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再建築不可物件の実家を売る|仲介で断られたときの出口

再建築不可の実家と細い前面道路 実家の売却・活用
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相続した実家を売ろうと不動産会社に相談したら、「この土地は再建築不可なので、うちでは扱えません」と言われた——。

再建築不可とは、いま建っている家を壊すと、二度と建てられない土地のことです。建物を建て替えられないため、住宅ローンが使えず、買い手が大きく限られます。

ただし、売れないわけではありません。 買い手の探し方が、普通の物件とまったく違うだけです。

この記事では、自分の実家が本当に再建築不可なのかを確かめる方法から始めて、7つの出口を、価格と時間の目安つきで整理します。

そして、2025年4月の建築基準法改正で、再建築不可物件の扱いが実質的に厳しくなった点にも触れます。リフォームして使う前提が、以前より通りにくくなっています。

みどりみどり
父の実家が「接道が1.8mだから再建築不可」と言われました。仲介も断られてしまって。もうどうにもならないのでしょうか。
たくみ先生たくみ先生
まず「本当に再建築不可か」を確かめてください。 2項道路なら、セットバックすれば建て替えられます。 そのうえで、再建築不可でも売り先はあります。 いちばん高く買えるのは、たいてい隣の家の人です。

再建築不可の実家と細い前面道路

結論|先に3つ言っておきます

再建築不可物件の売却で押さえる3点

1. まず「本当に再建築不可か」を確かめる

2項道路(セットバックが必要な道)なら、建て替えられます。 「4m未満だから再建築不可」と決めつけているケースが実際にあります。役所で確認できます。

2. いちばん高く買えるのは、たいてい隣地所有者

隣の土地と一体になれば、接道を満たす普通の土地に変わります。 その差額の分だけ、隣地所有者は高く出せます。

3. 2025年4月から、大規模リフォームにも建築確認が必要になった

木造2階建ての多くが「新2号建築物」となり、大規模の修繕・模様替えに建築確認申請が必要になりました。再建築不可では確認が下りないため、大規模リフォームが事実上できません。 「直して使う」という出口が細くなっています。

そのうえで、価格は市場相場の5〜7割が目安です。ゼロではありません。


再建築不可とは何か|接道義務

接道義務の要件

建築基準法は、建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならないと定めています(建築基準法43条1項)。これを接道義務といいます。

なぜこの決まりがあるのか

火災や救急のとき、消防車・救急車が入れるようにするためです。避難経路の確保も目的です。

満たさないとどうなるか

  • 新築・建て替えができない
  • 増築もできない
  • 大規模の修繕・模様替えができない場合がある(後述の2025年改正)

いま建っている建物を使い続けることはできます。 既存不適格といって、建てた当時は適法だった建物として扱われるためです。

該当しやすい典型例

状況 内容
旗竿地で通路幅が2m未満 間口が1.8mなど
前面が幅員4m未満の道 2項道路なら救済あり
前面が建築基準法上の道路でない 私道・通路・農道など
道路に接していない(袋地) 囲繞地通行権の問題も生じる

自分の実家が該当するか調べる

再建築可否を調べる手順

不動産会社の口頭説明を鵜呑みにせず、自分で確認してください。 誤っていることがあります。

手順

  1. 公図と地積測量図を取る(法務局/各450円程度)
  2. 役所の建築指導課で「前面道路の種別」を聞く
  3. 同じ窓口で「接道の長さ」を確認する
  4. 道路台帳の写しをもらう

役所で聞くこと

  • この道は建築基準法上の道路か。何条何項の道路か
  • 幅員はいくつか
  • 2項道路なら、セットバック後に建て替えられるか
  • 43条2項2号の許可(旧但し書き)の実績はあるか
  • 包括同意基準はあるか

