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孤独死の特殊清掃費用はいくら?平均29万円・最大425万円の実データと負担者

カーテンを閉めた薄暗い部屋の窓 遺品整理・特殊清掃
本記事にはプロモーションが含まれます。

ひとり暮らしの親が自宅で亡くなり、発見までに時間が経っていた——このとき最初に直面するのが、特殊清掃の費用です。

インターネット上には「20万円から」「50万円程度」といった数字が並んでいますが、その根拠が示されていることはほとんどありません。

この記事では、日本少額短期保険協会が2015年から10年間の保険金支払データを集計した「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月公表)の数値をもとに、実際にいくらかかっているのかを示します。平均額だけでなく、最大額と最小額まで含めて扱います。

そのうえで、賃貸と持ち家で誰が何を負担するのか、そして親が自宅で亡くなった実家は「事故物件」になるのかという、費用の次に多い疑問にも、国土交通省のガイドラインを根拠に答えます。

みどりみどり
父が自宅で亡くなって、発見まで2週間ほどかかりました。清掃の見積もりが80万円と言われて…。
たくみ先生たくみ先生
まず、その金額が相場から外れているかどうかを判断する材料を持ちましょう。実際のデータがあります。

古い日本家屋の玄関
  1. 前提|孤立死は年間2万2千人
  2. 結論|費用は3つに分かれる
  3. 実データで見る「本当の金額」
    1. 遺品整理(残置物処理)費用
    2. 原状回復費用
    3. 2024年度の単年データでは上がっている
  4. 発見までの日数が費用を決める
    1. なぜ日数で費用が変わるのか
    2. 男女差と年齢
  5. ケース別のシミュレーション
    1. ケースA|3日以内に発見/汚損なし
    2. ケースB|2週間後に発見/床材まで汚損
    3. ケースC|2か月後に発見/下地・壁まで浸透
  6. 実家(持ち家)と賃貸では何が違うか
    1. 持ち家なら「どこまでやるか」を選べる
  7. 誰が費用を払うのか
    1. 実家(持ち家)の場合
    2. 賃貸の場合
    3. 相続放棄をした場合
  8. 賃貸の場合|原状回復はどこまで負担するか
    1. 経年劣化・通常損耗は借主の負担ではない
    2. 減価償却の考え方
    3. 交渉の手順
    4. 家賃の減額請求について
  9. 実家は「事故物件」になるのか
    1. 告げなくてもよい場合
    2. ただし、特殊清掃をすると扱いが変わる
    3. 売買には「3年で消える」ルールがない
    4. 告げる場合に伝える内容
    5. 解体して更地にした場合は
  10. 特殊清掃をした実家をどう売るか
    1. 仲介を選ぶ場合
    2. 買取を選ぶ場合
    3. 解体して土地として売る
  11. 特殊清掃の作業内容と費用の内訳
    1. 見積書で確認する3点
  12. 費用を抑える5つの方法
    1. 1|出口を先に決める
    2. 2|相見積もりを3社取る
    3. 3|遺品整理と分けて考える
    4. 4|火災保険を確認する
    5. 5|自治体の補助を確認する
  13. 臭いが取れないときにどうするか
    1. なぜ戻るのか
    2. 段階を追って対処する
    3. 契約前に決めておくこと
    4. 売却前提なら、時間を置いて確認する
  14. 特殊清掃業者の選び方
    1. 確認する6つのこと
    2. 廃棄物の許可は必ず確認する
    3. 避けたほうがよい業者
    4. 資格について
  15. 孤独死保険という選択肢
  16. 近隣への対応と、次の備え
    1. 臭気の苦情が来ている場合
    2. 残された家族が別の実家を抱えている場合
    3. 予防|見守りの選択肢
  17. 特殊清掃費用は税金で控除できるか
    1. 相続税の債務控除にはならない
    2. 葬式費用にも該当しない
    3. 譲渡所得の計算では扱いが分かれる
  18. 費用が払えないときの選択肢
    1. 1|相続財産から支払う
    2. 2|売却代金から精算する
    3. 3|作業範囲を絞る
    4. 4|相続放棄を検討する
    5. 5|自治体に相談する
  19. 発見から片付けまでの流れ
  20. よくある失敗
    1. 失敗1|1社の見積もりで即決した
    2. 失敗2|相続放棄の可能性を考えずに発注した
    3. 失敗3|出口を決めずに内装まで直した
    4. 失敗4|臭いの保証を確認しなかった
    5. 失敗5|貴重品の捜索範囲を伝えなかった
    6. 失敗6|告知の判断を業者に任せた
  21. よくある質問
    1. Q. 見積もりが80万円と言われました。高すぎますか
    2. Q. 自分で掃除することはできますか
    3. Q. 消臭にはどのくらいかかりますか
    4. Q. 遺体があった場所の床は必ず解体しますか
    5. Q. 大家から高額な請求を受けました。全額払う必要がありますか
    6. Q. 事故物件として売ると、いくら安くなりますか
    7. Q. 特殊清掃をしたことは記録に残りますか
    8. Q. 保険会社への連絡はいつすればいいですか
    9. Q. 遺品整理業者と特殊清掃業者は何が違いますか
    10. Q. 賃貸の大家から「全室リフォーム代」を請求されました
    11. Q. 作業にはどのくらいの日数がかかりますか
    12. Q. 立ち会いは必要ですか
    13. Q. 近隣に知られたくないのですが
    14. Q. 特殊清掃をしたことを買主に伝えなければ、あとで問題になりますか
    15. Q. 業者が「行政の許可を持っている」と言っています
    16. Q. 相続人が複数います。誰が業者と契約すればいいですか
    17. Q. 夏に亡くなった場合と冬では、どのくらい違いますか
    18. Q. 実家が遠方です。立ち会わずに進められますか
    19. Q. 業者に頼まず、そのまま解体してもいいですか
  22. まとめ

