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実家を売ろうとしたら、不動産会社から「この道、持分がありませんね」と言われた。
家の前の道が公道ではなく、近所の誰かの私有地だった。そういう実家は珍しくありません。昭和に分譲された住宅地では、道を分筆して一部の人だけが持っている形がよくあります。
問題は、持分がないと買主の住宅ローンが通らないことです。 売値が下がるのではなく、買える人がいなくなります。
この記事では、なぜそうなるのかを条文から説明したうえで、承諾書でどこまで外せるかを書きます。
結論|先に3つ

1. 売れない理由は「買主がローンを組めない」
担保として評価されないので、現金で買える人しか対象になりません。
2. 承諾書があれば、多くは解決する
通行承諾書と掘削承諾書。「承継条項」を必ず入れてください。
3. 持分の有無と、接道義務は別の話
持分がなくても建て替えられる場合があり、その逆もあります。役所で両方を確認します。
承諾書が取れないなら、買取という出口がある
私道の所有者と連絡が取れない実家でも、買取なら値がつくことがあります。 訳あり物件を専門に扱っていて、その場で価格が分かります。査定は無料です。
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売れない3つの理由

1. 住宅ローンが通らない
金融機関は、その土地を担保として評価します。私道を通らないと出入りできない土地は、将来売れない可能性があるため、担保価値が低く見られます。承諾書がないと融資が下りないことが多く、結果として現金で買える人しか買えなくなります。
2. 水道管やガス管を引き直せない
古い実家では、水道管が細い(13ミリ)ままのことがあります。買主がリフォームで太くしようとすると、私道を掘る工事が必要です。掘削の許可がないと、工事そのものができません。
3. 建て替えができないことがある
私道が建築基準法上の道路として扱われていない場合、接道義務を満たさず、建て替えられません。これは持分の有無とは別の判定です。
通行と掘削は、法律ではどうなっているか

「持分がなくても権利はあるのでは」と思うかもしれません。条文はあります。
通行はできる(民法210条)
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる
これを囲繞地通行権といいます。ただし条件があります。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 211条1項 | 通行の場所と方法は、他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ |
| 211条2項 | 必要があるときは、通路を開設できる |
| 212条 | 通行する他の土地の損害に対して償金を支払う。1年ごとに支払える |
| 213条1項 | 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、他の分割者の土地のみを通行できる。この場合は償金が不要 |
213条が効く実家は多いです。 もとは1つの大きな土地で、分譲のときに分筆されて道ができた——そういう経緯なら、償金なしで通れます。
水道管も、2023年から条文がある
2023年4月1日施行の改正で、民法213条の2が新設されました。
土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる
改正前は「掘削は所有者の承諾がないとできない」が実務でした。いまは条文上の権利があります。
ただし手続きが定められています。
| 項 | 義務 |
|---|---|
| 2項 | 損害が最も少ない場所と方法を選ぶ |
| 3項 | あらかじめ、目的・場所・方法を、土地の所有者と現に使用している者に通知する |
| 5項 | 土地の損害に対して償金を支払う |
| 7項 | 他人の設備を使う場合、利益を受ける割合に応じて設置・改築・修繕・維持の費用を負担する |
接道義務は、別の判定

「私道に持分がない」と「建て替えられない」は、別の問題です。混同すると、必要のない不安を抱えます。
建築基準法43条1項です。
建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない
ここでいう「道路」は42条で定義されています。私道に関係するのは次の2つです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 42条1項5号(位置指定道路) | 特定行政庁から位置の指定を受けた私道。建築基準法上の道路として扱われる |
| 42条2項(2項道路・みなし道路) | 建物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したもの。中心線から2メートルの線が境界線とみなされる(セットバック) |
位置指定道路なら、持分がなくても接道義務は満たします。 2項道路なら、建て替え時にセットバックが必要になります。
どちらでもない「ただの通路」なら、43条2項2号の但し書き許可を取るしかありません。建築審査会の同意が要り、時間もかかります。
この判定は、市区町村の建築指導課で無料で教えてもらえます。 実家の住所を伝えれば、道路種別を調べてもらえます。売却を考えたら、まずここに行ってください。
調べる順番

| 順番 | どこで | 何がわかるか | 費用 |
|---|---|---|---|
| 1 | 法務局(公図・登記事項証明書) | 私道の地番と所有者が誰か | 600円程度 |
| 2 | 市区町村の建築指導課 | 道路種別(位置指定・2項道路・その他) | 無料 |
| 3 | 上下水道局 | 本管の位置と引込管の経路、管の口径 | 無料 |
| 4 | 実家の書類箱 | 過去の承諾書が残っていないか | — |
4を見落とさないでください。 親が家を建てたとき、あるいは前回の水道工事のときに承諾書を取っていることがあります。古い図面の袋や権利証と一緒にしまわれていることが多いです。
公図の取り方は登記簿謄本の取り方で書いています。

