「親が元気なうちに実家を売っておいたほうがいいのか、相続してからのほうがいいのか」
この質問には、ほとんどの場合、相続後のほうが有利という答えがあります。ただし例外があり、その例外に当てはまる家では逆に数百万円損をします。
分かれ目は3つです。親がその家に住んでいるか、相続税がかかるか、家がいつ建てられたか。
この記事では、相続前と相続後で何が変わるのかを整理し、3つのモデルケースで手取りを比較します。数字で見れば、自分の家がどちらなのかは判断できます。

結論|3つの分かれ目

先に結論を置きます。
| 条件 | 有利なタイミング | 理由 |
|---|---|---|
| 親がその家に住んでいる | 相続前 | 親のマイホーム3,000万円控除が使える |
| 親が施設に入り空き家/相続税がかからない | 相続後 | 空き家の3,000万円控除+取得費の引き継ぎ |
| 相続税がかかりそうで、現金が不足 | 相続前も選択肢 | 納税資金を先に確保できる |
| 家が昭和56年6月以降の建築 | 相続後(ただし空き家特例は使えない) | 取得費加算や小規模宅地等の特例で調整 |
もっとも多いのは2番目、「親は施設か同居で、実家は空き家。相続税はかからない」というケースです。この場合は相続後に売るのが明確に有利です。
何が変わるのか|5つの違い

違い1|使える特例が違う
これが最大の違いです。
| 相続前に売る | 相続後に売る | |
|---|---|---|
| マイホームの3,000万円控除 | 親が住んでいれば使える | 相続人が住んでいなければ使えない |
| 空き家の3,000万円特別控除 | 使えない | 要件を満たせば使える |
| 取得費加算の特例 | 使えない | 相続税を納めていれば使える |
| 小規模宅地等の特例 | 売ってしまうと使えない | 要件を満たせば評価額が80%減 |
相続前に売れば売却代金は現金になります。現金は路線価のような評価減が効かず、額面がそのまま相続税の対象になります。土地のまま持っていれば路線価評価(時価の8割程度が目安)になり、さらに小規模宅地等の特例で最大80%減額されます。
つまり、相続税がかかる家庭では、売って現金にすると相続税が増えるという関係があります。
違い2|誰の税金になるか
相続前に売れば、譲渡所得税を払うのは親です。相続後なら相続人が払います。
親の所得が低い場合、売却益によって翌年の国民健康保険料や医療費の窓口負担割合が上がることがあります。年金生活の親にとっては無視できない負担です。
違い3|認知症のリスク
見落とされがちですが、実務上いちばん怖いのがこれです。
親が認知症になると、実家は売れなくなります。売買契約には意思能力が必要だからです。
その場合は家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てることになりますが、
- 申立てから選任まで1〜3か月
- 居住用不動産の売却には、さらに家庭裁判所の許可が必要
- 後見人が第三者(司法書士など)になると、月2万〜6万円の報酬が親が亡くなるまで続く
「売るなら元気なうち」と言われるのは、税金より先にこの理由があります。
違い4|取得費の扱い
相続後に売る場合、親が取得した日と取得価額をそのまま引き継ぎます。
これは有利な扱いです。相続してすぐ売っても、親が5年超所有していれば長期譲渡所得(20.315%)が適用されます。「相続したばかりだから短期の39.63%」というのは誤解です。
違い5|片付けの負担
相続前なら親と一緒に整理できます。何が大事なものか、どこに何があるかを本人に聞けます。
相続後は、どれが必要か分からないまま全部を判断することになります。遺品整理の費用がかさむのも、この「判断できない」が原因です。
相続前に売るときに使える特例
親が自分が住んでいる家を売る場合、マイホームを売ったときの特例が使えます。
マイホームの3,000万円特別控除
譲渡益から最大3,000万円を控除できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 自分が住んでいる家屋とその敷地 |
| 建築年の要件 | なし |
| 区分所有建物 | 対象になる(マンションも可) |
| 耐震改修・取壊し | 不要 |
| 住まなくなった場合 | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
空き家の3,000万円控除と違い、昭和56年5月31日以前という建築年の要件がありません。ここが大きな違いです。
10年超所有の軽減税率
所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合、3,000万円控除を引いた後の譲渡所得に、さらに低い税率が適用されます。
| 課税長期譲渡所得 | 税率(所得税・住民税・復興特別所得税の合計) |
|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 14.21% |
| 6,000万円超の部分 | 20.315% |
3,000万円控除と併用できます。親が長く住んだ家を親名義のまま売る場合、この組み合わせは強力です。
施設に入っても3年間は使える
親が老人ホームに入所した場合でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までなら、マイホームの3,000万円控除が使えます。