前提|孤立死は年間2万2千人

孤立死者数の推計

費用の話に入る前に、規模を確認しておきます。「うちだけが特別な状況」ではありません。

内閣府の孤独・孤立対策推進室は、警察が取り扱った死体のうち「自宅において死亡した一人暮らしの者」をもとに、孤立死者数を推計しています。

区分 令和7年の推計
死後8日以上経過して発見(孤立死の推計値) 22,222人
うち男性 17,620人(79.3%)
うち女性 4,598人
【参考】死後4日以上 32,678人

(出典:内閣府「令和7年孤立死者数の推計について」令和8年4月14日)

年齢別に見ると、次のようになります。

年齢 人数
50代 2,741人
60代 5,581人
70代 8,376人
80歳以上 4,362人
65歳未満の合計 6,178人

最も多いのは75〜79歳(4,329人)ですが、65歳未満も6,178人おり、全体の3割近くを占めます。「高齢者だけの問題」ではないことがわかります。


結論|費用は3つに分かれる

孤独死で発生する3つの費用

孤独死のあとにかかる費用は、性質の違う3つに分けて考えます。これを混ぜて見積もると、金額の妥当性が判断できなくなります。

費用の種類 内容 平均損害額
遺品整理(残置物処理) 家財・遺品の撤去と処分 294,131円
原状回復 特殊清掃、消臭・消毒、床や壁の解体・張り替え 494,344円
家賃保証 賃貸で貸せない期間の家賃補填 337,035円

(出典:日本少額短期保険協会「第10回 孤独死現状レポート」2025年12月/2015年4月〜2025年3月の累積データ)

3つを合計すると平均で約112万円ですが、家賃保証は賃貸物件だけの費用です。持ち家である実家の場合、発生するのは上の2つで、平均は合計約79万円になります。


実データで見る「本当の金額」

孤独死の費用の平均額と最大額

平均だけを見ると実態を見誤ります。この分野は、ばらつきが極端に大きいのが特徴です。

遺品整理(残置物処理)費用

項目 金額
平均損害額 294,131円
最大損害額 4,253,473円
最小損害額 1,080円

原状回復費用

項目 金額
平均損害額 494,344円
最大損害額 7,564,673円
最小損害額 422円

最大額は原状回復で756万円、遺品整理で425万円です。平均の15倍近い金額が実際に発生しているということです。

一方で最小額は数百円から数千円です。これは、発見が早く、汚損がほとんどなかったケースだと考えられます。

みどりみどり
同じ「孤独死」でも、こんなに違うのですか。
たくみ先生たくみ先生
違いを生む最大の要因は、発見までの日数です。次に見ていきましょう。

2024年度の単年データでは上がっている

同レポートには、直近1年(2024年度)だけを切り出した数値も載っています。

費用 累積(10年) 2024年度単年
遺品整理(残置物処理) 294,131円 266,265円
原状回復 494,344円 610,507円
家賃保証 337,035円 389,706円

原状回復費用が49.4万円から61.0万円へ、23%上がっています。レポートはこれを物価高騰による材料費・工費の影響としています。

つまり、数年前の記事に書かれている相場は、いま見積もりを取ると通用しない可能性があるということです。


発見までの日数が費用を決める

発見までの日数の分布

同レポートによれば、孤独死の発生から発見までの平均日数は18日(累積データ)。2024年度単年では19日でした。

分布は次のとおりです(2024年度単年データ)。

発見までの日数 割合
3日以内 37.0%
4〜14日 28.3%
15〜29日 15.4%
30〜89日 15.8%
90日以上 3.5%

3日以内に発見されるのは4割弱です。残りの6割は、遺体の状況が変化してからの発見ということになります。

なぜ日数で費用が変わるのか

経過日数 現場の状態 必要な作業
〜3日 汚損がほとんどない 通常清掃+消臭で済むことがある
4〜14日 体液の漏出、強い臭気 特殊清掃、消臭・消毒、寝具の処分
15日〜 床材への浸透、害虫の発生 床の解体・張り替え、防臭処理、害虫駆除
30日〜 下地・構造材まで浸透 下地の交換、場合により壁・天井まで

体液が床材を越えて下地に達すると、費用は一気に跳ね上がります。平均額の数倍になるのはこの段階です。

夏場は進行が早く、冬場は遅くなります。同じ2週間でも季節によって状況が変わるため、見積もりの前提として発見時期と季節を伝えてください。

男女差と年齢

参考までに、同レポートの属性データです。

項目 数値
孤独死のうち男性の割合 83.3%
死亡時の平均年齢 男性63.7歳/女性62.9歳/全体63.6歳
近親者が第一発見者となる割合 26.8%(2024年度単年)

平均年齢は63.6歳で、日本人の平均寿命より20年前後早いという結果です。「高齢者の問題」と考えられがちですが、実際には60代前半に集中しています。


ケース別のシミュレーション

ケース別の費用シミュレーション

実際にいくらになるのか、3つのケースで積み上げてみます。いずれも持ち家(実家)で、売却を予定している前提です。

ケースA|3日以内に発見/汚損なし

項目 金額
通常清掃・消臭 5万円
遺品整理(2DK) 20万円
合計 25万円

体液の漏出がなければ、特殊清掃は不要です。この段階なら、通常のハウスクリーニングと遺品整理で済みます。

ケースB|2週間後に発見/床材まで汚損

項目 金額
汚染物の除去 10万円
消臭・消毒(オゾン脱臭を含む) 12万円
害虫駆除 3万円
床材の解体・撤去 12万円
遺品整理(2DK) 25万円
合計 62万円