電話でも教えてもらえる

地番と住所を伝えれば、電話で回答してくれる自治体が多いです。遠方でも確認できます。

「無道路地」と「再建築不可」は別

道路にまったく接していない土地(無道路地)と、接しているが基準を満たさない土地では、取りうる手が変わります。どちらなのかを、はっきりさせてください。


道路の種類を見分ける

建築基準法上の道路の種類

建築基準法42条は、「道路」を次のように定めています。

条項 通称 内容
42条1項1号 道路法の道路 国道・都道府県道・市町村道で幅員4m以上
42条1項2号 開発道路 都市計画法などで造られた道路
42条1項3号 既存道路 法施行時にすでにあった幅員4m以上の道
42条1項4号 計画道路 2年以内に事業執行予定のもの
42条1項5号 位置指定道路 特定行政庁から位置の指定を受けた私道
42条2項 2項道路(みなし道路) 幅員4m未満だが、法施行時に建物が立ち並んでいた道

この6つのどれかに接していれば、建て替えの可能性がある

逆に、どれにも当たらない「ただの通路」なら、原則として建て替えできません。

紛らわしいもの

  • 私道:位置指定道路なら建築基準法上の道路。そうでなければ違う
  • 農道・林道:建築基準法上の道路ではないことが多い
  • 里道(赤道):原則として建築基準法上の道路ではない
  • 通路:登記上は「公衆用道路」でも、建築基準法上の道路とは限らない

登記地目が「公衆用道路」でも、建築基準法上の道路とは別の話です。ここを取り違えている人が多いので、必ず役所で確認してください。


接道以外にも建築を止める条件がある

接道以外の建築規制

接道を満たしていても、別の理由で建てられないことがあります。役所で一緒に確認してください。

確認する項目

項目 何を見るか
用途地域 建てられる建物の種類、建ぺい率・容積率
防火地域・準防火地域 木造の制限。防火地域では構造の制約が大きい
市街化調整区域 原則として新築ができない。開発許可が要る
都市計画道路 予定線がかかると、建築に制限がつく
高度地区・斜線制限 建てられる高さが決まる
災害警戒区域 土砂災害特別警戒区域では構造規制がある

市街化調整区域は「別の再建築不可」

接道を満たしていても、市街化調整区域では原則として新築できません。 既存宅地の扱いや、開発許可の要否は自治体ごとに運用が違います。

「接道は足りているのに建てられない」という場合、この可能性を疑ってください。

都市計画道路の予定線

将来道路になる予定の帯がかかっていると、建築に制限(階数・構造)がつきます。 反面、事業が動けば買収されるため、それを前提に評価する買い手もいます。

まとめて聞く

役所の窓口では、「この地番について、建築の可否に関わる規制をすべて教えてください」と聞くのが早いです。都市計画課と建築指導課の両方に回されることがあります。


2項道路なら、建て替えられる

2項道路とセットバック

前面道路の幅が4m未満でも、2項道路なら建て替えられます。

2項道路とは

建築基準法の施行時(原則として1950年11月23日)にすでに建物が立ち並んでいた、幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものです(建築基準法42条2項)。

セットバックが必要

建て替えるときは、道路の中心線から2m後退した線を道路境界とみなします。後退した部分には建物を建てられません。

現況幅員 必要な後退
3.6m 片側0.2mずつ
3.0m 片側0.5mずつ
2.7m 片側0.65mずつ

片側だけ後退する場合もある

対面が川・崖・線路など後退できない地形の場合、自分の側だけ4m分まで後退します。後退幅が大きくなるので、事前に確認してください。

建てられる面積が減る

セットバック部分は敷地面積に算入されません。 建ぺい率・容積率の計算から外れるため、建てられる家が小さくなります。

それでも「再建築不可」ではない

建て替えられる以上、住宅ローンも通ります。 買い手の幅がまったく変わります。

「4m未満=再建築不可」と説明された場合は、2項道路かどうかを必ず確かめてください。


「接道2m」の測り方でつまずくところ

接道の測り方でよくある誤解

「2m接している」は、見た目より厳しい条件です。

連続して2m必要

合計で2mではありません。 1か所で連続して2m以上接している必要があります。

  • 1.2mと0.9mで合計2.1m→ 満たさない
  • 途中に他人の土地が挟まっている→ 満たさない

旗竿地は、いちばん狭いところで測る

通路部分の入口が2.2mでも、途中で1.9mにくびれていれば、そこで判定されます。全長にわたって2m以上が必要です。

擁壁・門柱・水路は要注意

  • 擁壁や門柱が越境していると、有効幅が減る
  • 前面に水路があると、道路に直接接していないと判断されることがある(水路をまたぐ橋を架け、占用許可を取るケースがあります)