施設入所から3年以内なら「相続前に売る」という選択肢が残っている、ということです。ここは知らずに逃す方が多いところです。
相続後に売るときに使える特例
空き家の3,000万円特別控除
相続した実家を売るときの最大の節税策です。要件は厳しめです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされていないこと
- 相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと
- 相続時から売却時まで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
- 売却代金が1億円以下(共有者全員の合計で判定)
- 耐震基準に適合させるか、建物を取り壊して売ること
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 2027年(令和9年)12月31日までの譲渡であること
2024年1月1日以降の譲渡からは、売却後の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合も対象になりました。一方で、その家屋を相続した人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり2,000万円に縮減されます。
要件と実務は相続した実家の売却にかかる税金で詳しく解説しています。
小規模宅地等の特例
売る前の話ですが、相続税を大きく左右します。
被相続人が住んでいた宅地を相続する場合、330㎡まで評価額が80%減になります。4,000万円の土地なら800万円まで下がります。
| 取得者 | 主な要件 |
|---|---|
| 配偶者 | 無条件で適用可 |
| 同居していた親族 | 申告期限まで居住・保有を継続 |
| 別居の親族(家なき子) | 配偶者・同居相続人がいない/過去3年間、自己または配偶者等の所有する家に住んでいない/申告期限まで保有 |
注意したいのは、申告期限(10か月)まで保有し続ける必要があることです。相続後すぐに売ると、この特例が使えなくなる場合があります。配偶者以外が取得するなら、10か月を過ぎてから売却するのが原則です。
モデルケースで手取りを比較する

前提を揃えて比べます。いずれも木造・昭和55年築・売却価格2,500万円・購入時の契約書なし(概算取得費125万円)・譲渡費用100万円とします。
ケースA|親が住んでいる/相続税はかからない
- 相続人は子2人(基礎控除4,200万円)、遺産は実家のみ
| 相続前に売る | 相続後に売る | |
|---|---|---|
| 譲渡所得 | 2,275万円 | 2,275万円 |
| 使える特例 | マイホーム3,000万円控除 | 空き家特例は使えない(親が住んでいた家を相続後に売るので要件3は満たすが、親が同居していなければ可) |
| 課税譲渡所得 | 0円 | 0円(空き家特例が使える場合) |
| 譲渡所得税 | 0円 | 0円 |
| 相続税 | かからない | かからない |
この条件なら、どちらでも税額はゼロです。判断材料は認知症リスクと片付けの負担になります。
ケースB|親は施設/相続税がかからない
- 施設入所から5年経過。マイホーム特例の3年を過ぎている
- 相続人は子2人、遺産は実家2,500万円+預貯金1,000万円=3,500万円(基礎控除以下)
| 相続前に売る | 相続後に売る | |
|---|---|---|
| 使える特例 | なし(3年経過で失効) | 空き家の3,000万円特別控除 |
| 課税譲渡所得 | 2,275万円 | 0円 |
| 譲渡所得税 | 約462万円 | 0円 |
| 相続税 | かからない | かからない |
差は約462万円。相続後が圧倒的に有利です。このパターンが実務では最も多く見られます。
ケースC|相続税がかかる/納税資金が不足
- 遺産は実家2,500万円+その他の不動産・預貯金で合計1億円
- 相続人は子2人(基礎控除4,200万円)、預貯金は500万円しかない
| 相続前に売る | 相続後に売る | |
|---|---|---|
| 譲渡所得税 | 約462万円(マイホーム特例が切れている前提) | 0円(空き家特例) |
| 相続財産 | 現金2,038万円として計上 | 実家は路線価評価+小規模宅地等の特例で減額 |
| 相続税(概算) | やや増える | 小規模宅地等の特例で大きく下がる |
| 納税資金 | 確保できている | 10か月以内に売って納税する必要 |
税額だけなら相続後が有利ですが、10か月以内に売れなければ納税できないというリスクが残ります。地方の築古住宅は半年から1年かかることも珍しくありません。
納税資金が明らかに足りない場合は、相続前の売却も現実的な選択肢になります。あるいは相続後に「延納」「物納」という制度もありますが、要件が厳しく実務では使いにくいのが実情です。
相続税がいくら変わるのか|評価額の差を見る
「売って現金にすると相続税が増える」と書きました。実際にどのくらい変わるのかを見ておきます。
同じ2,500万円でも評価額が違う
時価2,500万円で売れる実家を例に取ります。
| 状態 | 相続税評価額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 土地建物のまま | 約1,700万円 | 土地は路線価(時価の8割程度)、建物は固定資産税評価額 |
