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実家を解体して、更地になった。それで終わりだと思っていませんか。
建物は壊れても、登記簿の上ではまだ建っています。これを消す手続きが建物滅失登記です。
期限は取壊しの日から1か月。怠ると10万円以下の過料の対象になります。 相続登記の義務化で知られるようになった過料と、同じ額です。
そして、ここが見落とされがちなのですが、この登記は自分でできます。土地家屋調査士に頼むと全国平均48,098円ですが、自分で出せば実費だけ、1,000円台で終わります。
この記事では、期限・必要書類・自分で申請する手順を、条文と報酬の実データにもとづいて整理します。
結論|先に3つ

1. 期限は取壊しの日から1か月
不動産登記法57条です。怠ると10万円以下の過料(164条1項)。
2. 登録免許税はかからない
表示に関する登記なので非課税です。自分で出せば実費1,000円台で終わります。
3. 解体業者から3点セットをもらう
建物滅失証明書・代表者事項証明書・印鑑証明書。これを工事完了時にもらい損ねると、後から取るのが面倒になります。
更地にした土地が、いくらになるか
滅失登記が済めば、土地は売れる状態になります。解体費用を回収できるかどうかは金額しだいです。相続した不動産の査定に対応していて、申し込みは無料です。
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建物滅失登記とは何か

不動産の登記は「表示に関する登記」と「権利に関する登記」に分かれます。
建物滅失登記は前者です。その建物がもう存在しないという事実を、登記簿に反映させる手続きです。所有権の移転ではないので、誰かと共同で申請する必要もありません。
条文はこうです。
建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない
解体だけでなく、火災で焼失した場合、災害で流された場合も同じです。
相続登記とは別の手続き
混同されやすいので分けて書きます。
| 相続登記 | 建物滅失登記 | |
|---|---|---|
| 何を登記するか | 所有権の移転 | 建物が存在しないこと |
| 期限 | 3年以内 | 1か月以内 |
| 過料 | 10万円以下 | 10万円以下 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% | 非課税 |
| 専門家 | 司法書士 | 土地家屋調査士 |
期限は滅失登記のほうが36倍短いのに、ほとんど知られていません。
先に、登記簿と実際の建物を突き合わせる

解体の前に、建物の登記事項証明書を取ってください。実家では、登記簿と現地が一致していないことがよくあります。
| ずれ方 | 何が起きるか |
|---|---|
| 増築部分が未登記 | 登記簿の床面積と現況が合わない |
| 物置・車庫が附属建物として登記されている | 申請から漏らすと、そこだけ登記簿に残る |
| 物置が未登記 | 家屋滅失届のほうで処理する |
| すでに壊した建物の登記が残っている | 何十年も前の納屋などが残っていることがある |
古い実家ほど、存在しない建物の登記が残っています。祖父の代に壊した納屋や、建て替え前の母屋です。この機会にまとめて消してしまえば、土地を売るときに止まりません。
登記事項証明書は窓口で600円、オンラインなら490円です。取り方は登記簿謄本の取り方で書いています。
やらないと、4つのことが起きる

1. 10万円以下の過料
不動産登記法164条1項は、57条を含む各条の申請義務者が「正当な理由がないのにその申請を怠ったとき」に過料を科すと定めています。
2. 存在しない建物に固定資産税が課され続けるおそれ
市区町村は登記情報と現況の両方を見ますが、情報が回るまでにずれがあります。実際に、取り壊した建物の税額が翌年も請求される例があります。
3. 土地が売れない
登記簿に建物が残った土地を買う人はいません。決済の前に必ず消すよう求められます。買主が見つかってから慌てても、書類が揃わずに引渡しが遅れます。
4. 同じ場所に新築できない
建築確認の手続きで、登記簿上の既存建物が障害になります。
必要な書類は4つ

| 書類 | どこで手に入るか | 費用 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 法務局のひな形をダウンロード | 無料 |
| 建物滅失証明書(取壊し証明書) | 解体業者が発行 | 無料 |
| 解体業者の代表者事項証明書 | 解体業者が用意 | 無料(業者負担) |
| 解体業者の印鑑証明書 | 解体業者が用意 | 無料(業者負担) |
| 案内図(住宅地図のコピー) | 図書館・インターネット | 数十円 |
| 建物の登記事項証明書 | 法務局(確認用) | 600円 |
解体業者に出してもらう3点セットが要です。 工事の契約時に「滅失登記に使うので、取壊し証明書・代表者事項証明書・印鑑証明書をください」と伝えておいてください。優良な業者なら、言わなくても工事完了時に一式を渡してくれます。
解体業者が個人事業主の場合は、代表者事項証明書の代わりに印鑑証明書と身分証の写しになります。
業者が廃業していたら
証明書が取れない場合は、取壊しを証明する別の資料を添えます。
- 解体工事の請負契約書と領収書
- 工事前後の写真
- 上申書(申請者が事実を述べた書面。実印と印鑑証明書を添える)
法務局によって求められるものが違うので、先に登記手続案内で相談してください。予約制で無料です。
自分で申請する手順