自治体の条例で上乗せがある

建築基準法は2mですが、自治体の条例で、通路の長さに応じて幅を上乗せしていることがあります。

通路の長さ 必要な幅の例
20m以下 2m
20m超 3m以上を求める自治体がある

東京都をはじめ、多くの自治体に同種の規定があります。 「2mあるから大丈夫」と決めつけず、条例まで確認してください。

測るのは自分ではない

正確な判定は、確定測量と役所の窓口で行います。 メジャーで測った数字は、あくまで目安です。


なぜ売りにくいのか|4つの理由

再建築不可物件が売れにくい理由

1. 住宅ローンが使えない

担保価値が低く評価されるため、金融機関が融資しません。 買い手は現金で買える人に限られます。

2. 出口が見えない

買った人も、次に売るときに同じ問題に直面します。 資産として持ちにくいという判断になります。

3. 建物の寿命が資産の寿命になる

建て替えられないので、建物が朽ちたら土地だけが残ります。 その土地にも家は建てられません。

4. 大規模リフォームができなくなった

2025年4月の建築基準法改正で、木造2階建ての多くが大規模の修繕・模様替えに建築確認を必要とするようになりました。再建築不可では確認が下りません。

4つ目は、比較的新しい変化です。 以前の記事や情報を見て「リフォームすれば使える」と考えていると、前提がずれます。


建築計画概要書で過去を確認する

建築計画概要書からわかること

役所で「建築計画概要書」を閲覧・取得すると、その建物が過去に建築確認を受けているかが分かります。

分かること

  • 建築確認の年月日と番号
  • 当時の敷地面積・建築面積・延べ面積
  • 当時の前面道路の幅員と接道長さ
  • 建築主・設計者

なぜ役に立つのか

建築確認を受けている=当時は接道要件を満たしていたということです。

  • その後、道路の扱いが変わった
  • 敷地の一部を売却して接道が減った
  • 当時から2項道路で、セットバック前提だった

どのパターンかが分かると、打つ手が絞れます。

取得方法

  • 建物のある市区町村の建築指導課
  • 閲覧は無料、写しの交付は数百円
  • 古い建物では保存されていないことがある

「確認を受けていない建物」だった場合

建築確認なしで建てられた建物である可能性があります。確認制度の対象外だった時代のものというケースも多いです。

いずれにせよ、買い手には説明が必要な事項です。早めに把握しておいてください。


2025年4月の法改正で何が変わったか

4号特例の縮小と再建築不可への影響

改正前

木造2階建て・延べ面積500㎡以下などの「4号建築物」は、大規模の修繕・模様替えについて建築確認が不要でした(いわゆる4号特例)。

そのため再建築不可物件でも、柱と梁を残したフルリフォーム(スケルトンリフォーム)が事実上可能でした。

改正後(2025年4月1日施行)

4号区分が廃止され、木造2階建てなどは「新2号建築物」に位置づけられました。大規模の修繕・模様替えに建築確認申請が必要になっています。

再建築不可物件は接道義務を満たさないため、建築確認が下りません。 つまり、大規模リフォームができません。

何ができて、何ができないのか

工事 可否
内装の張り替え、設備交換 できる
外壁の塗装 できる
屋根の葺き替え(下地を替えない) できることが多い
主要構造部の過半の修繕 建築確認が必要=できない
スケルトンリフォーム 建築確認が必要=できない
増築 できない