| 小規模宅地等の特例を適用 | 約500万円 | 土地部分が80%減 |
| 売って現金 | 2,500万円 | 額面がそのまま |
小規模宅地等の特例まで使えると、評価額は5分の1になります。
相続税額でどう効くか
相続人が子2人(基礎控除4,200万円)、実家のほかに預貯金3,000万円があるケースで比べます。
| 相続前に売る | 相続後に売る(特例あり) | |
|---|---|---|
| 実家の評価 | 現金2,500万円 | 500万円 |
| 預貯金 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 課税価格 | 5,500万円 | 3,500万円 |
| 基礎控除 | −4,200万円 | −4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 1,300万円 | 0円 |
| 相続税の総額 | 約130万円 | 0円 |
相続税だけで130万円の差が出ました。さらに相続後なら空き家の3,000万円特別控除で譲渡所得税もゼロにできる可能性があります。
換価分割という選択肢
相続後に売却して代金を分ける方法です。
- 相続税の計算では不動産として評価されるので、小規模宅地等の特例が使える
- 売却後は現金なのできれいに等分できる
- 空き家の3,000万円特別控除も、要件を満たせば各人が使える
遺産分割協議書に「換価分割する」と明記し、代表者名義で登記してから売るのか、共有名義で登記して売るのかを決めます。前者のほうが手続きは簡単ですが、書き方を誤ると代表者から他の相続人への贈与とみなされるおそれがあるため、司法書士に文言を確認してもらってください。
判断の順番

上から順に確認してください。
1. 親の判断能力に不安はあるか
不安があるなら、税金の議論より先に動く必要があります。認知症が進めば売却そのものができなくなります。
2. 親はその家に住んでいるか/住まなくなって3年以内か
該当するなら、マイホームの3,000万円控除が使えます。相続前の売却が有力です。
3. 相続税がかかりそうか
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えそうなら、小規模宅地等の特例の効果が大きいので、相続後が有利になりやすい。ただし納税資金の確保を並行して考えます。
4. 家は昭和56年5月31日以前の建築か
該当し、かつ親が一人で住んでいたなら、空き家の3,000万円特別控除が使えます。相続後が有利です。
5. 現況と更地の査定額はいくらか
ここまでの判断は、金額が分からないと机上の空論です。相続前でも相続後でも、まず査定を取ってください。査定の取り方は相続した実家におすすめの不動産一括査定サービス比較にまとめています。
認知症になる前にできる備え
「相続前が有利なケース」の多くは、時間との勝負です。親の判断能力が失われる前に手を打てるかどうかで、選択肢がまるごと変わります。
判断能力を失うとどうなるか
| できなくなること | 影響 |
|---|---|
| 不動産の売買契約 | 実家が売れなくなる |
| 預貯金の引き出し | 施設費用の支払いに支障 |
| 遺言書の作成 | 争いの予防ができない |
| 生前贈与 | 相続対策の手段が消える |
| 賃貸借契約 | 貸すこともできない |
「子が代わりにやればいい」とはなりません。親名義の財産を子が動かす権限はないからです。
成年後見制度を使うとどうなるか
家庭裁判所に申し立て、後見人を選任してもらいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立てから選任まで | 1〜3か月 |
| 申立て費用 | 1万円前後+医師の鑑定費用(10万〜20万円かかることも) |
| 後見人 | 親族が選ばれるとは限らない(第三者が約8割 |
| 報酬 | 第三者なら月2万〜6万円、親が亡くなるまで継続 |
| 居住用不動産の売却 | 家庭裁判所の許可が別途必要 |
| 途中でやめられるか | 原則できない |
10年続けば、報酬だけで300万〜700万円になります。「必要になってから考える」では遅い制度です。
元気なうちに使える3つの手段
1. 家族信託(民事信託)
親が元気なうちに、財産の管理権限を子に移しておく契約です。実家を信託しておけば、親が認知症になっても子の判断で売却できます。
- 費用は財産額の1〜2%程度(実家1,500万円なら30万〜50万円が目安)
- 公正証書で契約し、信託登記をする
- 司法書士・弁護士に依頼するのが一般的
初期費用はかかりますが、成年後見の月額報酬と比べれば安く済むことが多い選択肢です。
2. 任意後見契約
「判断能力が落ちたら、この人に後見人になってほしい」と、元気なうちに自分で決めておく契約です。公正証書で結びます。
法定後見と違い後見人を自分で選べるのが利点ですが、実際に効力が生じるときは家庭裁判所が監督人を選任し、その報酬(月1万〜3万円程度)がかかります。
3. 委任状と代理権の整理
売却の意思がはっきりしているなら、元気なうちに委任状を作っておく方法もあります。ただし本人が判断能力を失えば委任は効力を失うため、あくまで短期の手段です。
売却にかかる費用と手取りの計算
