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実家を売って、引渡しも終わった。半年後、買主から「雨漏りがする」と連絡が来た。
このとき売主はどこまで責任を負うのか。2020年4月の民法改正で「瑕疵担保責任」は契約不適合責任に変わり、買主ができることが増えました。
ただし実家の売却では、売主が個人なので、免責特約を入れられます。 多くの取引で「引渡しから3か月」または「一切免責」にしているのはそのためです。
一方で、免責にしても効かない場面があります。 知っていて黙っていた不具合です。この記事では、責任の範囲と、免責を確実に効かせる方法を条文から整理します。
結論|先に3つ

1. 売主が個人なら、免責特約は有効
宅建業者が売主のときと違い、期間も範囲も契約で自由に決められます。
2. 知りながら告げなかった事実は免責できない
民法572条です。免責特約を入れても、この部分だけは責任が残ります。
3. 「不明」と書くのが正しい
知らないことを「なし」と書くと、後から争いになります。
免責で売りたいなら、買主を選ぶ
個人の買主は免責を嫌がりますが、買取業者は現況有姿・免責での取引を前提にしています。 古家付き、残置物あり、傷みありでも対象です。査定は無料です。
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買主ができることは4つ

引き渡した物が契約の内容に適合しないとき、買主は次を求められます。
| できること | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 追完請求 | 562条1項 | 修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し |
| 代金減額請求 | 563条1項 | 追完の催告をして応じなければ、不適合の程度に応じて減額 |
| 損害賠償請求 | 564条 | 415条による |
| 契約の解除 | 564条 | 541条・542条による |
民法562条1項はこう定めています。
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる
改正前の「瑕疵担保責任」では、買主ができるのは損害賠償と解除だけでした。いまは修補と減額が加わっています。
とくに代金減額請求は、追完が不能なら催告なしで直ちに請求できます(563条2項1号)。建物の傾きのように直せないものは、ここに当たります。
期間は「1年で終わり」ではない

よく誤解される点です。民法566条を読みます。
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない
「1年以内に通知」であって、「1年で権利が消える」ではありません。
| 内容 | |
|---|---|
| 起算点 | 引渡しの日ではなく、買主が不適合を知った時 |
| やること | 1年以内に通知する(請求までは不要) |
| 通知した後 | 消滅時効の範囲(知った時から5年、権利行使できる時から10年)で請求できる |
つまり引渡しの3年後に雨漏りに気づいても、そこから1年以内に通知すれば請求できます。何もしなければ10年間は可能性が残る、というのが法律の建て付けです。
だからこそ、契約で期間を区切ります。
売主が誰かで、決められる範囲が変わる

| 売主が個人(実家の売却) | 売主が宅建業者 | |
|---|---|---|
| 期間の定め | 契約で自由に決められる | 引渡しから2年以上でなければ民法より不利にできない |
| 一切免責 | できる | できない(無効) |
| 根拠 | 民法の任意規定 | 宅地建物取引業法40条 |
宅建業法40条です。
1 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
実家を売るときの売主は個人です。 だから免責特約を入れられます。ここは個人売主の数少ない有利な点です。
実務でよく使われる形は3つです。
- 引渡しから3か月(雨漏り・シロアリ・構造・給排水管の4点に限定することが多い)
- 引渡しから1年
- 一切免責(現況有姿)
古い家ほど免責寄りになります。築40年の実家を無制限の責任つきで売る人はいません。
免責が効かない3つの場合

免責を入れても、次は通りません。
1. 知りながら告げなかった事実(民法572条)
売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない
雨漏りを知っていて黙っていた。過去に修理したことを伝えなかった。この場合、免責特約は無意味になります。
2. 契約書に「ない」と書いたとき
免責特約より、契約の内容そのものが優先されます。「雨漏りなし」と書けば、それが契約の内容です。適合しなければ不適合になります。
3. 告知書にうそを書いたとき
契約不適合責任を免れても、不法行為(民法709条)で争われる余地が残ります。
物件状況等報告書が、いちばん大事