平屋なら別

木造平屋建てで延べ面積200㎡以下は「新3号建築物」とされ、大規模の修繕・模様替えについては建築確認が不要です。実家が平屋なら、状況が変わります。

価格への影響

「安く買ってフルリフォームして住む・貸す」という需要が細りました。 その分、買い手が減り、価格は下がる方向に働きます。

いま売るか、持ち続けるかを考えるうえで、無視できない変化です。


相場を読む前に、自分の物件の数字を1つ

再建築不可の価格は、立地と建物の状態で大きく振れます。 「市場の何割」ではなく、実額を先に持ってください。

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価格はどれくらい下がるのか

再建築不可物件の価格水準

公的な統計はありません。 以下は取引実務での目安です。

売り先 価格の目安(同条件の再建築可能な物件を100として)
隣地所有者 70〜100(一体化で価値が上がるため)
一般の買い手(現金) 50〜70
買取業者 30〜50
競売 20〜40

隣地所有者だけが「高く買える理由」を持つ

隣の土地と一体になれば、接道を満たす普通の土地に変わります。

  • 隣地の資産価値が上がる
  • 自分の家を建て替えるときの選択肢が増える
  • 駐車場や庭として使える

この差額があるので、隣地所有者は市場価格に近い額を出せます。

都心と地方で事情が違う

  • 都心の狭小地:土地単価が高いため、再建築不可でも一定の需要があります
  • 地方:そもそも土地が余っているため、買い手を探すのが難しくなります

建物の状態が価格を決める

大規模リフォームができなくなった以上、「いまのまま住めるか」「いまのまま貸せるか」が価値を左右します。傷んでいるほど、価格は下がります。


買い手はどんな人か

再建築不可物件を買う層

「誰も買わない」ではありません。 買う理由を持った層が存在します。

1. 隣地所有者

いちばん高く出せる相手です。一体化すれば接道を満たす普通の土地になります。

2. 賃貸に回す投資家

取得価格が安いため、利回りが高く出ます。 建て替えられないことは、貸すうえでは支障になりません。

ただし2025年4月以降、大規模修繕に建築確認が必要になったため、「安く買ってフルリフォームして貸す」モデルは成立しにくくなりました。 いまのまま貸せる状態かどうかが判断材料になります。

3. 現金で買う実需

「安く広い家に住めるなら」という層です。住宅ローンを使わない、あるいは親族の援助で買える人に限られます。

4. 駐車場・資材置き場として使う人

建物を求めていない層です。近隣の事業者や、隣接する家の人が該当します。

5. 再建築不可を専門に扱う業者

43条2項2号の許可を取る、隣地とまとめる、賃貸に回すといった出口を持っています。

買い手ごとに効く材料が違う

買い手 効く材料
隣地所有者 一体化後の土地の形と価値
投資家 想定賃料と、いまのまま貸せるか
実需 建物の状態と価格
土地利用 間口・地型・接道の実態
専門業者 許可の可能性と隣地の状況

最初に「誰に売るか」を決めると、準備すべき資料が変わります。


隣地と交渉するときの基準として、買取業者の査定額を先に取っておくと足元を見られません。

出口1|隣地所有者に売る

隣地所有者への売却が有力な理由

実務でいちばん決まりやすい相手です。

打診の順番

  1. 公図で、隣接する土地の所有者を確認する(法務局で登記事項証明書を取る)
  2. 接道が改善する隣地はどこかを特定する
  3. 手紙で打診する(いきなり訪問しない)
  4. 反応があれば、価格の話に入る

