどうするか

誰も住まなくなった実家の玄関

親の家が残る場合、これがいちばん重い判断になります。選択肢は4つです。

選択肢 向いているケース
古家付きで売る 立地が良く、買主が建て替え前提で買える
解体して更地で売る 更地にすると解体費以上に高く売れる場合
貸す・活用する 賃貸需要があり、改修費を回収できる
相続土地国庫帰属制度で手放す 売れない・貸せない・引き取り手もいない

判断の材料になるのは査定額だけです。「古い家だから壊さないと売れない」という思い込みで解体すると、解体費が丸ごと損になることがあります。

現況(古家付き)と更地の両方の査定を取ってから決めてください。進め方の全体像は実家じまいの進め方に、査定の取り方は相続した実家におすすめの不動産一括査定サービス比較にまとめています。


デジタル遺品をどうするか

通帳のない口座、紙の届かない契約。近年いちばん見落とされるのがここです。

まず確認するもの

対象 探し方
ネット銀行・ネット証券 メールの受信箱、スマホのアプリ、クレカ明細
サブスク(動画・音楽・クラウド) クレカ・口座の引き落とし履歴
暗号資産 取引所からのメール、専用アプリ
SNS・写真クラウド 追悼アカウント化または削除の申請
携帯電話 解約すると二段階認証が使えなくなる点に注意

順番を間違えない

携帯電話の解約は最後にしてください。ネット銀行や証券口座のログインには、多くの場合SMSによる二段階認証が使われます。先に携帯を解約すると、口座にたどり着けなくなります。

順番としては、①スマホとPCの中身を確認 → ②各サービスの相続手続き → ③携帯電話の解約、です。

ロックが解除できないとき

スマホのパスコードが分からない場合、メーカーや通信会社は原則として解除に応じません。データ復旧の専門業者に依頼する方法はありますが、費用は5万〜30万円程度かかり、成功する保証もありません

現実的な代替手段は、引き落とし履歴からの逆引きです。通帳とクレジットカードの明細を1年分さかのぼれば、契約中のサービスはほぼ洗い出せます。

たくみ先生たくみ先生
親御さんが元気なうちにできる対策として、「どこに何があるか」のリストだけ作ってもらうのが最も効果的です。パスワードまでは書かなくて構いません。サービス名と会社名だけで、残された側の負担は大きく変わります。

実家が空き家になったら、当面やること

売るか貸すかを決めるまでには時間がかかります。その間、建物は放っておくと傷みます

月1回はやりたいこと

項目 理由
窓を開けて換気する 湿気がこもるとカビと木部の腐食が進む
水を流す(トイレ・台所・風呂) 排水トラップが乾くと下水の臭気と虫が上がってくる
郵便物を回収する ポストが溢れると「留守」が一目で分かり、防犯上のリスク
庭の草木を確認する 越境すると近隣トラブルになる
外観の写真を撮る 劣化の記録になり、売却時の資料にもなる

遠方で通えない場合は、空き家管理サービスが月5,000〜10,000円程度であります。自治体のシルバー人材センターが安価に対応してくれることもあります。

火災保険を切らさない

いちばん見落とされるのがこれです。名義人が亡くなっても契約は続きますが、保険会社への名義変更をしないと、いざというときに保険金の請求で手間取ります

さらに、空き家になると住宅物件から一般物件の扱いに変わり、保険料が上がる、または補償が制限されることがあります。契約内容を保険会社に確認してください。

固定資産税は誰が払うか

1月1日時点の所有者に課税されます。名義が亡くなった方のままでも納税通知書は届き、相続人が納税義務を負います。代表者を決めて支払い、遺産分割のときに精算するのが実務的です。

放置して特定空家に指定されると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍になります。リスクの詳細は実家を空き家のまま放置する5大リスクにまとめています。


親が元気なうちにできること

この記事を「まだ親が元気だが備えておきたい」という理由で読んでいる方へ。やっておくと相続後の負担が桁違いに変わるものを挙げます。

1. 実家の権利証と購入時の契約書の場所を確認する

購入時の売買契約書は、売却時の税金計算で使います。契約書がないと取得費が「売値の5%」で計算され、数百万円の差になります。詳しくは相続した実家の売却にかかる税金で解説しています。

2. 金融機関と保険の一覧を作ってもらう

口座、証券、保険、借入。どこに何があるかが分かるだけで、相続人の負担は激減します。残高までは書かなくて構いません。

3. 遺言書を書いてもらう

とくに、相続人が複数いて実家が主な財産という場合は効果が大きいです。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば、手数料3,900円で預けられ、検認も不要になります。

4. 実家の相場を知っておく

いくらで売れるのかが分からないと、相続後の判断ができません。査定は無料で、売る予定がなくても取れます

5. 家族で一度話しておく

いちばん難しく、いちばん効果があります。「縁起でもない」と避けられがちですが、親が元気なうちに方向性が決まっていれば、きょうだいで争う理由の大半は消えます

みどりみどり
親が元気なうちに、そんな話できるかしら…。
たくみ先生たくみ先生
「相続の話」ではなく「実家をどうしたい?」から入ると、切り出しやすいですよ。親御さん自身も気にしていることが多いんです。

