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きょうだいで実家の分け方がまとまらない。話し合おうにも、もう顔を合わせたくない。
協議が行き詰まったときの出口が、家庭裁判所の遺産分割調停です。裁判というより、裁判所の部屋を借りた話し合いに近い手続きです。
申立ての手数料は収入印紙1,200円。思っているより入口は低く、そして思っているより時間がかかります。2024年の司法統計では、終わるまでに1年を超えた事件が3割ありました。
費用と流れ、どう終わるのかを、裁判所の手続案内と司法統計の数字で整理します。
結論|先に3つ

1. 申立ては収入印紙1,200円から
被相続人1人につき1,200円と郵便切手。弁護士を頼まなければ、費用の大半は戸籍などの書類代です。
2. 3件に2件は1年以内に終わる
2024年の終局事件のうち67.5%が1年以内。ただし2年を超えたものも9.3%あります。
3. まとまらなければ審判に移る
調停が不成立になると自動的に審判へ移り、裁判官が分け方を決めます。
申し立てる前に、手続きの全体を相談する
戸籍の収集、財産の一覧づくり、相続税の期限。調停と並行して進めるものがいくつもあります。どこまでを自分でやり、どこを任せるかを無料で整理できます。
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協議と調停は何が違うか

遺産の分け方を決める方法は3段階あります。
| 遺産分割協議 | 遺産分割調停 | 遺産分割審判 | |
|---|---|---|---|
| 場所 | どこでも | 家庭裁判所 | 家庭裁判所 |
| 決める人 | 相続人全員 | 相続人全員(調停委員が仲介) | 裁判官 |
| 相手と会うか | 会う | 原則として交互に話す | 書面と期日 |
| 全員の合意 | 必要 | 必要 | 不要 |
| 結果の文書 | 遺産分割協議書 | 調停調書 | 審判書 |
調停は合意を目指す手続きです。裁判所の手続案内は、調停委員が事情を聞き、資料を見たうえで「解決案を提示したり、解決のために必要な助言をし、合意を目指し話合いが進められます」と説明しています。
成立した調停調書は確定判決と同じ効力を持つので、それだけで相続登記も預金の払戻しもできます。 協議書のように全員の実印と印鑑証明を集め直す必要はありません。
協議書の書き方は遺産分割協議書の作り方にまとめています。
申立ての費用と書類

裁判所の手続案内に載っている費用はこれだけです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入印紙 | 被相続人1人につき1,200円 |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所ごとに異なる |
| 戸籍・住民票などの実費 | 数千円から1万円程度 |
| 不動産の登記事項証明書 | 1通600円(窓口) |
必要な書類は次のとおりです。
- 申立書と、相手方の人数分の写し
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本と住民票
- 遺産に関する証明書(不動産の登記事項証明書、預貯金の残高証明書など)
- 送達場所等届出書
いちばん手間がかかるのは4番と6番です。 戸籍は協議のときに集めたものが使えます。遺産の資料は、相手が持っている通帳までは揃えられなくても構いません。分かる範囲で出し、残りは調停の中で開示を求めます。
どこの家庭裁判所に出すか
申立先は、相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。
亡くなった親の住所地ではありません。ここはよく間違えます。
| 状況 | 申立先 |
|---|---|
| 相手が1人 | その人の住所地 |
| 相手が複数いて住所がばらばら | どれか1人の住所地を選べる |
| 全員が合意した | 合意した家庭裁判所 |
相手が遠方に住んでいると、期日のたびに出向くことになります。いまはウェブ会議や電話で参加できる期日もあるので、遠方なら申立ての段階で利用できるか問い合わせてください。
調停の進み方

申立てから終わるまでの流れはこうです。
- 申立書を家庭裁判所に出す
- 裁判所から相手方に申立書の写しと呼出状が届く
- 第1回期日(申立てから1〜2か月後が多い)
- 調停委員が双方から交互に話を聞く
- 相続人の範囲、遺産の範囲、遺産の評価を順に確定させる
- 特別受益や寄与分の主張を整理する
- 分け方を話し合う
- 合意できれば調停成立、調書が作られる
5番の順番に意味があります。 調停は「誰が相続人か」「何が遺産か」「いくらと評価するか」を1つずつ固めてから、最後に分け方に入ります。前の段階で揉めると、次に進みません。
実家の評価額で揉めるのが、いちばん多い止まり方です。 住み続けたい側は低く、出ていく側は高く言いたい。固定資産税評価額、路線価、査定額のどれを使うかで数百万円変わります。
実家の評価額の根拠を持っておく
調停では「いくらと評価するか」が分け方の土台になります。複数社の査定額があれば、話し合いの出発点として出せます。査定は無料で、売るかどうかは決めていなくても取れます。
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何か月かかるか