手紙に書くこと

  • 相続した土地であること
  • 売却を検討していること
  • 隣地としてご関心があればご連絡いただきたいこと
  • 連絡先

金額はこちらから提示しないほうが進みます。相手の関心の度合いを先に測ってください。

仲介会社に頼む場合

「隣接地に声をかけましたか」と必ず確認してください。 やっていない会社が実際にあります。

複数の隣地がある場合

全員に同時に打診すると、比較が生まれます。 1軒ずつ順番に当たると、時間だけが過ぎます。

まとまらない理由の多くは「価格」ではない

  • 相手にも相続の予定があり、判断できない
  • 資金の準備に時間がかかる
  • 過去の経緯(境界のもめごとなど)がある

理由を聞いて、時期を待つという判断もあります。


隣地への手紙の書き方

隣地所有者への打診の進め方

いきなり訪問しないでください。相手に断る余地を残すほうが、結果的に話が進みます。

書く内容

  1. 自分が誰か(故人の子であること、名前)
  2. どの土地の話か(住所・地番)
  3. 相続で取得し、売却を検討していること
  4. 隣地としてご関心があればご連絡いただきたいこと
  5. 連絡先
  6. 関心がなければ返信不要である旨

書かないほうがよいこと

  • 希望価格(先に出すと、そこが上限になります)
  • 「困っている」「早く処分したい」(足元を見られます)
  • 過去の経緯への言及(境界のもめごとなど)

送り先の調べ方

公図で隣接地の地番を確認し、法務局で登記事項証明書を取ると、所有者の氏名と住所が分かります(1通600円、オンライン請求なら480〜500円)。

登記上の住所と現住所が違うことがあります。その場合は現地で確認するか、仲介会社に依頼してください。

複数の隣地には同時に出す

1軒ずつ順番に当たると、半年、1年と過ぎます。 同時に出せば、比較も生まれます。

返信がなくても、もう一度出す価値はある

相続や資金の都合で、時期が来れば関心を持つことがあります。半年〜1年後に、もう一度出すという進め方もあります。

仲介会社に頼む場合

「隣接地への打診を、書面で行ってください」と具体的に依頼してください。「声はかけました」で終わっていることがあります。


出口2|隣地の一部を買って接道を満たす

隣地の一部を買って接道を確保する

逆に、こちらが買う方法です。接道を2m確保できれば、再建築可能な土地に変わります。

効果

接道1.8mの旗竿地で、隣地から幅0.3m・長さ15mの帯(4.5㎡)を買うとします。

  • 買い増しの費用:土地単価20万円/㎡なら90万円+登記費用
  • 再建築可能になることで上がる価値:数百万円〜1,000万円超

費用対効果が非常に高い打ち手です。

必要な手続き

  1. 隣地所有者の同意
  2. 分筆登記(土地家屋調査士/10万〜20万円程度)
  3. 確定測量(35万〜80万円程度)
  4. 売買契約と所有権移転登記
  5. 役所で、接道を満たすことの確認

難しい点

  • 隣地所有者が売ってくれるとは限らない
  • 隣地側の接道や建ぺい率に影響が出ると、断られる
  • 時間がかかる(半年〜1年)

等価交換という方法もある

土地を売り買いするのではなく、同等の面積を交換する形です。金銭の授受が減るため、相手の心理的ハードルが下がることがあります。

「買えれば最善」ですが、相手ありきの手です。 打診してみて、断られたら次の出口に進むという順序が現実的です。


出口3|43条2項2号の許可を取る

43条2項2号の許可(旧但し書き)

接道義務を満たさなくても、特定行政庁の許可があれば建築できる場合があります。

根拠

建築基準法43条2項2号:その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したもの

2018年の改正で、従来の「43条但し書き」が、2項1号(認定)と2項2号(許可)に整理されました。

2項1号(認定)のほうが早い

  • 幅員4m以上の農道等に2m以上接する場合など、基準に当てはまれば認定
  • 建築審査会の同意が不要なので、手続きが早い

2項2号(許可)は審査会の同意が要る

  • 個別に審査される
  • 自治体によっては「包括同意基準」があり、該当すれば審査会を経ずに処理される
  • 申請から許可まで1〜3か月

注意点

点 内容
恒久的なものではない 建築のたびに申請が必要
必ず下りるとは限らない 同じ地域でも個別判断
費用がかかる 建築士への依頼で10万〜30万円程度
買い手にとっては不確実 「許可が下りる前提」では住宅ローンが組みにくい