タイミングの比較をするには、税金以外の費用も入れなければ意味がありません。
共通してかかる費用
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円+消費税が上限 |
| 印紙税 | 1万円(1,000万円超5,000万円以下) |
| 登記費用(抵当権抹消など) | 1万〜3万円 |
| 測量費(境界確定が必要な場合) | 30万〜80万円 |
| 建物の解体費(更地で売る場合) | 100万〜200万円(木造30坪) |
| 遺品整理・家財処分 | 10万〜50万円 |
| ハウスクリーニング | 5万〜15万円 |
相続後だけにかかる費用
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 相続登記の登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 司法書士報酬(相続登記) | 5万〜15万円 |
| 戸籍収集の実費 | 5,000円〜1万円 |
手取りの計算式
手取り = 売却価格 −(仲介手数料+印紙税+登記費用+測量費+解体費+遺品整理費)− 譲渡所得税・住民税
相続前と相続後で変わるのは、主に「譲渡所得税」と「相続登記費用」です。それ以外は同じようにかかります。
実家じまい全体の費用感
売却だけを見ていると見落としますが、実家を手放すまでには次の費用がまとまってかかります。
- 遺品整理:10万〜50万円(遺品整理業者の費用相場)
- 解体(更地にする場合):100万〜200万円(実家の解体費用)
- 相続税の税理士報酬(かかる場合):遺産総額の0.5〜1.0%(相続税の税理士費用相場)
相続前に売れば、遺品整理は親と一緒にできます。この負担軽減は金額に出にくいものの、実務上は大きな差になります。
相続前に売るときの実務
名義と意思確認
親名義の家を売るので、契約するのは親本人です。子が代理で進める場合は委任状が必要で、司法書士や不動産会社は本人の意思確認を必ず行います。
「親は施設にいるから」と子だけで話を進めようとすると、決済直前で止まります。
生前贈与という選択肢は慎重に
「先に子に贈与しておけば」と考える方がいますが、贈与税は相続税より税率が高く、多くの場合は不利です。
さらに、相続時精算課税制度を使うと2,500万円までは贈与時に課税されませんが、相続時に持ち戻して計算されるうえ、小規模宅地等の特例が使えなくなります。
不動産の生前贈与は、登録免許税と不動産取得税もかかります(相続なら不動産取得税はかかりません)。
| 相続 | 生前贈与 | |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% | 同2.0% |
| 不動産取得税 | かからない | かかる(軽減あり) |
売却代金の使い道を決めておく
親名義で売れば、代金は親のものです。そのまま置いておけば相続財産になり、相続税の対象になります。
親の生活費や施設費用に充てるなら問題ありませんが、「子に渡す」なら贈与になります。何に使うかを決めてから売るのが順序です。
相続後に売るときの実務
相続登記を先に済ませる
名義が故人のままでは売買契約が結べません。買主が見つかってから登記を始めると1〜2か月止まります。
2024年4月1日から相続登記は義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。2024年3月以前に発生した相続にもさかのぼって適用され、その場合の期限は2027年3月31日です。
「何にも使わない」を守る
空き家の3,000万円特別控除を使うなら、相続時から売却時まで、事業・貸付け・居住に使ってはいけません。
- 「空けておくのはもったいないから」と1か月でも貸す → 対象外
- 「誰も住まないなら弟が使う」 → 対象外
数百万円の控除が、この判断ひとつで消えます。
小規模宅地等の特例を使うなら10か月待つ
配偶者以外が取得する場合、申告期限(10か月)まで保有する必要があります。相続後すぐに売ると特例が使えません。
一方、空き家の3,000万円特別控除の期限は3年です。10か月を待ってから売却活動を始めても、3年の期限には十分間に合います。
親にどう切り出すか
税制の話より難しいのがここです。「実家をどうするか」は、親にとって自分の死後の話だからです。
切り出し方の失敗例
| 言い方 | なぜ失敗するか |
|---|---|
| 「相続のこと考えてる?」 | 財産目当てに聞こえる |
| 「実家、どうせ売るんでしょ」 | 決めつけられたと感じる |
| 「元気なうちに手続きしといて」 | 死を前提にされたと受け取られる |
| 「税金が大変だから」 | 子の都合の話に聞こえる |
うまくいきやすい入り方
1. 「実家をどうしたい?」から入る
相続ではなく、親自身の希望を聞く形にします。「誰かに住んでほしい」「壊してほしくない」といった思いがあることも多く、それが分かるだけでも判断材料になります。
2. 具体的な出来事をきっかけにする
- 近所の空き家が問題になった
- 親戚が相続で揉めた
- 自分が家を買った・引っ越した
- 実家の屋根や水回りが傷んできた
「うちはどうする?」と自然に続けられます。
3. 「調べておくだけ」から始める
いきなり決めようとせず、「いくらで売れるか調べるだけ調べてみない?」と提案します。査定は無料で、売る義務も発生しません。数字が出れば、親も現実的に考えやすくなります。