告知書とも呼ばれる書面です。売主が知っていることを書けば「告げた」ことになり、免責が効きます。
書く代表的な項目です。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 建物 | 雨漏り(現在・過去)、シロアリの被害と駆除歴、傾き、給排水管の故障 |
| 履歴 | 増改築・修繕、リフォームの時期と内容 |
| 敷地 | 境界の状況、越境、地盤沈下、埋設物 |
| 周辺 | 近隣の建築計画、騒音・臭気、嫌悪施設 |
| 心理的 | 事件事故、自殺、孤独死 |
| その他 | アスベスト、耐震診断、住宅性能評価の有無 |
「不明」と書いてよい
これが実家の売却でいちばん重要な点です。
親が住んでいた家で、売る子は住んだことがない。知らないことのほうが多いのが普通です。
知らないことを「なし」と書くのが、最も危険です。 「なし」は「ないと認識している」という表明になり、後から不具合が出たときに争いになります。
「不明」と書けば、そのとおりの意味になります。買主は「分からないまま買う」ことを前提に検討します。値段には反映されますが、責任は残りません。
親から聞いた話があるなら、聞いた範囲で書いておきます。「母から、10年ほど前に台所の天井から雨漏りがあったと聞いている」で十分です。

傷みが分からない家は、買取で出すという手がある
個人の買主に売ると、引渡し後の連絡に何年も身構えることになります。 買取なら現況有姿・免責での取引が前提です。再建築不可、傾き、残置物ありでも対象で、査定は無料です。
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長く空き家だった家の落とし穴
空き家特有の問題があります。通水していないと、給排水管の不具合が分かりません。
引渡し後に買主が水を通して初めて、配管の腐食や漏水が出ることがあります。売主も知りようがなかった不具合です。
| 空き家で出やすい不適合 | 見つかる時期 |
|---|---|
| 給排水管の漏水・詰まり | 買主が通水した直後 |
| 雨漏り | 引渡し後の最初の大雨 |
| シロアリの食害 | 床を剥がしたとき |
| 建具の建て付け | 使い始めてから |
対策は2つです。
引渡し前に通水して確認する。 水道を開栓し、各所の蛇口とトイレを使ってみます。ここで不具合が出れば「知った」ことになるので、告知書に書けます。
インスペクション(既存住宅状況調査)を入れる。 費用は5万〜10万円程度です。第三者の資格者が調べた結果は、そのまま告知の材料になります。知らなかったことを減らせるので、免責を確実にする効果があります。
契約書で確認する5か所

| 確認する場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 契約不適合責任の条項 | 期間は何か月か、免責か |
| 対象の限定 | 雨漏り・シロアリ・構造・給排水管の4点に絞っているか |
| 現況有姿の条項 | 入っているか |
| 物件状況等報告書 | 契約書に添付されているか |
| 設備表 | 「故障あり」「撤去」を正しく書いているか |
設備表を軽く見ないでください。 エアコン、給湯器、換気扇などを「故障なし」と書いて動かなければ、それも不適合です。実家では動くかどうかを確かめずに書いてしまいがちです。
分からないものは、設備表でも「不明」または「撤去」を選びます。
値段と責任は、引き換えになる

免責にすればするほど、買主の受け取るリスクが増えます。その分は価格に出ます。
| 売り方 | 責任の残り方 | 価格の傾向 |
|---|---|---|
| 個人へ仲介、責任つき(3か月・4点限定) | 3か月は残る | 相場に近い |
| 個人へ仲介、一切免責 | ほぼ残らない | 相場より下がる |
| 買取業者へ売却 | 残らないのが前提 | 仲介相場の6〜8割 |
どれが正しいということはありません。 手取りを最大にしたいなら責任を引き受け、引渡し後を考えたくないなら免責にします。
判断の軸は2つです。
- その家の状態を、自分がどれだけ知っているか — 知らないほど免責寄りにする
- 引渡し後に連絡が来たとき、対応できる余力があるか — 遠方で時間が取れないなら免責寄りにする
買取と仲介の手取りの差は不動産の買取と仲介はどちらが得かで試算しています。
連絡が来たときにやること
引渡し後に買主から指摘が来たら、順番があります。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | その場で認めない・約束しない。まず事実を聞く |
| 2 | 契約書の契約不適合責任の条項を読む(期間・対象・免責) |
| 3 | 物件状況等報告書に、その項目をどう書いたかを確認する |
| 4 | 仲介した不動産会社に連絡する |
| 5 | 期間内・対象内なら、修補の範囲と金額を協議する |
| 6 | 金額が大きい、争いになりそうなら弁護士に相談する |
1がいちばん大事です。 「申し訳ない、直します」と言ってしまうと、免責特約があっても新たな合意をしたと見られかねません。
買主の言い分が正しいかどうかは、契約書と告知書を読まないと判断できません。書類を見るまでは、謝罪も否定もしないのが基本です。
期間を過ぎている場合は、その旨を仲介会社を通じて伝えます。感情的なやり取りになりやすいので、当事者同士で直接やり取りしないほうが収まります。
引渡し後を気にせず終えたいなら
免責での取引を前提にした買取なら、引渡しで関係が終わります。 相続した不動産の査定に対応していて、仲介と買取の両方の金額を比べられます。申し込みは無料です。
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つまずきやすい8つ