承諾書に入れる4つ

私道の所有者から書面をもらいます。入れる内容は4つです。
| 条項 | 何を認めてもらうか |
|---|---|
| 通行 | 人と車が通ること |
| 掘削 | ライフライン工事で私道を掘ること |
| 再建築 | 建て替えのときにも通行・掘削を認めること |
| 承継 | この承諾が、買主やその後の所有者にも及ぶこと |
「一代限り」の承諾書は、あっても価値がありません。 売った先でもう一度取り直しになり、買主が嫌がります。承継条項を必ず入れてください。
ハンコ代
承諾の謝礼として金銭を求められることがあります。法律上の根拠はありませんが、慣行として支払われています。金額は決まっておらず、数万円から十数万円が多いようです。
高額を要求されたときは、民法210条と213条の2の話をして、粘り強く交渉します。ただし関係を壊すと、あとの工事で困るのは買主です。 不動産会社に間に入ってもらうのが現実的です。
維持費は誰が払うのか
私道の補修、街灯の電気代、清掃。これらを沿道の住民で分担している地域があります。
持分がなくても、通らせてもらう代わりに一部を負担しているケースが多く見られます。慣行なので、地域によってまったく違います。
| 確認すること | 誰に聞くか |
|---|---|
| 年間いくら払っているか | 親、または近隣の住民 |
| 誰がとりまとめているか | 町内会、私道の所有者 |
| 過去に舗装の補修をしたか | 同上 |
| 今後の補修予定があるか | 同上 |
買主には、この負担額を必ず伝えてください。 伝えずに引き渡すと、後から「聞いていない」となります。物件状況等報告書に書けば「告げた」ことになります。詳しくは売った後に雨漏りが出たらで扱っています。
承諾が取れるかどうかで、売り方が変わる
承諾書つきなら仲介で普通に売れます。取れないなら買取です。 どちらが手取りで残るかは、両方の金額を並べないと決まりません。相続した不動産の査定に対応していて、申し込みは無料です。
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持分を買い取るという選択
承諾書ではなく、私道の持分そのものを買い取る方法もあります。
| 承諾書 | 持分の買取 | |
|---|---|---|
| 費用 | ハンコ代 数万〜十数万円 | 数十万円〜 |
| 手間 | 書面1通 | 売買契約と登記 |
| 確実さ | 承継条項があれば足りる | 最も確実 |
| 相手の同意 | 要る | 要る |
持分を持てば、ローンの審査は通りやすくなります。 ただし所有者が売ってくれるとは限りません。金額の折り合いもつきにくいので、まず承諾書から当たるのが順番です。
私道の持分を買うときは、分筆された道のどの部分かを公図で確認してください。持分といっても、道全体の共有持分の場合と、特定の一区画の所有権の場合があります。
買取に出すときの見方
承諾が取れない、所有者が不明、相続人が多すぎる——そういう実家は、訳あり物件を専門に扱う買取業者が対象にしています。
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 買い手 | 個人(ローンを使う) | 業者(現金) |
| 承諾書 | ほぼ必須 | なくても検討される |
| 価格 | 相場に近い | 相場の6〜8割 |
| 契約不適合責任 | 残ることがある | 免責が前提 |
| 期間 | 3〜6か月 | 数週間 |
承諾書が取れるなら、仲介のほうが手取りは多くなります。 取れないときの選択肢として買取がある、という順番です。
仲介と買取の手取りの差は不動産の買取と仲介はどちらが得かで試算しています。
隣の家と共同で持っているとき

持分がある場合でも、持ち方によって扱いが変わります。
| 持ち方 | 中身 | 売るときの注意 |
|---|---|---|
| 共有持分型 | 道全体を沿道の全員で共有する | 持分だけを売れる。ただし買い手は限られる |
| 分筆所有型 | 道を分けて、自分の前だけを所有する | 他人の前を通るには承諾が要る |
| 相互地役権型 | 互いの土地に通行の地役権を設定している | 登記されていれば最も安定 |
厄介なのは分筆所有型です。 「持分はある」と言われても、自分の家の前だけを持っているだけで、公道に出るまでに他人の土地を通ることがあります。
公図を広げて、自分の土地から公道まで指でたどってください。 途中に他人の地番が挟まっていれば、その人の承諾が要ります。
地役権(民法280条)が登記されていれば、所有者が代わっても効力が続きます。承諾書より強いので、登記されていないか法務局で確認してください。
売り出す前にやる5つ