4. きょうだいがいるなら全員がいる場で
一人だけが親と話を進めると、後から「勝手に決めた」と言われます。盆や正月に全員が揃うタイミングは貴重です。
最低限、聞いておきたい5つ
全部を一度に決める必要はありません。次だけ分かれば十分です。
- 実家を残したい気持ちがあるか
- 権利証と購入時の売買契約書がどこにあるか
- 住宅ローンが残っていないか
- 境界の資料(測量図)があるか
- 施設に入る予定はあるか(入所日が特例の起算点になる)
2つ目はとくに重要です。購入時の契約書がないと、売却時の取得費が「売値の5%」で計算され、数百万円の差になります。
地方・築古の実家という現実
ここまで税制の話をしてきましたが、そもそも売れるのかという問題が先にある家も多くあります。
売れる条件
- 上下水道が整備されている
- 前面道路に接している(接道義務を満たす)
- 再建築が可能
- 生活圏(スーパー・病院)にアクセスできる
これらを満たしていれば、価格次第で買主は見つかります。
売りにくい条件と対処法
| 条件 | 対処法 |
|---|---|
| 再建築不可 | 隣地所有者に打診/訳あり物件専門業者 |
| 市街化調整区域 | 農家住宅の要件を満たす買主を探す |
| 接道が2m未満 | 隣地の一部購入で接道を確保できないか |
| 傾斜地・擁壁あり | 擁壁の安全性を示す資料を用意 |
| 共有名義で意見が割れる | 持分売却専門/共有物分割請求 |
「売れない」と決めつける前に、その物件を扱える業者に当たっているかを確認してください。一般の一括査定で断られても、専門業者なら値がつくことがあります。
税制の議論が意味を持たない場合
譲渡益が出なければ、譲渡所得税はそもそもゼロです。3,000万円控除も取得費加算も関係ありません。
地方の築古住宅で、売却価格が500万円、概算取得費25万円、譲渡費用80万円なら、譲渡所得は395万円。特例を使えばゼロですが、使わなくても税額は約80万円です。この規模だと、タイミングより「売れるかどうか」のほうが100倍重要です。
一方で、相続税がかかる家庭や都市部の実家では、タイミングの違いが数百万円になります。自分がどちらの世界にいるかを、まず査定で確かめてください。
売れない場合の最後の選択肢
- 空き家バンク……自治体が運営。仲介手数料が安く済むことも
- 隣地所有者への直接打診……土地を広げたい隣人は有力な買主候補
- 買取業者……仲介より2〜3割安いが、残置物ごと引き取ることが多い
- 相続土地国庫帰属制度……2023年4月開始。要件は厳しく、負担金(10年分の管理費相当)が必要
きょうだいが複数いる場合

実家が主な財産で相続人が複数いる——実務でもっとも揉めるパターンです。
相続前なら決めるのは親
相続前の売却では、契約するのは親本人です。きょうだいの同意は法律上は不要です。
ただし後から「勝手に売った」と言われないよう、事前に共有しておくべきです。売却代金の使い道(親の生活費・施設費用など)も含めて説明しておくと、無用な疑念を防げます。
相続後は全員の合意が必要
遺産分割には相続人全員の同意が必要です。一人でも反対すれば売却できません。
そして特例には期限があります。話し合いが長引くうちに3年が過ぎ、全員が3,000万円の控除を失うというのが最悪の展開です。
分け方4パターンの比較
| 分け方 | 内容 | 税制上の扱い |
|---|---|---|
| 換価分割 | 売って代金を分ける | 小規模宅地等の特例も空き家特例も使える |
| 代償分割 | 一人が取り、他に現金を渡す | 取得者に現金の用意が必要。控除は一人分 |
| 現物分割 | 不動産はA、預貯金はBと分ける | 金額差が出やすい |
| 共有 | 持分を分けて共有 | 将来の売却で全員の同意が要る |
実家じまいの文脈でおすすめしにくいのが共有です。その場は平等に見えますが、売るときに全員の同意が必要になり、相続人の誰かが亡くなればさらに人数が増えます。
なお、空き家の3,000万円特別控除は共有者それぞれが適用を受けられますが、2024年1月1日以降の譲渡では、相続人が3人以上の場合、1人あたり2,000万円に縮減されます。また売却代金1億円以下という要件は、共有者全員の合計で判定されるので注意してください。
よくある失敗パターン

1. 親が認知症になってから相談に来る
もっとも多く、もっとも取り返しがつきません。成年後見人の選任と家庭裁判所の許可で、半年以上動けなくなります。
2. 施設入所から3年を過ぎてから売る
マイホームの3,000万円控除が失効します。入所した日をメモしておいてください。
3. 相続後すぐに売って小規模宅地等の特例を失う
配偶者以外が取得した場合、申告期限まで保有が必要です。「早く現金化したい」で数百万円損をします。
4. 空き家を一時的に貸してしまう
空き家の3,000万円特別控除が使えなくなります。
5. 生前贈与で先に名義を移す
贈与税・不動産取得税・登録免許税が余計にかかり、小規模宅地等の特例も使えなくなることがあります。
6. 査定を取らずに判断する
いくらで売れるかが分からなければ、税金の比較そのものが成立しません。

相続後に売る場合のスケジュール

相続後を選ぶなら、3つの期限を同時に管理することになります。
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 10か月 | 相続税の申告・納付。小規模宅地等の特例を使うなら保有継続が必要 |