- 知らないことを「なし」と書いた — 「不明」と書くのが正しい
- 雨漏りを知っていて黙っていた — 民法572条で免責が効かない
- 「1年で終わる」と思っていた — 1年以内の通知が要件で、権利は時効まで残る
- 起算点を引渡し日だと思っていた — 買主が不適合を知った時から数える
- 設備表を確かめずに書いた — 動かない給湯器も不適合になる
- 免責特約を入れなかった — 個人売主なら入れられる数少ない武器
- 通水せずに引き渡した — 空き家では配管の不具合が後から出る
- 親から聞いた話を書かなかった — 伝聞でも書けば「告げた」ことになる
よくある質問
Q. 売主が個人なら、本当に一切免責にできますか
できます。宅建業法40条の制限は宅建業者が自ら売主になる場合の規定で、個人には適用されません。
Q. 免責にすると売れなくなりませんか
個人の買主は嫌がります。価格を下げるか、買取業者に出すかの選択になります。
Q. 相続した実家で、親の代の不具合は責任を負いますか
自分が知らなければ572条の「知りながら告げなかった事実」には当たりません。だからこそ「不明」と書くことが効きます。
Q. 土地だけの売却でも契約不適合責任はありますか
あります。地中埋設物、土壌汚染、越境、境界の不一致などが対象です。
Q. 心理的瑕疵はどこまで書きますか
国土交通省のガイドラインでは、他殺・自殺・特殊清掃を伴う死は原則として告げるべきとされています。判断に迷うなら書いてください。孤独死した実家は売れるかで扱っています。
Q. インスペクションは必須ですか
義務ではありません。ただし媒介契約では、宅建業者があっせんの可否を示すことになっています。
Q. 引渡し後に連絡が来たら、どうすればいいですか
まず契約書の条項と告知書を確認し、仲介した不動産会社に相談してください。自分で判断して修理を約束しないでください。
Q. 買主が宅建業者なら安心ですか
買主が業者の場合、免責での取引が通りやすくなります。ただし契約書の内容は必ず確認してください。
まとめ
- 2020年4月から「瑕疵担保責任」は契約不適合責任に変わった
- 買主ができるのは、追完請求・代金減額請求・損害賠償・解除の4つ
- 追完が不能なら、催告なしで直ちに代金減額を請求できる
- 期間の制限は「知った時から1年以内に通知」。1年で権利が消えるわけではない
- 通知さえすれば、時効(5年・10年)の範囲で請求できる
- 売主が個人なら免責特約は有効。宅建業者は2年未満にできない(宅建業法40条)
- 実務では「引渡しから3か月・4点限定」か「一切免責」が多い
- 知りながら告げなかった事実は免責できない(民法572条)
- 物件状況等報告書には「不明」と書いてよい。知らないことを「なし」と書かない
- 親から聞いた話も、聞いた範囲で書けば「告げた」ことになる
- 空き家は通水しないと配管の不具合が分からない。引渡し前に開栓して確認する
- インスペクション5万〜10万円で、知らなかったことを減らせる
契約不適合責任は、嘘をつかなければ、ほとんど怖くない制度です。 分からないことを分からないと書く。それだけで、売った後の不安はかなり消えます。
この記事について
執筆:葉山 湊(はやま みなと)
自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。宅地建物取引士・弁護士などの資格は保有していません。制度については、必ず一次情報(e-Gov法令検索・法務省・国土交通省)にあたって記事に反映しています。
本記事の主な出典は次のとおりです。
・契約不適合責任:e-Gov法令検索「民法」第562条〜第566条
・免責特約の限界:e-Gov法令検索「民法」第572条
・宅建業者の特約制限:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第40条
・民法(債権関係)の改正:法務省
・心理的瑕疵の告知:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
個別の事情によって判断は変わります。本記事の内容は2026年9月25日時点の公表情報にもとづきます。実際の契約内容は、仲介する宅地建物取引業者および弁護士にご確認ください。