誰に相談すればいいか

専門家の使い分け

「相続はまず弁護士」と思われがちですが、もめていないなら弁護士は要りません

専門家 頼むこと 費用の目安
司法書士 相続登記、相続人調査 登記1件5万〜15万円
税理士 相続税の申告、譲渡所得の申告 遺産総額の0.5〜1.0%
弁護士 相続人どうしで争いがある場合 着手金20万円〜
行政書士 遺産分割協議書の作成、口座解約の代行 5万〜20万円
不動産会社 実家の査定・売却 仲介手数料(成功報酬)

多くの家庭では、司法書士+(必要なら)税理士で足ります。

相談の順番は、①相続放棄するかどうか → ②相続税がかかるかどうか → ③実家をどうするかです。①が終わらないうちに②③を進めても、やり直しになります。


よくある質問

Q. 何から手をつければいいか分かりません。

まず7日以内の死亡届(葬儀社が代行することが多い)、次に14日以内の役所手続きを「おくやみ窓口」でまとめて。この2つが終われば、あとは3か月の相続放棄の判断まで少し時間ができます。

Q. 亡くなった親の口座が凍結されました。葬儀費用が払えません。

預貯金の仮払い制度が使えます。金融機関ごとに「口座残高 × 1/3 × 法定相続分」(1金融機関150万円が上限)まで、遺産分割前でも引き出せます。ただし引き出した分は相続財産の一部を受け取ったことになるため、相続放棄を検討中なら慎重に判断してください。

Q. 兄弟と連絡が取れません。

遺産分割には相続人全員の同意が必要です。所在が分からない場合は、戸籍の附票で住所を調べます。それでも見つからないときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。

Q. 遺言書が見つかりました。開けていいですか?

自筆証書遺言は、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所での検認が必要です(法務局の保管制度を使っていた場合は検認不要)。公正証書遺言も検認は不要です。開封してしまっても遺言が無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料の対象になります。

Q. 香典は相続財産になりますか?

なりません。香典は喪主に対する贈与と解されるのが一般的です。同様に、受取人が指定された生命保険金も原則として相続財産ではなく、受取人固有の財産です。ただし相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象になります(非課税枠は500万円×法定相続人の数)。

Q. 実家の片付けはいつから始めればいいですか?

相続放棄をしないと決めてからです。四十九日の法要後に始める方が多く、賃貸物件で退去期限がある場合は前倒しになります。費用相場は遺品整理業者の費用相場を参考にしてください。

Q. 親と疎遠でした。借金があるかどうかも分かりません。

まず信用情報機関への開示請求(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)で借入の有無を調べてください。相続人からの請求ができ、費用は1,000円前後です。3か月で判断がつかなければ、家庭裁判所に期間伸長を申し立てます。「関わりたくないから何もしない」がいちばん危険で、放置すると単純承認になります。

Q. 相続放棄をすれば、実家の管理義務もなくなりますか?

2023年4月の民法改正で整理されました。相続放棄した人でも、放棄の時に実際にその不動産を占有していた場合は、次に管理する人に引き渡すまで保存義務を負います。実家に住んでいなかったのであれば、原則として管理義務は生じません。ただし相続人全員が放棄すると、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要が出てくることがあり、予納金として数十万円〜100万円程度かかります。

Q. 葬儀費用は誰が払うのですか?

法律上の決まりはなく、喪主が負担するのが一般的です。相続財産から支出することもでき、その場合は遺産分割で精算します。なお相続税の計算では、通夜・告別式・火葬の費用は債務控除の対象になります(香典返し、初七日以降の法要、墓石の購入は対象外)。

Q. 手続きを全部代行してもらえませんか?

行政書士や司法書士が「相続手続き丸ごと代行」を提供していることがあります。費用は遺産総額の1〜2%程度が目安です。ただし相続放棄の判断や相続税の申告は別の専門家の領域なので、どこまで含まれるかを契約前に確認してください。


まとめ

親が亡くなった後の手続きは膨大ですが、押さえるべき期限は6つです。

  • 7日……死亡届(葬儀社が代行することが多い)
  • 10日/14日……年金の停止。遅れると返還が発生する
  • 3か月……相続放棄の判断。遺品に手をつけると放棄できなくなる
  • 4か月……準確定申告。医療費控除で還付を受けられることも
  • 10か月……相続税の申告。特例で税額ゼロでも申告は必要
  • 3年……相続登記。2024年3月以前の相続は2027年3月31日が期限

そして、葬祭費・高額療養費・未支給年金・生命保険金は「申請しないともらえない」お金です。合わせて数十万円になることもあります。

実家が残る場合は、相続放棄の判断が終わってから査定を取ってください。動き出しが早いほど、選べる選択肢は多くなります。


この記事について

執筆:葉山 湊(はやま みなと)

自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。税理士・司法書士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。制度や手続きについては、必ず一次情報(国税庁・法務省・日本年金機構・各自治体)にあたって記事に反映しています。

本記事の主な出典は次のとおりです。

・相続登記の義務化:法務省「相続登記の申請義務化について」

・年金受給者が亡くなったとき:日本年金機構

・準確定申告:国税庁 No.2022

・相続税の計算:国税庁 No.4152

制度は改正されます。本記事の内容は2026年9月3日時点の公表情報にもとづきます。 実際の判断は、税理士・司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。当サイトは個別の税務相談・法律相談には応じられません。

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