売る前に取っておく価値はあるか

許可の実績がある地域なら、取っておくと売りやすくなります。 役所で「この付近で2項2号の許可実績はありますか」と聞いてください。

実績がまったくない地域では、時間と費用の割に効果が薄いこともあります。


43条2項2号の許可を取る手順

43条2項2号の許可申請の流れ

進め方

  1. 役所の建築指導課で事前相談する(この地域で許可の実績はあるか、包括同意基準はあるか)
  2. 建築士に依頼する(申請図書の作成が必要)
  3. 現況測量と、周囲の空地の状況を図面化する
  4. 通路の所有者から、通行・掘削の承諾を取る
  5. 許可申請書を提出する
  6. 建築審査会(または包括同意基準による処理)
  7. 許可

費用と期間

項目 目安
建築士への依頼 10万〜30万円
現況測量 10万〜25万円
申請手数料 自治体により無料〜3万円程度
期間 1〜3か月(審査会の開催頻度による)

包括同意基準がある自治体は早い

一定の条件を満たす場合に、建築審査会の個別同意を経ずに処理する基準を設けている自治体があります。該当すれば、1か月程度で済むことがあります。

許可は建築のたびに必要

一度取れば恒久的に再建築可能になる、というものではありません。 建て替えるたびに、そのときの基準で申請します。

買い手にはこの点を正しく伝えてください。 「許可が取れる見込みが高い」と「再建築可能」は違います。

売る前に取るべきか

状況 判断
同地域で許可実績が複数ある 取ってから売る価値が高い
実績が少ない・ない 費用倒れの可能性。買取を優先
通路所有者の承諾が取れない 申請自体が難しい

22万円の投資で1,000万円の差がついた例もあれば、申請しても下りなかった例もあります。必ず事前相談から始めてください。


出口4|位置指定道路にする

位置指定道路の申請

前面の私道について、特定行政庁から「位置の指定」を受けると、建築基準法上の道路(42条1項5号)になります。

要件の例

  • 幅員4m以上
  • 原則として両端が他の道路に接続している(袋路状の場合は延長35m以下などの制限)
  • 道の構造(勾配・排水)が基準を満たす
  • 私道の所有者全員の承諾

いちばんの壁は「全員の承諾」

私道が複数人の共有や細切れの所有になっていることが多く、1人でも反対すれば進みません。

所有者が死亡して相続登記されていないというケースも頻繁にあります。

費用と期間

  • 測量・図面作成・申請:50万〜150万円程度
  • 道路の整備工事が必要な場合、さらに数百万円
  • 半年〜数年

現実的かどうか

その私道に面する家が複数あり、全員が建て替えを望んでいるなら、費用を分担して進める価値があります。

自分1軒のためだけに進めるのは、費用対効果が合わないことが多いです。


買取業者の見分け方

再建築不可を扱える業者の見分け方

「訳あり物件買取」を掲げていても、実力には差があります。

聞くべき5つ

  1. 再建築不可の取扱実績は年間どれくらいありますか
  2. この物件を買った後、どう出口を作りますか
  3. 43条2項2号の許可申請を、自社で行った実績はありますか
  4. 隣地への打診も含めて検討してもらえますか
  5. 契約不適合責任は免責にしてもらえますか

2番の答えでほぼ分かる

「賃貸に回す」「隣地とまとめる」「許可を取って再販する」など、具体的な出口を答えられる業者は、根拠のある値段を出します。

「とりあえず買っておきます」という答えなら、安く仕入れて転売するだけの可能性が高く、価格も低くなります。

現地を見ずに金額を出す業者に注意

再建築不可は現地の状況(通路の実測、隣地との関係、建物の状態)で価値が大きく変わります。机上だけで高い数字を出し、現地確認後に大幅に下げるという進め方をする業者があります。