原状回復費用の平均損害額(49.4万円)に近い水準です。買取業者に売るなら、ここまでで足ります。

ケースC|2か月後に発見/下地・壁まで浸透

項目 金額
汚染物の除去 20万円
消臭・消毒(複数回) 20万円
害虫駆除 5万円
床の解体(下地まで) 25万円
壁・天井の一部解体 20万円
遺品整理(2DK) 30万円
合計 120万円

2か月経過すると、平均額の2倍以上になります。ここまで来ると、建物を解体して土地として売るほうが安く済むことも出てきます。

みどりみどり
2週間で62万円…見積もりの80万円は高いということでしょうか。
たくみ先生たくみ先生
汚損の範囲によります。壁まで及んでいれば80万円は妥当な水準です。「どこまで汚損しているか」を業者に説明してもらってください。

実家(持ち家)と賃貸では何が違うか

持ち家と賃貸の費用負担の違い

ネット上の記事の多くは賃貸物件を前提に書かれています。孤独死保険のデータも賃貸住宅が対象です。

しかし、実家で親が亡くなった場合は前提が変わります

項目 賃貸 持ち家(実家)
家賃保証 発生する 発生しない
原状回復の相手 大家に対する義務 自分のための判断
損害賠償 大家から請求される可能性 なし
期限 明渡しまでに急ぐ 急ぐ必要はない
最終的な出口 部屋を返す 売る・貸す・解体する

持ち家なら「どこまでやるか」を選べる

賃貸では原状回復が義務ですが、持ち家では「どこまで直すか」を自分で決められます。ここが決定的な違いです。

出口 必要な清掃レベル
解体して更地にする 臭気を止める最低限の処理のみ
現況のまま売る(買取) 特殊清掃まで。内装の復旧は不要なことが多い
リフォームして売る 特殊清掃+内装の復旧
自分や親族が住む 完全な復旧

解体する予定なら、内装をきれいに直す費用は無駄になります。まず出口を決めてから、必要な範囲の見積もりを取ってください。

みどりみどり
売るつもりですが、その場合はどこまでやればいいのでしょう。
たくみ先生たくみ先生
買取業者に売るなら、臭気を止める処理までで足りることが多いです。一方、一般の買主を探すなら内装の復旧が要ります。どちらで売るかを先に決めましょう。

解体を選ぶ場合の費用は実家の解体費用はいくら?に、売却時の税金は相続した実家の売却にかかる税金にまとめています。


誰が費用を払うのか

費用を負担する人の判定

これは状況によって変わります。

実家(持ち家)の場合

相続人が負担します。建物も費用も、相続財産と相続債務として引き継ぎます。

相続人が複数いる場合、法定相続分に応じて負担するのが原則ですが、実務では立て替えた人が後で精算する形が多くなります。領収書は必ず保管してください。

賃貸の場合

順番に見ていきます。

負担者 根拠
相続人 借主の原状回復義務を相続する
連帯保証人 契約上の保証債務
大家 上記から回収できない場合
保険 孤独死保険(大家型・入居者型)

賃貸で亡くなった場合、原状回復義務は相続人が引き継ぎます。大家から請求が来るのはこのためです。

相続放棄をした場合

相続放棄をすれば、原状回復費用の支払い義務は負いません。

ただし注意点があります。相続放棄をしても、その財産を現に占有していた場合は、相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります(民法940条)。実家に立ち入って荷物を持ち出すと、相続を承認したとみなされる可能性もあります。

相続放棄を検討するなら、清掃業者に発注する前に司法書士や弁護士に相談してください。発注した時点で法定単純承認とみなされるリスクがあります。

判断の期限は3か月です。手続きの順番は親が死んだらやること順番を参照してください。


賃貸の場合|原状回復はどこまで負担するか

賃貸の原状回復の範囲

賃貸で親が亡くなった場合、大家から原状回復費用を請求されます。しかし請求されたものをすべて払う必要はありません。

経年劣化・通常損耗は借主の負担ではない

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化・通常損耗の修繕費用は賃料に含まれるという考え方が示されています。孤独死のケースでも、この原則は変わりません。

費用 負担者
体液による床材の汚損 借主(相続人)
汚損部分の消臭・消毒 借主(相続人)
もともと古かった壁紙の全面張り替え 大家
経年劣化した設備の交換 大家
ハウスクリーニング(通常の範囲) 契約による

「この機会に全室リフォーム」という請求が来ることがありますが、汚損と関係のない部分まで負担する義務はありません。

減価償却の考え方

クロスや床材には、耐用年数に応じた減価償却の考え方があります。ガイドラインでは、経過年数に応じて借主の負担割合が下がるとされています。

築20年の物件で全面張り替えを請求された場合、その全額を負担するのは合理的ではありません。

交渉の手順

  1. 内訳書の提出を求める:「一式」では判断できません
  2. 入居時の状態がわかる資料を探す:入居時のチェックシート、写真
  3. 汚損部分と、それ以外を分ける
  4. 納得できなければ相談する:消費生活センター、法テラス