最高裁判所の司法統計年報(令和6年、家事編)の第45表に、2024年に終わった遺産分割事件15,379件の審理期間が載っています。
| 審理期間 | 件数 | 累計 |
|---|---|---|
| 1か月以内 | 261 | 1.7% |
| 3か月以内 | 1,538 | 11.7% |
| 6か月以内 | 3,562 | 34.9% |
| 1年以内 | 5,016 | 67.5% |
| 2年以内 | 3,575 | 90.7% |
| 3年以内 | 958 | 96.9% |
| 3年を超える | 469 | 100% |
3件に2件は1年以内に終わっています。 一方で、2年を超えたものが1,427件、全体の9.3%あります。
期日の回数も載っています。5回以内で終わったのが67.1%、6回以上かかったのが32.9%です。期日はおおむね1〜2か月に1回なので、6回なら半年から1年になります。
どう終わるか

同じ第45表で、終わり方の内訳も分かります。
| 終わり方 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 調停成立 | 6,776 | 44.1% |
| 調停に代わる審判 | 4,817 | 31.3% |
| 取下げ | 2,289 | 14.9% |
| 審判(認容) | 1,198 | 7.8% |
| その他 | 299 | 1.9% |
意外に多いのが調停に代わる審判です。ほぼ合意できているのに、1人だけ期日に来ない、細部だけ折り合わない、といった場合に、裁判所が調停の内容に沿った審判を出します。2週間以内に異議が出なければ確定します。
調停成立と調停に代わる審判を合わせると75.4%。4件に3件は、話し合いの延長で決着しています。 裁判官が一から分け方を決める審判(認容)は7.8%にとどまります。
不成立なら審判に移る
調停で合意できないとき、事件は終わりません。裁判所の手続案内はこう書いています。
話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
審判では、裁判官が証拠と法律に沿って分け方を決めます。法定相続分が基準になり、感情や経緯はほとんど考慮されません。
| 調停 | 審判 | |
|---|---|---|
| 分け方の自由度 | 合意すれば何でもよい | 法定相続分が基準 |
| 実家を誰が取るか | 話し合いで決める | 代償金を払えるかで決まりやすい |
| 払えないとき | 分割払いなども合意できる | 競売して代金を分ける判断もある |
実家を取りたい側が代償金を用意できないと、審判で換価分割、つまり売って代金を分けると判断されることがあります。
審判まで進む前に、どこで手を打つかを考えておくのが現実的です。
遺産が少なくてもこじれる

「うちは財産が少ないから揉めない」は、統計が否定しています。司法統計年報の第53表で、2024年に認容または調停成立で終わった7,974件を遺産の価額別に見ると、こうなります。
| 遺産の価額 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 2,835 | 35.6% |
| 5,000万円以下 | 3,373 | 42.3% |
| 1億円以下 | 949 | 11.9% |
| 5億円以下 | 546 | 6.8% |
| 5億円を超える | 51 | 0.6% |
| 算定不能・不詳 | 220 | 2.8% |
5,000万円以下が77.9%。1,000万円以下だけで3件に1件あります。
遺産が実家1軒と少しの預金、という家ほど揉めやすい理由ははっきりしています。分けにくい不動産が遺産の大半を占めるので、誰かが住めば誰かが現金を受け取れない構図になります。 預金が十分にあれば、それで調整できます。
きょうだいでの分け方の考え方は実家をきょうだいでどう分けるかにまとめています。
弁護士を頼むか

同じ第53表に、代理人弁護士がついたかどうかも載っています。認容・調停成立7,974件のうち、弁護士の関与ありが6,733件(84.4%)、なしが1,241件(15.6%)でした。
弁護士なしで終わった事件のうち81.1%が1年以内でした。弁護士ありでは54.1%です。
ただしこれは「弁護士をつけると長引く」という意味ではありません。こじれた事件ほど弁護士がつく、と読むのが自然です。
| 弁護士なしでも進めやすい | 頼んだほうがよい |
|---|---|
| 遺産の範囲に争いがない | 相手が通帳を隠している |
| 評価額の差が小さい | 生前の使い込みを主張したい |
| 相手も話し合う意思がある | 相手に弁護士がついた |
| 争点が1つか2つ | 特別受益・寄与分で争う |
10年たつと特別受益・寄与分が言えなくなる