複数社を同時に動かす

  • 3社以上に同時に依頼する
  • 他社にも依頼していることを伝える
  • 提示額は書面でもらう

「今日中に決めてください」には応じない

急がせるのは、比較させないためです。検討する時間を取ると言えば、通常の業者は待ちます。

買取以外の提案をしてくれるか

「隣地に打診したほうが高く売れますよ」と言う業者は、信頼できます。自社の利益にならない助言をするという点で、判断材料になります。


出口5|買取業者に売る

再建築不可を扱う買取業者

仲介で動かない場合の、現実的な受け皿です。

業者が買える理由

  • 現金で買うので、住宅ローンの制約がない
  • 賃貸に回す、駐車場にする、隣地とまとめて再販するといった出口を持っている
  • 建築基準法の運用に詳しく、43条2項2号の許可を取れる場合がある

価格の目安

市場価格の3〜5割。隣地所有者に売る場合より低くなります。

それでも選ぶ理由

項目 内容
早さ 数日〜1か月で現金化
契約不適合責任 免責が一般的
残置物 そのまま引き取ってもらえることが多い
仲介手数料 かからないことが多い

必ず複数社から取る

再建築不可は、業者によって出口の持ち方が違うため、価格差が特に大きく出ます。

同じ物件で、180万円と420万円という開きが出ることがあります。

「値段がつかない」と言われたら

その業者に出口がないだけです。訳あり物件を専門に扱う業者に当たり直してください。

「値段がつかない」は、その1社の話

再建築不可を専門に扱う業者は、出口の持ち方が違います。 同じ物件で倍以上の差が出ることも珍しくありません。査定は無料です。

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売り出す前に揃える書類

再建築不可物件の売却で揃える書類

資料が揃っている物件は、買い手の不安が減り、価格にも成約速度にも効きます。

書類 取得先 費用の目安
登記事項証明書(土地・建物) 法務局 1通600円
公図 法務局 1通450円
地積測量図 法務局 1通450円(ない場合もある)
建物図面・各階平面図 法務局 1通450円
建築計画概要書 市区町村の建築指導課 数百円
道路台帳の写し 道路管理課 数百円
固定資産評価証明書 市区町村 1通300円程度
通行・掘削承諾書 私道所有者から取得 交渉次第
境界確認書 隣地所有者と締結 測量費に含む

とくに効くのは3つ

  1. 役所への確認結果を書面で残したもの(道路種別・幅員・接道長さ)
  2. 通行・掘削承諾書
  3. 境界確認書

この3つが揃っていると、買い手は「調べ直す手間」と「不確実性」から解放されます。 その分、値引き交渉が減ります。

確定測量をやるべきか

35万〜80万円、2〜3か月かかります。

  • 隣地所有者に売る場合→ 必要になることが多い(分筆を伴うため)
  • 買取業者に売る場合→ 業者側でやるので不要なことが多い
  • 一般の買い手に売る場合→ あると強いが、必須ではない

売り先を決めてから判断してください。


解体費の相場は実家の解体費用に、片付けの見積もりは不用品回収の無料見積もりで確認できます。

出口6|解体して土地として売る

解体してから売る場合の判断

再建築不可では、原則として勧められません。

理由

  1. 更地にしても家は建てられない
  2. 住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍(地方税法349条の3の2)
  3. 解体費(木造30坪で90万〜150万円)を先に負担する
  4. 「建物付き」であることが、いまのまま使える唯一の価値だった