孤独死の場合、感情的に「全部払うしかない」と考えてしまいがちですが、法的にはそうではありません。

家賃の減額請求について

大家から「次の入居者が決まるまでの家賃」を請求されることがあります。裁判例では、空室期間の全額ではなく、一定期間に限って認められる傾向にあります。

金額が大きい場合は、支払う前に弁護士に相談してください。


実家は「事故物件」になるのか

人の死の告知義務のルール

費用の次に多い質問です。国土交通省が2021年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に、判断の基準が示されています。

告げなくてもよい場合

ガイドラインは、次の3つを「宅地建物取引業者が告げなくてもよい場合」としています。

① 自然死または日常生活の中での不慮の死

老衰、持病による病死などの自然死は、賃貸・売買いずれの取引でも原則として告げなくてよいとされています。自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒、食事中の誤嚥といった日常生活の中の不慮の事故死も同じ扱いです。

② 賃貸借取引で、①以外の死または特殊清掃等が行われた①の死の発覚から概ね3年が経過した場合

③ 隣接住戸や、日常的に通常使用しない共用部分で発生した場合

ただし、特殊清掃をすると扱いが変わる

ここが重要です。ガイドラインには次の記載があります。

自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある

つまり、病死であっても、発見が遅れて特殊清掃をした場合は、告知が必要になる可能性があるということです。

売買には「3年で消える」ルールがない

見落とされやすい点です。

取引 期間による免除
賃貸借 概ね3年経過で原則不要
売買 期間による免除の定めがない

3年経てば告げなくてよいのは賃貸借取引だけで、売買にはこの規定がありません。実家を売る場合、期間の経過だけを理由に告知を省くことはできないと考えてください。

告げる場合に伝える内容

告げるもの 告げなくてよいもの
発生時期(特殊清掃の場合は発覚時期) 氏名
場所 年齢・住所
死因(不明ならその旨) 家族構成
特殊清掃等が行われた旨 具体的な死の態様、発見状況

亡くなった方や遺族の名誉と生活の平穏に配慮することが、ガイドラインに明記されています。

解体して更地にした場合は

ガイドラインは、「人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱い」は、裁判例や取引実務の蓄積がないため対象としていないと明記しています。

「解体すれば告知不要になる」と説明する業者がいますが、国のガイドラインはそこまで言っていません。判断が定まっていない領域だと理解したうえで、不動産会社と相談してください。

みどりみどり
病死なら告知しなくていいと聞いたのですが。
たくみ先生たくみ先生
特殊清掃をしていなければ、その理解で合っています。ただし清掃をした場合は別です。そして売買には3年ルールがありません。ここを混同している説明が多いので注意してください。

特殊清掃をした実家をどう売るか

事故物件の売り方の比較

清掃が終わったあと、多くの方が売却を選びます。売り方は大きく2つです。

方法 価格 期間 告知
仲介(一般の買主を探す) 相場の7〜9割 3か月〜1年 買主に告知が必要
買取(不動産会社が直接買う) 相場の5〜7割 1週間〜1か月 業者が承知のうえで買う

仲介を選ぶ場合

価格は高くなりますが、買主に告知したうえで納得してもらう必要があります。内覧で臭いが残っていると、そこで断られます。

内装の復旧まで行い、消臭を完了させてから売り出すことになります。清掃費用を上乗せして回収できるかを、事前に不動産会社と相談してください。

買取を選ぶ場合

価格は下がりますが、清掃を最低限にとどめられるのが利点です。買取業者は再販を前提にしているため、内装の状態をあまり問いません。

「事故物件専門」を掲げる買取業者もあります。ただし買い叩かれるリスクもあるため、必ず複数社に査定を依頼してください。

解体して土地として売る

建物の傷みが激しい場合や、清掃費が100万円を超える場合は、解体も選択肢です。

ただし前述のとおり、解体後の土地取引について、国のガイドラインは判断を示していません。「更地にすれば告知不要」と断定はできない点に注意してください。

解体費用は実家の解体費用はいくら?、業者の選び方は解体業者の選び方にまとめています。

みどりみどり
買取だとどのくらい下がるのでしょう。
たくみ先生たくみ先生
実務では相場の5割から7割です。ただし清掃費を100万円かけて仲介で売るより、手取りが多くなることもあります。両方の見積もりを取って比べてください。

特殊清掃の作業内容と費用の内訳

特殊清掃の作業と費用の目安

見積書を読むために、何にいくらかかるのかを分解します。

作業 内容 費用の目安
汚染物の除去 体液・血液の除去、汚損した寝具の撤去 3万〜20万円
消臭・消毒 オゾン脱臭、薬剤散布、除菌 3万〜15万円
害虫駆除 ハエ・ウジの駆除、薬剤処理 1万〜5万円
床材の解体・撤去 畳・フローリング・下地の撤去 3万〜20万円
内装の復旧 床の張り替え、壁紙、下地補修 10万〜80万円
遺品整理 家財の分別・搬出・処分 10万〜50万円(間取りによる)
特殊資材・車両費 防護服、専用薬剤、搬出車両 2万〜10万円

間取りより「汚損の範囲」が金額を決めます。2DKでも汚損が広ければ、3LDKより高くなります。

見積書で確認する3点

  1. どこまでが含まれるか:消臭のみか、内装の復旧まで含むか
  2. 追加費用の条件:床を開けて汚損が広がっていた場合、いくら追加になるか
  3. 消臭の保証:臭いが残った場合の再施工の扱い