| 3年 | 相続登記の義務。空き家の3,000万円特別控除の売却期限(正確には3年経過日の属する年の12月31日) |
| 3年10か月 | 取得費加算の特例 |
| 2027年12月31日 | 空き家特例の制度自体の期限 |
逆算するとこうなる
| 経過 | やること | 所要 |
|---|---|---|
| 0〜3か月 | 相続放棄の判断/相続人と方針の合意 | 1〜3か月 |
| 3〜6か月 | 相続登記(司法書士に依頼) | 1〜2か月 |
| 6〜10か月 | 相続税の申告・納付 | — |
| 10か月経過後 | 小規模宅地等の特例を使ったなら、ここまで保有 | — |
| 10〜14か月 | 遺品整理、現況・更地の査定 | 1〜3か月 |
| 14〜18か月 | 媒介契約・販売開始 | — |
| 18〜30か月 | 売却活動 | 3〜12か月 |
| 30〜33か月 | 売買契約・決済・引渡し | 1〜2か月 |
| 33〜36か月 | 買主による取壊し・滅失登記 | 1〜2か月 |
動き出せるタイムリミットは、相続から2年と考えてください。地方の築古住宅では売却活動だけで半年から1年かかることも珍しくありません。
小規模宅地等の特例と空き家特例の両立
配偶者以外が実家を取得して小規模宅地等の特例を使う場合、申告期限(10か月)まで保有する必要があります。
一方、空き家の3,000万円特別控除の期限は3年です。10か月を待ってから売却活動を始めても、3年には十分間に合います。焦って10か月以内に売ると、相続税の特例を失うので注意してください。
ただし2025年以降に相続が発生した方は、制度自体の期限(2027年12月31日)のほうが先に来るケースがあります。個別の3年と制度の期限、早く来るほうが効きます。
住宅ローンが残っているとき
親名義の家にローンが残っている場合、扱いが変わります。
団体信用生命保険を確認する
住宅ローンを組むときに団信に加入していれば、債務者が亡くなった時点でローンは完済されます。相続人が返済を引き継ぐ必要はありません。
まず金融機関に連絡し、団信の加入状況を確認してください。加入していれば、死亡診断書などを提出して手続きすると、抵当権の抹消まで進みます。
団信に入っていない場合
ローンはマイナスの財産として相続されます。
- 相続放棄すればローンも引き継がないが、実家も含めて一切引き継げない
- 相続するなら、返済を続けるか、売って一括返済する
売却代金でローンを完済できるかが分かれ目です。売っても返しきれない(オーバーローン)場合は、任意売却という手続きになります。
相続前に売る場合
ローンが残っていても売れますが、決済と同時に完済して抵当権を抹消するのが条件です。売却代金で完済できない場合、差額を用意するか、金融機関と協議することになります。
相続税の計算では、債務は課税価格から差し引けます(債務控除)。ローンが残っている状態で相続したほうが、相続税は下がります。
生前贈与の落とし穴
「相続前に子へ贈与しておけば」と考える方は多いのですが、不動産の生前贈与は多くの場合で不利です。
税率が高い
| 課税価格 | 贈与税率(一般) | 相続税率 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 30〜40% | 10〜15% |
| 3,000万円以下 | 45〜50% | 15〜20% |
贈与税は相続税より税率が高く設定されています。これは、生前贈与で相続税を回避することを防ぐためです。
諸費用も高い
| 相続 | 生前贈与 | |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% | 同2.0%(5倍) |
| 不動産取得税 | かからない | かかる(軽減措置あり) |
固定資産税評価額1,000万円の実家なら、登録免許税だけで4万円と20万円の差になります。
相続時精算課税の注意点
2,500万円まで贈与時に課税されない制度ですが、相続時に持ち戻して計算されます。単純に非課税になるわけではありません。
さらに重要なのが、この制度で取得した宅地には小規模宅地等の特例が使えないことです。実家のように評価額の大きい不動産では、80%減額を失う影響のほうが大きくなります。
2024年からは年110万円の基礎控除が新設され使いやすくなりましたが、不動産をこの制度で贈与するのは慎重に判断してください。
配偶者への贈与は例外
婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、2,000万円まで贈与税がかからない特例があります(贈与税の配偶者控除)。ただしこれは親から子への贈与では使えません。
税務署に指摘されやすいところ
概算取得費の推定計算
購入時の契約書がない場合、市街地価格指数などを使って取得費を推定する方法があります。認められた事例も否認された事例もあり、確実ではありません。
税務署は原則として「売値の5%」を基準に見ます。推定計算を使うなら、税理士に依頼して根拠資料を揃えて申告してください。
空き家特例の「一人で住んでいた」
要件のなかでもっとも争いになりやすい部分です。
- 生活の本拠がどこにあったかで判定される
- 住民票だけの同居は問題にならない場合もあるが、自己判断は避ける
- 老人ホーム入所の場合は、要介護認定と入所前の単身居住が必要