| 手順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 建物の登記事項証明書を取り、家屋番号と所在を確認する | 即日 |
| 2 | 解体業者から3点セットを受け取る | 工事完了時 |
| 3 | 法務局のひな形で申請書を作る | 30分 |
| 4 | 住宅地図をコピーし、現場に印をつける | 10分 |
| 5 | 管轄の法務局に提出する(窓口・郵送・オンライン) | 1日 |
| 6 | 法務局の審査 | 1週間から2週間 |
| 7 | 完了。登記完了証を受け取る | — |
申請先は建物の所在地を管轄する法務局です。土地の所在地ではありません。
申請書に書くのは、所在・家屋番号・種類・構造・床面積・滅失の原因と年月日です。すべて登記事項証明書から転記します。 課税明細書の数字を写すと、床面積が一致せずに補正になります。
郵送なら、封筒の表に「不動産登記申請書在中」と朱書きします。返信用封筒を同封してください。
費用は、頼むかどうかで50倍変わる

日本土地家屋調査士会連合会が3年に一度おこなっているアンケート(2022年度)の全国平均です。
| 登記の種類 | 平均報酬額 | 中央値 |
|---|---|---|
| 建物滅失登記 | 48,098円 | 47,500円 |
| 建物表題登記(木造2階建の居宅) | 85,174円 | 82,500円 |
| 土地地目変更登記 | 46,589円 | 45,000円 |
| 土地合筆登記 | 50,640円 | 50,000円 |
| 土地地積更正登記 | 390,316円 | 372,584円 |
| 土地分筆登記 | 422,909円 | 403,765円 |
いずれも税抜です。滅失登記は標準偏差が11,096円と小さく、事務所によるばらつきも少ない業務です。
一方、自分で出す場合の実費はこうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税 | 0円(非課税) |
| 登記事項証明書 | 600円 |
| 住宅地図のコピー | 数十円 |
| 郵送費(往復) | 1,000円程度 |
| 合計 | 1,700円程度 |
差額は約4万6,000円です。 半日の作業で4万6,000円なら、やってみる価値はあります。
ただし、次のどれかに当てはまるなら、頼んだほうが早いです。
- 解体業者が廃業していて、証明書が取れない
- 相続が絡んでいて、戸籍を集める必要がある
- 附属建物(物置・車庫)が複数あり、内容が登記簿と食い違う
- 平日に法務局へ行けず、郵送でのやり取りに不安がある
相続が絡む場合は3万〜4万円の追加、借地上の建物だと1万〜2万円の追加になることがあります。

解体の前に、建物付きでいくらになるかを確かめる
解体してから「そのまま売れた」と分かるのが、いちばん損な順番です。 解体費用は木造30坪で120万〜180万円かかります。古家付きのまま買い取ってもらえるか、先に確かめてください。
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未登記の建物は「家屋滅失届」

登記されていない建物は、滅失登記ができません。消すべき登記がないからです。
代わりに、市区町村の税務課(資産税課)へ「家屋滅失届」を出します。
| 登記済みの建物 | 未登記の建物 | |
|---|---|---|
| 出す先 | 法務局 | 市区町村の税務課 |
| 手続きの名前 | 建物滅失登記 | 家屋滅失届 |
| 期限 | 1か月以内 | 定めなし(年内が望ましい) |
| 添付 | 取壊し証明書ほか | 取壊し証明書 |
登記済みの建物でも、市区町村に情報が回るまでのタイムラグがあります。滅失登記と家屋滅失届の両方を出しておくのが確実です。 届出書の様式は自治体のホームページからダウンロードできます。
未登記建物の相続そのものについては、未登記の実家を相続したらで扱っています。
名義人が亡くなっているとき
実家の登記名義が父のままで、解体後に滅失登記をする。これがいちばん多い形です。
相続登記を先に済ませる必要はありません。 滅失登記は、相続人の1人から申請できます。添えるのは次の書類です。
- 亡くなった方の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本
- 申請する相続人の戸籍謄本(被相続人との関係が分かるもの)
- 申請人の住民票
戸籍の広域交付を使えば、最寄りの市区町村の窓口でまとめて取れます。ただし兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外なので注意してください。
建物を消すだけなら相続人の1人で足りますが、土地のほうは相続登記が3年以内の義務です。滅失登記と一緒に片付けてしまうのが効率的です。
戸籍集めから名義変更まで、まとめて頼む
滅失登記と土地の相続登記では、集める戸籍が重なります。別々に手配すると二度手間です。戸籍収集から不動産の名義変更まで一括で任せられ、初回相談は無料です。
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固定資産税は、いつ下がるのか
滅失登記をすれば、翌年度から家屋の固定資産税はなくなります。
ただし土地の税額は上がります。住宅が建っていることで適用されていた住宅用地の特例(200㎡まで課税標準が6分の1)が外れるからです。
| 建物あり | 更地 | |
|---|---|---|
| 家屋の固定資産税 | かかる | 0円 |
| 土地の課税標準 | 評価額の6分の1 | 軽減なし |
固定資産税は1月1日時点の状況で決まります。年内に解体すれば翌年度から家屋分は消えますが、同じタイミングで土地分が上がります。
税額の増減は固定資産税評価額の調べ方で試算しています。解体するかどうかの判断は、実家の解体費用とあわせて考えてください。
つまずきやすい8つ