3つ目がとくに重要です。特殊清掃では「臭いが取れない」というトラブルが最も多く発生します。再施工の条件を契約前に書面で確認してください。


片付いた和室に差す光

費用を抑える5つの方法

特殊清掃の費用を抑える方法

1|出口を先に決める

前述のとおりです。解体するなら内装の復旧は不要で、この判断だけで数十万円変わります。

2|相見積もりを3社取る

特殊清掃は価格が不透明な分野で、同じ現場で倍以上の差が出ることがあります。1社だけの見積もりで判断しないでください。

ただし現場を見ずに電話だけで金額を出す業者は避けます。実際の汚損範囲を見なければ、正確な金額は出せません。

3|遺品整理と分けて考える

特殊清掃業者に遺品整理まで一括で頼むと割高になることがあります。汚損していない部屋の家財は、遺品整理業者のほうが安いことが多いためです。

汚染エリアだけ特殊清掃業者、それ以外は遺品整理業者、という分け方も検討してください。遺品整理の相場は遺品整理業者の費用相場にまとめています。

4|火災保険を確認する

持ち家の火災保険に汚損・破損の補償が付いていれば、対象になることがあります。「孤独死だから対象外」と決めつけず、保険会社に確認してください。

賃貸の場合は、入居者が加入していた家財保険に遺品整理費用・原状回復費用の補償が付いていることがあります。

5|自治体の補助を確認する

数は多くありませんが、特殊清掃や残置物処理に補助を出す自治体があります。空き家対策の一環として設けられている場合が多いので、市区町村の空き家担当窓口に問い合わせてください。


臭いが取れないときにどうするか

特殊清掃で最も多いトラブルが臭気の残留です。「消臭完了」と言われて引き渡されたのに、数日後に臭いが戻るというケースがあります。

なぜ戻るのか

臭気の原因物質は、床材や壁の内部に浸透しています。表面をオゾンや薬剤で処理すると一時的に消えますが、浸透した部分が残っていると、温度や湿度が上がったときに再び揮発します

夏場に引き渡され、涼しい日に問題なく見えたものが、翌週の高温で戻る、というのはこの仕組みによるものです。

段階を追って対処する

段階 対処
1 業者に連絡し、再施工を求める(保証条件を確認)
2 発生源の特定を依頼する(床下、壁内、配管)
3 汚損部分の解体・交換を検討する
4 別の業者にセカンドオピニオンを求める

表面処理を繰り返しても、発生源が残っていれば解決しません。「もう一度オゾンをかけましょう」という提案が2回続いたら、解体を含む根本対処に切り替えるべきです。

契約前に決めておくこと

  • 「消臭完了」をどう判定するか(第三者の確認、日数を置いた再確認)
  • 臭いが戻った場合の再施工の範囲と期限
  • 再施工でも解決しない場合の費用の扱い

口頭の「保証します」は当てになりません。書面に残してください。この一手間が、あとで数十万円の差になります。

売却前提なら、時間を置いて確認する

清掃完了からすぐに売り出さず、2週間から1か月ほど置いて、気温の高い日に再確認することを勧めます。

内覧で買主が臭いに気づくと、その物件はほぼ決まりません。売り出す前に自分で確認しておくほうが、結果的に早く売れます。


特殊清掃業者の選び方

特殊清掃業者を選ぶときの確認事項

特殊清掃には国家資格も業許可も存在しません。誰でも「特殊清掃業者」を名乗れます。だからこそ、確認すべき点があります。

確認する6つのこと

確認事項 見るポイント
廃棄物の許可 一般廃棄物収集運搬業の許可、または許可業者との提携
現地見積もり 電話やメールだけで金額を出していないか
見積書の内訳 「一式」ではなく作業ごとに分かれているか
追加費用の条件 どんな場合にいくら追加になるか、書面にあるか
消臭の保証 臭いが残った場合の再施工の条件
損害賠償保険 作業中の事故に対応できるか

廃棄物の許可は必ず確認する

見落とされやすい点です。家庭から出る不用品は「一般廃棄物」であり、これを運搬・処分するには市区町村の許可が必要です。

産業廃棄物の許可しか持っていない業者や、許可のない業者が回収すると、不法投棄につながり、依頼した側も責任を問われることがあります

「一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているか、または許可業者と提携しているか」を必ず確認してください。

避けたほうがよい業者

  • 現地を見ずに金額を提示する
  • 見積書が「特殊清掃一式」だけ
  • 「今日決めれば安くする」と急かす
  • 契約書を作らない
  • 廃棄物の許可について答えられない

急かす業者は、比較させないことが目的です。動転している状況につけ込む手口があることを知っておいてください。

資格について

民間資格として「事件現場特殊清掃士」などがありますが、これは業務独占資格ではありません。持っていることは判断材料の一つになりますが、それだけで信頼できるとは限りません。

実績(施工件数、写真つきの事例)と、上記6点の確認のほうが確実です。


孤独死保険という選択肢

賃貸住宅の家主・入居者向けに、「孤独死保険」と呼ばれる保険があります。今回のデータは、この保険の支払い実績を集計したものです。

タイプ 契約者 補償内容 保険料の目安
大家型 家主・管理会社 遺品整理費用、原状回復費用、家賃損失 1部屋あたり月額数百円程度
入居者型 入居者 遺品整理費用、原状回復費用、家財の損害、賠償責任 2年間で20,000円程度

(出典:日本少額短期保険協会「第10回 孤独死現状レポート」)