名義預金
子や孫の名義になっているが、実質は親が管理していた預金です。相続財産に含めて申告する必要があります。
「実家を売った代金を子の口座に入れておいた」というケースは典型的で、税務調査で指摘されやすい部分です。
換価分割の登記の書き方
代表者名義で登記してから売却する場合、遺産分割協議書に換価分割である旨を明記していないと、代表者から他の相続人への贈与とみなされるおそれがあります。
査定の取り方|相続前と相続後で変わること
判断の土台になるのが査定額です。ただし、相続前と相続後では依頼の仕方が変わります。
相続前の査定
依頼できるのは所有者である親です。子が代理で問い合わせること自体は可能ですが、訪問査定の立会いや媒介契約は親本人が関わります。
- 親に事前に説明してから依頼する(いきなり業者が来ると混乱を招く)
- 「売る前提ではなく、価格を知りたいだけ」と伝えておく
- 訪問査定の日程は、親の体調が良い時間帯に
相続後の査定
相続登記が済んでいなくても査定は取れます。ただし売却活動に入るには登記が必要です。
- 相続人が複数なら、全員に査定結果を共有する
- 「現況(古家付き)」と「更地」の両方の価格を必ずもらう
- 解体を買主に任せる前提でも売れるか、あわせて聞く
共通して押さえること
必ず現況と更地の両方を出してもらうのが最重要です。空き家の3,000万円特別控除を使うには耐震改修か取壊しが必要ですが、2024年の改正で買主に解体してもらう形も認められたため、選択肢が増えています。どちらが手取りで多いかは、2つの数字がないと比べられません。
査定額の読み方(飛び抜けて高い会社をどう見るか)や、営業電話を減らす方法は相続した実家におすすめの不動産一括査定サービス比較にまとめています。
待つあいだにかかる維持費
「相続後まで待つ」を選んだ場合、その期間の保有コストも計算に入れる必要があります。空き家は持っているだけでお金が出ていきます。
| 項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 5万〜15万円 |
| 火災保険(空き家は割高) | 2万〜5万円 |
| 電気・水道の基本料金 | 1万〜2万円 |
| 庭木の剪定・草刈り(年2回) | 3万〜8万円 |
| 空き家管理サービス(遠方の場合) | 6万〜12万円 |
| 交通費(月1回帰省する場合) | 3万〜20万円 |
| 合計 | 20万〜60万円 |
3年待てば60万〜180万円です。空き家の3,000万円特別控除で数百万円が浮くなら十分に見合いますが、そもそも譲渡益が出ない家なら、待つ意味はありません。
特定空家に指定されると跳ね上がる
管理が不十分な状態が続き、特定空家または管理不全空家に指定されて勧告を受けると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍になります。
- 200㎡以下の部分:課税標準が1/6 → 1/1
- 都市計画税も1/3 → 1/1
年間の税額が5万円だった土地が、30万円になることもあります。空き家を放置するリスクは実家を空き家のまま放置する5大リスクで詳しく解説しています。
「待つ」と「動く」の分岐点
待つ価値がある = (節税額)>(維持費 × 待つ年数)+(劣化による値下がり)
節税額が300万円で、維持費が年40万円、2年待つなら80万円。差し引き220万円のプラスなので待つ価値があります。
一方、節税額が50万円しかないのに3年待てば、維持費だけで120万円。待つほど損をします。この場合は税制を無視して早く売るのが正解です。
判断に迷ったときの原則
ここまで条件を細かく見てきましたが、迷ったときは次の3つで決めてください。
1. 時間が関わるものを優先する
認知症のリスク、施設入所からの3年、相続からの3年、制度自体の2027年12月31日。時間で消える選択肢は、待っても増えません。税額の最適化より優先します。
2. 金額の大きいほうを取る
税制の差が数十万円で、認知症で売れなくなるリスクが数百万円なら、迷わず時間のほうを取ります。逆に相続税が数百万円動くなら、10か月の保有を待つ価値があります。
3. 分からないものは試算してもらう
「たぶんこっちが得」で数百万円を動かさないでください。相続税の簡易試算だけなら無料で応じる税理士事務所も少なくありません。査定額と家族構成を持って相談すれば、1時間で方向性は出ます。
よくある質問
Q. 親が施設に入ってから何年経っているか分かりません。
介護保険の被保険者証や施設との契約書、入居一時金の領収書で確認できます。マイホーム特例の3年は「住まなくなった日」から数えますので、入所日ではなく実際に住まなくなった日が基準です。
Q. 親と同居しています。相続後に売るとどうなりますか?
同居していた場合、空き家の3,000万円特別控除は使えません(要件3「被相続人が一人で住んでいた」を満たさない)。ただし相続後もその家に住み続けて自分のマイホームになれば、マイホームの3,000万円控除が使える可能性があります。また小規模宅地等の特例は同居親族として使いやすくなります。
Q. 実家を売らずに貸すのはどうですか?
賃貸に出すと空き家の3,000万円特別控除は使えなくなります。また築40年超の戸建てを貸すには、水回りと屋根の改修だけで200万〜500万円かかることが珍しくありません。家賃で回収できるかを試算してから判断してください。