2023年4月1日に施行された民法第904条の3で、大きなルールが加わりました。
相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割は、法定相続分(または遺言で指定された相続分)で分けます。 生前贈与を受けた人の取り分を減らす特別受益や、介護で財産の維持に貢献した人の取り分を増やす寄与分は、主張できなくなります。
| 10年以内 | 10年経過後 | |
|---|---|---|
| 分割の基準 | 具体的相続分 | 法定相続分 |
| 特別受益の主張 | できる | できない |
| 寄与分の主張 | できる | できない |
| 全員が合意した場合 | — | 具体的相続分で分けられる |
例外は2つです。10年が過ぎる前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していた場合と、期間満了前6か月以内にやむを得ない事由があった場合です。
改正前に始まった相続にも適用されます。ただし猶予があり、相続開始から10年を経過する時と、施行日から5年を経過する時(2028年3月31日)の、いずれか遅い時までに請求すれば間に合います。
介護を担ってきた側が寄与分を主張したいなら、放置するほど不利になります。 話し合いが止まったまま年数がたっているなら、調停を申し立てておくこと自体に意味があります。
つまずきやすい8つ

| つまずき | 何が起きるか |
|---|---|
| 親の住所地の家庭裁判所に出した | 管轄違いで移送される |
| 相続税の申告を分割待ちで止めた | 期限を過ぎて加算税がかかる |
| 分割見込書を出さなかった | 小規模宅地等の特例が使えない |
| 実家の評価の根拠を持たずに臨んだ | 相手の評価額で話が進む |
| 寄与分の記録を残していなかった | 主張が認められない |
| 10年を過ぎるまで放置した | 特別受益・寄与分が言えなくなる |
| 期日を欠席し続けた | 調停に代わる審判で決まる |
| 代償金の用意を考えていなかった | 審判で実家を売ることになる |
2番と3番は、調停の結果とは関係なく税金で損をします。 調停を申し立てたら、相続税の申告が要るかどうかを最初に確認してください。
相続税の期限は、調停中でも止まらない
申告期限の10か月は、分割が決まっていなくても過ぎていきます。未分割での申告と分割見込書の提出を、相続に強い税理士に頼めます。紹介は無料です。
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よくある質問
Q. 相手が期日に来なかったらどうなりますか
何度か呼び出しても出てこない場合、裁判所は調停を不成立にして審判に移すか、調停に代わる審判を出します。欠席し続けても手続きは止まりません。
Q. 調停の途中で取り下げられますか
申立人はいつでも取り下げられます。2024年は2,289件、全体の14.9%が取下げで終わっています。話し合いがついて協議書を作った、という取下げも含まれます。
Q. 調停で決まった内容に従わなかったら
調停調書は確定判決と同じ効力があるので、代償金を払わない相手には強制執行ができます。
Q. 自分で申立書を書けますか
書けます。裁判所のウェブサイトに書式と記載例が載っています。家庭裁判所の窓口でも、手続きの説明は受けられます。
Q. 不動産を売って分けたいのに、相手が応じません
調停で合意できなければ、審判で換価分割を求めることになります。共有のまま残すと次の相続でさらに分かれるので、早めに方針を決めてください。
まとめ
- 調停は話し合いの場所を家庭裁判所に移す手続き。調停委員が交互に話を聞く
- 申立ては収入印紙1,200円と郵便切手。申立先は相手方の住所地の家庭裁判所
- 2024年に終わった15,379件のうち、1年以内が67.5%、2年超が9.3%
- 終わり方は調停成立44.1%、調停に代わる審判31.3%。合わせて4件に3件
- 不成立なら自動的に審判へ。法定相続分が基準になり、実家を売る判断もありうる
- 認容・調停成立のうち遺産5,000万円以下が77.9%。少ない遺産でも揉める
- 相続税の申告期限は調停中も延びない。分割見込書を忘れない
- 相続開始から10年を過ぎると特別受益・寄与分を主張できない。2023年4月施行
- 改正前の相続も、2028年3月31日と10年経過のいずれか遅い時までに請求が必要
- 介護の記録や評価額の根拠は、申し立てる前にそろえておく
出典
- 申立人・申立先・費用・必要書類・審判への移行:裁判所「遺産分割調停」手続案内
- 審理期間・終局区分・実施期日回数:最高裁判所事務総局「令和6年 司法統計年報 3 家事編」第45表
- 遺産の価額別件数・代理人弁護士の関与:同 第53表
- 10年経過後の遺産分割:民法第904条の3、法務省「具体的相続分による遺産分割の時的限界」
- 申告期限後3年以内の分割見込書:相続税法第19条の2第2項、租税特別措置法第69条の4第4項