実家(持ち家)で親が一人暮らしをしている場合、この保険は使えません。賃貸住宅の入居者・家主向けの商品です。

持ち家で備えるなら、火災保険の汚損・破損補償の有無を確認するか、見守りサービスで発見の遅れを防ぐ方向になります。


近隣への対応と、次の備え

臭気の苦情が来ている場合

集合住宅や住宅密集地では、発見前から近隣に臭気が及んでいることがあります

この場合、清掃を急ぐ必要があります。近隣から損害賠償を請求されるケースは多くありませんが、関係が悪化すると売却時に不利になります

清掃の日程が決まったら、隣接する家に一言伝えておくと、その後の話が進めやすくなります。作業車が長時間停まることや、機材の音が出ることも合わせて伝えてください。

残された家族が別の実家を抱えている場合

親が2人とも亡くなり、実家が空き家になるケースでは、放置すると別の問題が発生します。固定資産税、管理責任、資産価値の下落です。

詳しくは実家を空き家のまま放置する6つのリスクにまとめました。

予防|見守りの選択肢

もう一方の親や、別の親族が一人暮らしをしている場合、発見の遅れを防ぐ手段があります。

方法 費用の目安 特徴
自治体の見守りサービス 無料〜数百円/月 地域包括支援センターに相談
電気・ガスの使用量による見守り 月1,000円前後 異常があれば通知が届く
センサー型の見守り機器 月2,000〜3,000円 人感センサーで生活反応を検知
民間の安否確認サービス 月1,000〜5,000円 電話や訪問による確認
新聞・宅配の配達員による見守り 無料のことが多い 自治体と提携している地域がある

「毎日連絡する」は続きません。仕組みで検知するほうが確実です。まず市区町村の高齢福祉担当か地域包括支援センターに相談してください。無料の制度があることが多くあります。


特殊清掃費用は税金で控除できるか

特殊清掃費用の税務上の扱い

数十万円から百万円単位の出費です。「相続税や譲渡所得から引けないのか」という疑問は当然出てきます。結論から整理します。

相続税の債務控除にはならない

相続税で遺産総額から差し引けるのは、被相続人が亡くなったときに現に存在した債務で、確実と認められるものです(国税庁 No.4126)。

特殊清掃費用は、亡くなった後に相続人が発生させた費用であり、被相続人の債務ではありません。したがって債務控除の対象外です。

葬式費用にも該当しない

葬式費用として控除できるものは、国税庁が次のように示しています(No.4129)。

控除できる 控除できない
火葬・埋葬・納骨の費用 香典返しの費用
遺体や遺骨の回送費用 墓地・墓石の購入費
通夜など、葬式に欠かせない費用 初七日などの法事費用
読経料などのお礼
死体の捜索、遺体・遺骨の運搬費用

特殊清掃費用はこのいずれにも該当しません。「死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用」は控除できますが、これは捜索・運搬の費用であって、居室の清掃費とは別のものです。

譲渡所得の計算では扱いが分かれる

一方、その家を売却する場合は、譲渡所得の計算で「譲渡費用」に算入できる可能性があります。

譲渡費用とは、資産を譲渡するために直接要した費用です。売却のために必要だった清掃であれば該当し得ますが、居住のための原状回復にすぎない部分は含まれないという整理になります。

費用 譲渡費用になりうるか
売却のために行った特殊清掃 該当する可能性がある
売却前提の解体費用 該当する(土地として売る場合)
遺品整理・家財処分 判断が分かれる
相続後に自分が使うための清掃 該当しない

ここは判断が分かれる領域です。金額が大きい場合は、必ず税理士に確認してください。領収書と、「売却のために行った」ことがわかる記録(契約の経緯、業者とのやりとり)を残しておくことが前提になります。

売却時の税金の全体像は相続した実家の売却にかかる税金に、申告の進め方は相続税申告は自分でできる?にまとめています。

みどりみどり
何も引けないということでしょうか。
たくみ先生たくみ先生
相続税では引けませんが、売るなら譲渡費用になる可能性があります。領収書は必ず残してください。判断は税理士に確認を。