Q. きょうだいで意見が割れています。
相続前なら、決めるのは親本人です。相続後は相続人全員の合意が必要になります。「親が元気なうちに方向性だけ決めておく」ことが、いちばんの対立予防です。
Q. 相続前に売ると、売却代金は誰のものですか?
親のものです。子が受け取れば贈与になります。子に渡す予定があるなら、贈与税の基礎控除(年110万円)や相続時精算課税制度を含めて税理士に相談してください。
Q. 空き家特例と小規模宅地等の特例は両方使えますか?
使えます。この2つは別の税金(前者は譲渡所得税、後者は相続税)に対する特例なので、要件を満たせば両方の適用を受けられます。ただし小規模宅地等の特例には申告期限までの保有要件があるため、売却の時期に注意が必要です。
Q. 親が「売りたくない」と言っています。
無理に進めても契約はできません(本人の意思が必要)。まずは「調べるだけ」に留めてください。査定を取り、現況と更地の価格、維持にかかる費用、空き家になった場合のリスクを数字で共有します。判断材料が揃うと、考えが変わることもあります。それでも売らないと決まったなら、誰が管理を引き継ぐのかを決めておくほうが建設的です。
Q. 相続前に売ると、親の医療費や介護費の負担が増えますか?
増える可能性があります。譲渡所得は分離課税ですが、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料の算定や、医療費の窓口負担割合の判定には反映されます。年金生活の親が数千万円の譲渡益を得ると、翌年の負担が跳ね上がることがあります。ただしマイホームの3,000万円控除で課税譲渡所得がゼロになれば、保険料への影響も生じません。売却前に市区町村の窓口で見込みを確認してください。
Q. 実家に私の家族が住んでいます。売る場合はどうなりますか?
親名義の家に子世帯が住んでいる場合、相続後に売るなら空き家の3,000万円特別控除は使えません(要件3・4を満たさない)。一方、相続してその家に住み続ければ小規模宅地等の特例(同居親族)が使いやすく、将来売るときはマイホームの3,000万円控除が使えます。この構成なら、相続後にそのまま住んでから売るのが有利になりやすいパターンです。
Q. 親が2つ以上の不動産を持っています。
小規模宅地等の特例が使えるのは、被相続人が住んでいた宅地が中心です(特定居住用宅地等)。複数の家がある場合、生活の本拠だった1か所が対象になります。貸家や事業用の土地には別の枠(貸付事業用・特定事業用)があり、併用には限度面積の調整が必要です。資産が複数あるなら、早い段階で税理士に全体を見てもらってください。
Q. どのタイミングで専門家に相談すればいいですか?
親が元気なうちの段階で一度。判断材料が揃っていない段階でも、「うちはどのケースに当てはまるか」だけ確認しておけば、いざというときに動けます。税理士費用の相場は相続税の税理士費用相場を参考にしてください。
ケース別の早見表
自分がどこに当てはまるかを確認してください。
| 状況 | 有利なタイミング | 使う特例 |
|---|---|---|
| 親が実家に住んでいる | 相続前 | マイホーム3,000万円控除+10年超の軽減税率 |
| 施設入所から3年以内 | 相続前も可 | マイホーム3,000万円控除 |
| 施設入所から3年超・相続税なし・昭和56年5月以前築 | 相続後 | 空き家3,000万円控除 |
| 施設入所から3年超・相続税なし・昭和56年6月以降築 | 相続後 | 特例なし。譲渡益が出るかを先に確認 |
| 相続税がかかる・納税資金あり | 相続後 | 小規模宅地等の特例+空き家3,000万円控除 |
| 相続税がかかる・納税資金が不足 | 相続前も検討 | マイホーム特例が使えるか要確認 |
| 子世帯が同居している | 相続後(住み続ける) | 小規模宅地等の特例(同居親族)→将来マイホーム特例 |
| 親の判断能力に不安がある | 時間優先で相続前 | 家族信託の検討も |
該当する行が複数ある場合は、上の行ほど優先度が高いと考えてください。時間で消える選択肢が上に来るよう並べています。
まとめ
実家を売るタイミングの判断は、次の順番で考えてください。
- 親の判断能力に不安があるなら、税金より先に動く。認知症が進めば売却自体ができなくなる
- 親が住んでいる、または住まなくなって3年以内なら、マイホームの3,000万円控除が使える
- 親が施設で3年を過ぎ、相続税もかからないなら、相続後が明確に有利
- 相続税がかかるなら小規模宅地等の特例の効果が大きいが、10か月の納税資金を確保できるかを確認する
- 昭和56年5月31日以前の建築で、親が一人で住んでいたなら、相続後に空き家の3,000万円特別控除が使える
そして、どちらを選ぶにしても最初にやることは同じです。現況と更地の両方で査定を取り、いくらになるのかをはっきりさせること。金額が分からないままでは、税金の比較も家族の話し合いも前に進みません。
この記事について
執筆:葉山 湊(はやま みなと)
自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。税理士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。制度や税金については、必ず一次情報(国税庁・法務省・各自治体)にあたって記事に反映しています。
本記事の主な出典は次のとおりです。
・マイホームを売ったときの特例:国税庁 No.3302
・空き家の3,000万円特別控除:国税庁 No.3306
・小規模宅地等の特例:国税庁 No.4124
・相続登記の義務化:法務省「相続登記の申請義務化について」
制度・税制は改正されます。本記事の内容は2026年9月3日時点の公表情報にもとづきます。 実際の判断は、税理士・司法書士・不動産会社など専門家にご確認ください。当サイトは個別の税務相談・法律相談には応じられません。


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