- 法務局で公図と登記事項証明書を取り、私道の地番と所有者を確定する
- 建築指導課で道路種別を確認する(位置指定・2項道路・その他)
- 上下水道局で本管の位置と管の口径を確認する
- 実家の書類箱を探し、過去の承諾書がないか確かめる
- 私道の所有者に通行・掘削・再建築・承継の承諾を依頼する
1〜4は自分で動けば数日で終わり、費用も1,000円程度です。ここをやらずに査定を頼むと、「調べてから出直してください」で止まります。
5だけは相手のある話なので、時間が読めません。所有者が近所に住んでいるなら早いですが、亡くなっていたり遠方に移っていたりすると数か月かかります。
承諾の交渉も含めて、相談できる相手を持つ
私道の交渉は、当事者同士でやると角が立ちます。 不動産会社に間に入ってもらうほうが、結果的に早く収まります。査定の相談から無料でできます。
プロモーションを含みます。
つまずきやすい8つ

- 「持分がない=建て替え不可」と思い込んだ — 接道義務は別の判定。役所で確認する
- 承諾書を取らずに売り出した — 買主のローンで止まる
- 「一代限り」の承諾書で足りると思った — 承継条項がないと買主が困る
- 掘削の承諾を落とした — 水道管を太くできず、リフォームが止まる
- 実家の書類箱を見なかった — 過去の承諾書が残っていることがある
- 私道の所有者が亡くなっていた — 相続人全員から取ることになる
- ハンコ代を値切って関係を壊した — 後の工事で困るのは買主
- 維持費の負担を買主に伝えなかった — 引渡し後にもめる
よくある質問
Q. 私道か公道かは、どこでわかりますか
法務局で公図と登記事項証明書を取れば、所有者がわかります。所有者が自治体なら公道、個人や複数人なら私道です。
Q. 位置指定道路かどうかは
市区町村の建築指導課で教えてもらえます。無料です。指定年月日と指定番号も確認しておくと、買主への説明が早くなります。
Q. 通行を止められたらどうなりますか
民法210条の囲繞地通行権があります。ただし裁判になれば時間も費用もかかるので、書面で解決するほうが現実的です。
Q. 掘削を拒まれたら
2023年4月施行の民法213条の2により、必要な範囲で設備を設置する権利があります。事前通知と償金が要件です。ただし工事業者が「承諾書がないと着工しない」と言うことが多いのが実情です。
Q. 車が通れる幅がありません
通行権の範囲は「必要であり、他の土地のために損害が最も少ないもの」(民法211条1項)です。徒歩は認められても車は認められないことがあります。
Q. セットバックが必要と言われました
42条2項道路なら、中心線から2メートルまで敷地を後退させます。その分、建てられる面積が減ります。
Q. 固定資産税はかかりますか
私道の持分があれば課税対象ですが、公共の用に供する道路として非課税になることがあります。市区町村に確認してください。
Q. いくら安くなりますか
承諾書が取れれば大きくは下がりません。取れない場合は買取になり、相場の6〜8割が目安です。
まとめ
- 私道に持分がないと、買主の住宅ローンが通らず、買える人がいなくなる
- 理由は、担保評価が下がること、掘削工事ができないこと、建て替えの可否
- 通行は民法210条の囲繞地通行権がある。分割で生じた土地なら償金も不要(213条1項)
- 水道管などの設備は、2023年4月施行の民法213条の2で設置権が条文化された
- ただし事前通知と償金、損害が最も少ない方法という要件がある
- 買主と銀行が求めるのは条文ではなく書面。承諾書のほうが実務では効く
- 接道義務(建築基準法43条1項)は持分の有無とは別の判定
- 位置指定道路(42条1項5号)なら持分がなくても接道を満たす
- 2項道路(42条2項)なら建て替え時にセットバックが必要
- 調べる順番は、法務局→建築指導課→上下水道局→実家の書類箱
- 承諾書には通行・掘削・再建築・承継の4つを入れる
- 所有者が亡くなって相続登記もされていない場合が、いちばん詰まる
私道の問題は、売り出す前に片付けておくかどうかで、売れるまでの時間がまるごと変わります。 査定を頼む前に、役所で道路種別だけでも確認してください。
この記事について
執筆:葉山 湊(はやま みなと)
自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。宅地建物取引士・土地家屋調査士などの資格は保有していません。制度については、必ず一次情報(e-Gov法令検索・法務省)にあたって記事に反映しています。
本記事の主な出典は次のとおりです。
・囲繞地通行権:e-Gov法令検索「民法」第210条〜第213条
・設備設置権(2023年4月施行):e-Gov法令検索「民法」第213条の2
・道路の定義と接道義務:e-Gov法令検索「建築基準法」第42条・第43条
・2023年4月施行の改正:法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」
個別の事情によって判断は変わります。本記事の内容は2026年9月25日時点の公表情報にもとづきます。実際の判断は、市区町村の建築指導課および宅地建物取引業者にご確認ください。