費用が払えないときの選択肢

費用が払えない場合の対処

100万円を超える見積もりが出て、手元に資金がないというケースがあります。

1|相続財産から支払う

被相続人の預貯金がある場合、遺産分割前でも一定額を引き出せる制度があります(預貯金の払戻し制度)。

金融機関ごとに「相続開始時の預金額×3分の1×法定相続分」(1金融機関あたり150万円が上限)まで、単独で払い戻しを受けられます。

ただし払い戻しを受けると、相続を承認したとみなされる可能性があります。相続放棄を検討しているなら使えません。

2|売却代金から精算する

不動産会社によっては、清掃費用を立て替えて、売却代金から精算するという取引に応じることがあります。買取業者に多い対応です。

「現況のまま買い取る」という条件なら、清掃自体を買主側が行うため、こちらの持ち出しがゼロになることもあります。

3|作業範囲を絞る

前述のとおり、出口によって必要な清掃レベルは変わります

  • 臭気を止める処理のみ:20万〜40万円
  • 内装の復旧まで:60万〜150万円

売る予定なら、内装の復旧を買主に委ねる方向で見積もりを取り直してください。

4|相続放棄を検討する

負債のほうが大きい場合、相続放棄という選択肢があります。ただし期限は3か月で、預貯金など他のプラスの財産も一切受け取れなくなります。

そして繰り返しになりますが、放棄しても現に占有していた場合の保存義務は残ります(民法940条)。清掃を発注する前に、司法書士か弁護士に相談してください。

5|自治体に相談する

身寄りがない、または相続人全員が放棄した場合、自治体が対応するケースがあります。墓地埋葬法や行旅病人及行旅死亡人取扱法にもとづく取り扱いです。

ただし、相続人がいる場合に自治体が費用を負担することは基本的にありません。まず市区町村の福祉担当に状況を伝えて、使える制度があるかを確認してください。


発見から片付けまでの流れ

孤独死発見後の手続きの流れ
ステップ やること 注意点
1 警察へ連絡(119番/110番) 事件性の確認が終わるまで室内に入れない
2 検視・現場検証 数日かかることがある
3 遺体の引き取り、死体検案書の受領 死亡届に必要。コピーを5〜10枚取る
4 葬儀の手配 火葬許可証の取得
5 相続するかどうかの判断 清掃を発注する前に検討する
6 特殊清掃業者の選定・相見積もり 現地を見てもらう
7 特殊清掃・遺品整理の実施 貴重品の捜索範囲を事前に伝える
8 出口の実行(売却・解体・賃貸) 告知の要否を不動産会社と確認

5の順番を間違えないでください。相続放棄を考えているなら、清掃の発注前に専門家へ相談する必要があります。

なお、警察の検視が終わるまでは室内に立ち入れません。この期間も遺体の状況は進行するため、検視の完了予定を確認して、清掃業者に前もって連絡を入れておくと段取りがよくなります。


よくある失敗

孤独死対応でよくある失敗

失敗1|1社の見積もりで即決した

動転している状況で、最初に来た業者に決めてしまうケースです。相見積もりを取るだけで数十万円変わることがあります。

失敗2|相続放棄の可能性を考えずに発注した

清掃を発注すると、相続財産の処分にあたるとみなされる可能性があります。借金の有無が不明なら、先に確認してください。

失敗3|出口を決めずに内装まで直した

解体するのに壁紙を張り替えた、というケースです。数十万円がそのまま無駄になります。

失敗4|臭いの保証を確認しなかった

特殊清掃で最も多いトラブルです。「消臭完了」の基準と、再施工の条件を書面に残してください。

失敗5|貴重品の捜索範囲を伝えなかった

通帳、印鑑、権利証、保険証券が汚損物と一緒に処分されてしまうことがあります。作業前に「探してほしいもの」のリストを渡してください。

失敗6|告知の判断を業者に任せた

特殊清掃業者は告知義務の判断をする立場にありません。売却時の告知は、不動産会社と相談して決めるものです。


よくある質問

Q. 見積もりが80万円と言われました。高すぎますか

一概には言えません。原状回復費用の平均損害額は49.4万円、2024年度単年では61.0万円です。80万円は平均より高いものの、発見が2週間以上経過して床の解体が必要なら、あり得る金額です。

判断するには、内訳を確認したうえで他社の見積もりと比べてください。「一式」としか書かれていない見積書は、比較の材料になりません。

Q. 自分で掃除することはできますか

体液や血液が付着している場合は勧められません。感染症のリスクがあり、臭気も家庭用の洗剤では取れません。また、床材に浸透した体液は表面を拭いても残り、あとから臭いが戻ります。

汚損がまったくない場合(発見が早かった場合)は、通常の清掃で足りることもあります。

Q. 消臭にはどのくらいかかりますか

汚損の程度によりますが、オゾン脱臭を数日から1週間程度かけるのが一般的です。床材や下地を交換しないと臭いが取れないケースもあります。「1日で完全に消える」という説明は疑ってください。

Q. 遺体があった場所の床は必ず解体しますか

必ずではありません。発見が早く、体液が床材の表面にとどまっていれば、清掃と消毒で済むことがあります。浸透して下地に達している場合は、解体しないと臭いが残ります。

Q. 大家から高額な請求を受けました。全額払う必要がありますか

内容によります。原状回復義務の範囲は、経年劣化や通常損耗の部分を含みません。孤独死による汚損部分と、もともと古かった部分を分けて考える必要があります。

金額に納得できない場合は、内訳の提示を求めたうえで、消費生活センターや弁護士に相談してください。

Q. 事故物件として売ると、いくら安くなりますか

明確な相場はありませんが、実務では1割から3割程度の減額を求められることが多いようです。買取業者に売る場合はさらに下がりますが、告知や販売活動の手間がなくなります。

複数社の査定を取って比べるのが確実です。相続した実家におすすめの不動産一括査定サービス比較に、査定の取り方をまとめています。

Q. 特殊清掃をしたことは記録に残りますか

公的な「事故物件データベース」は存在しません。ただし民間のサイトに掲載されることがあり、近隣の記憶にも残ります。告知の判断で「周知性」が考慮されるのは、このためです。

Q. 保険会社への連絡はいつすればいいですか

清掃を発注する前です。保険によっては、事前連絡や見積書の提出が支払いの条件になっています。作業後に連絡すると支払われないことがあるため、契約内容を先に確認してください。