- 解体業者から書類をもらい忘れた — 後から取り直すのが面倒になる
- 解体業者が廃業していた — 上申書と写真で代替する。先に法務局へ相談
- 課税明細書から床面積を転記した — 登記簿と一致せず補正になる
- 土地の管轄法務局に出した — 提出先は建物の所在地の管轄
- 附属建物を申請から漏らした — 物置や車庫も登記簿に載っていることがある
- 未登記建物を法務局に持ち込んだ — 未登記なら市区町村の税務課へ
- 家屋滅失届を出さなかった — 存在しない建物に課税が続くことがある
- 更地にしてから土地の税額に驚いた — 住宅用地の特例が外れる
よくある質問
Q. 解体業者に代行してもらえますか
書類の作成代行は、土地家屋調査士以外はできません。解体業者が「うちでやります」という場合、提携の調査士に回していることがほとんどで、費用も乗ります。
Q. オンライン申請はできますか
できます。法務局の申請用総合ソフトを使います。ただし添付書類は別送になるため、はじめての人には窓口か郵送のほうが確実です。
Q. 期限を過ぎたら受け付けてもらえませんか
受け付けられます。期限を過ぎていても申請できます。ただし「正当な理由がない」と判断されれば過料の対象になり得ます。
Q. 建物の一部だけを壊した場合は
滅失ではなく、建物表題変更登記になります。床面積や構造が変わるためです。平均報酬額は91,082円です。
Q. 家屋番号が分かりません
管轄の法務局で、住所から建物を検索してもらえます。登記簿謄本の取り方で手順を書いています。
Q. 共有名義の建物です
共有者の1人から申請できます。全員の同意は不要です。
Q. 完了までどれくらいかかりますか
書類が揃っていれば、提出から1週間から2週間です。
Q. 法務局で教えてもらえますか
登記手続案内があります。予約制で無料です。申請書の書き方まで見てもらえるので、自分で出すなら必ず使ってください。
まとめ
- 建物滅失登記は、取壊しの日から1か月以内(不動産登記法57条)
- 怠ると10万円以下の過料(164条1項)。相続登記の過料と同額
- 登録免許税は非課税。自分で出せば実費1,700円程度
- 土地家屋調査士に頼むと全国平均48,098円(2022年度・税抜)
- 測量も図面も不要。解体業者の3点セットを添えて法務局に出すだけ
- 必要なのは取壊し証明書・代表者事項証明書・印鑑証明書
- 申請先は建物の所在地の管轄法務局。土地の管轄ではない
- 床面積は登記事項証明書から転記する。課税明細書を写すと補正になる
- 未登記の建物は市区町村の税務課へ「家屋滅失届」
- 名義人が亡くなっていても、相続人の1人から申請できる
- 土地の相続登記は3年以内の義務。戸籍が重なるので一緒に片付ける
- 更地にすると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税は上がる
解体が終わっても、手続きは終わっていません。登記簿の上でその家が消えて、はじめて土地を売れる状態になります。
この記事について
執筆:葉山 湊(はやま みなと)
自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。税理士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。制度や統計については、必ず一次情報(法務省・法務局・e-Gov法令検索・業界団体の公表資料)にあたって記事に反映しています。
本記事の主な出典は次のとおりです。
・滅失登記の条文:e-Gov法令検索「不動産登記法」第57条・第164条
・報酬の実データ:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド」(2022年度アンケート)
・オンライン申請:法務局「建物を取り壊した(建物滅失の登記をオンライン申請したい方)」
・登記手続案内:法務局「登記手続案内について」
個別の事情によって取扱いは変わります。本記事の内容は2026年9月24日時点の公表情報にもとづきます。実際の申請前には、管轄の法務局にご確認ください。