Q. 遺品整理業者と特殊清掃業者は何が違いますか

遺品整理業者は家財の分別・搬出・処分を行い、特殊清掃業者は体液や臭気の処理を行います。汚損がある現場では特殊清掃が先で、その後に遺品整理という順番になります。

両方を行う会社もありますが、汚損のない部屋の家財整理は遺品整理業者のほうが安いことが多いため、分けて依頼する方法も検討してください。

Q. 賃貸の大家から「全室リフォーム代」を請求されました

汚損と関係のない部分まで負担する義務はありません。国土交通省の原状回復ガイドラインでは、経年変化・通常損耗の修繕費は賃料に含まれるという考え方が示されています。

内訳書の提出を求め、汚損部分とそれ以外を分けてください。納得できなければ消費生活センターに相談できます。

Q. 作業にはどのくらいの日数がかかりますか

汚損の程度によりますが、特殊清掃そのものは1日から3日、消臭は数日から1週間が目安です。床の解体や内装の復旧を含めると、2週間から1か月かかることもあります。

Q. 立ち会いは必要ですか

必須ではありませんが、貴重品の捜索がある場合は立ち会いを勧めます。立ち会えない場合は、探してほしいものと保管場所の心当たりを事前に伝え、写真で報告してもらう取り決めをしてください。

Q. 近隣に知られたくないのですが

多くの業者が、社名を出さない無地の車両や、作業着での配慮に対応しています。見積もりの段階で「近隣に知られたくない」と伝えてください。

ただし、機材の搬入や作業時間の長さから、まったく気づかれないようにするのは難しいのが実情です。

Q. 特殊清掃をしたことを買主に伝えなければ、あとで問題になりますか

なります。告知すべき事案を告げなかった場合、契約不適合責任や損害賠償を問われる可能性があります。売主が知っていて告げなかった場合は、なおさらです。

不動産会社に事実を伝え、告知の要否と方法を相談してください。告知書(物件状況等報告書)に記載する形が一般的です。

Q. 業者が「行政の許可を持っている」と言っています

どの許可かを確認してください。必要なのは、家財を運搬・処分するための「一般廃棄物収集運搬業」の許可(または許可業者との提携)です。

「産業廃棄物」の許可では家庭ごみを扱えません。「古物商」の許可は買取のためのもので、廃棄物の運搬とは別です。

Q. 相続人が複数います。誰が業者と契約すればいいですか

誰が契約しても構いませんが、費用の負担割合を先に決めておいてください。後から精算する場合、領収書と振込記録を残しておくことが必要です。

なお、遺産分割が終わっていない段階でも清掃はできます。ただし相続放棄を考えている人がいる場合は、その人が契約者になるのは避けてください。

Q. 夏に亡くなった場合と冬では、どのくらい違いますか

明確な統計はありませんが、実務では夏場のほうが進行が早く、同じ日数でも汚損の範囲が広がります。冷房が効いていた部屋と、締め切って高温になった部屋でも状況が変わります。

見積もりを依頼するときは、亡くなったと推定される時期、発見日、室内の冷暖房の状況を伝えてください。この情報があるかどうかで、見積もりの精度が変わります。

Q. 実家が遠方です。立ち会わずに進められますか

進められます。現地見積もり、作業、報告までを写真と書面で行う業者が多くあります。鍵の受け渡しは、郵送やキーボックスで対応できます。

ただし、貴重品の捜索と、消臭完了の確認は自分の目で行うことを勧めます。とくに消臭は、写真では判断できません。

Q. 業者に頼まず、そのまま解体してもいいですか

可能な場合もありますが、解体業者が受けてくれないことがあります。作業員の安全と衛生の問題があるためです。

また、解体前に家財の搬出が必要で、その過程で汚損物に触れることになります。最低限の汚染物の除去と消毒は行ってから解体するのが実務的です。解体業者に事情を伝え、対応可能かを先に確認してください。


まとめ

孤独死の特殊清掃費用について、要点を整理します。

実データ(日本少額短期保険協会・第10回孤独死現状レポート)

  • 遺品整理(残置物処理):平均294,131円、最大4,253,473円
  • 原状回復:平均494,344円、最大7,564,673円
  • 家賃保証:平均337,035円(賃貸のみ)
  • 2024年度単年では原状回復が610,507円に上昇(物価高騰の影響)
  • 発見までの平均日数は18日。3日以内の発見は37.0%

費用を決めるもの

  • 間取りより「汚損の範囲」
  • 発見までの日数と季節
  • 体液が下地に達しているかどうか

実家(持ち家)の場合

  • 家賃保証は発生しない
  • どこまで直すかを自分で決められる
  • 解体するなら内装の復旧は不要
  • 出口(解体・買取・仲介)を先に決めてから見積もりを取る

告知義務(国土交通省ガイドライン)

  • 自然死・日常生活の不慮の死は原則告げなくてよい
  • ただし特殊清掃等が行われた場合は告知が必要になる可能性がある
  • 3年で不要になるのは賃貸借取引だけ。売買には期間による免除がない
  • 解体後の土地取引の扱いは、ガイドラインの対象外

進め方

  1. 警察の検視が終わるまで待つ
  2. 相続放棄の可能性を先に検討する(清掃発注前)
  3. 出口を決める
  4. 3社から相見積もりを取る(必ず現地を見てもらう)
  5. 消臭の保証条件を書面で確認する

動転している状況で判断を迫られますが、急いで決めなければならないのは「相続放棄をするかどうか」だけです。清掃そのものは、持ち家であれば数日待っても状況は大きく変わりません。まず出口を決めてください。

この記事について

執筆:葉山 湊(はやま みなと)

自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。税理士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。制度や法令については、必ず一次情報(国土交通省・国税庁・法務省・各自治体)にあたって記事に反映しています。

本記事の主な出典は次のとおりです。

・費用・日数の統計:日本少額短期保険協会「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月)

・人の死の告知:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

・相続放棄後の保存義務:民法940条

制度・統計は更新されます。本記事の内容は2026年9月4日時点の公表情報にもとづきます。 実際の判断は、専門家や自治体の窓口にご確認ください。

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