建物があるうちは「住める・貸せる」

再建築不可でも、既存の建物には住めます。 賃貸にも出せます。 壊した瞬間に、その価値がなくなります。

解体が有利になる例外

  • 隣地所有者が「更地で買いたい」と言っている
  • 建物が倒壊寸前で、そのままでは危険
  • 特定空家に指定され、行政から勧告を受けている

買主が決まってから壊す

「壊せば売れるだろう」で先に解体するのは、いちばん避けたい判断です。買主が決まり、更地渡しが条件になってから壊してください。

解体費の相場は実家の解体費用にまとめています。


出口7|貸す

再建築不可物件を貸す場合

売らずに収益化する方法です。

再建築不可でも貸せる

既存の建物を賃貸に出すこと自体に制限はありません。 建て替えができないだけです。

利回りは高くなりやすい

取得原価(相続なら評価額)が低いため、賃料に対する利回りは高く出ます。

注意点

点 内容
大規模修繕ができない 2025年4月以降、建築確認が必要な工事は不可
火災・地震のリスク 建て替えられないため、失うと土地だけが残る
空き家の3,000万円特別控除が使えなくなる 一度貸すと要件から外れる
管理の手間 遠方なら管理委託が必要

税金の副作用が大きい

相続した実家を売る予定があるなら、貸してはいけません。

空き家の3,000万円特別控除は、相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないことが要件です(租税特別措置法35条3項)。一度でも貸すと、この特例は使えなくなります。

賃料を数年取ったあとに売って、譲渡所得税が数百万円増える——これが実際に起きる失敗です。


建物の状態をどう見せるか

建物の状態が価格を左右する

大規模リフォームができなくなった以上、「いまのまま住めるか」が価値そのものになりました。

買い手が見るところ

  • 雨漏りの有無(天井のシミ、小屋裏)
  • シロアリの被害(床の沈み、柱の食害)
  • 給排水の状態(水を出してみる)
  • 建物の傾き(水平器で確認)
  • 基礎のひび割れ

やる価値がある投資

施策 費用の目安 効果
ハウスクリーニング 5万〜15万円 高い
残置物の撤去 15万〜40万円 高い
草刈り・剪定 3万〜10万円 高い
雨漏りの部分補修 5万〜30万円 高い(放置は減点が大きい)
インスペクション 5万〜10万円 中(不安を消せる)
大規模リフォーム — 建築確認が必要でできない

インスペクションが効く理由

再建築不可では、買い手が「あと何年住めるのか」を知りたがります。 専門家の調査結果があると、その不安に答えられます。

「直せない」ことを隠さない

2025年4月以降、大規模修繕には建築確認が必要であるという事実は、買い手も調べれば分かります。

先に伝えて、そのうえで「いまの状態でどこまで使えるか」を示すほうが、信頼されます。

不用品の処分は不用品回収の無料見積もりで複数社から取れます。


越境と境界を確認する

越境と境界の確認項目

再建築不可の土地は、古い住宅密集地にあることが多く、越境が起きやすいという特徴があります。

よくある越境

  • 隣家の屋根・雨樋がこちらの敷地に出ている
  • こちらのブロック塀が隣地に出ている
  • 樹木の枝や根が越えている
  • 給排水管が隣地の下を通っている
  • エアコンの室外機や配管が越えている

なぜ問題になるか

買主は、引き渡し後にこの問題を引き継ぎます。 決済直前に発覚すると、そこで止まります。

対応は「覚書」が実務

撤去を求めるのではなく、隣地所有者と覚書を交わすのが一般的です。

覚書に書く内容:

  • 越境の事実と、その範囲
  • 現状のままで容認すること
  • 建て替えのときに撤去・是正すること
  • 所有者が変わっても引き継ぐこと

境界標を確認する

  • 境界標(金属プレート、コンクリート杭)があるか
  • 地積測量図と現況が合っているか
  • 隣地所有者と境界確認書を交わしているか

測量が必要になる場面

場面 測量の要否
隣地に売る(分筆を伴う) 必要
隣地の一部を買う 必要
買取業者に売る 不要なことが多い
一般の買い手に売る 求められることが多い

確定測量は35万〜80万円、2〜3か月かかります。売り先が決まってから発注すると、無駄がありません。


そもそも通れるか|通行権の問題

通行権と再建築不可

再建築不可の土地では、「そもそも他人の土地を通らないと出入りできない」というケースがあります。

袋地の通行権

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため、周囲の土地を通行できます(民法210条/囲繞地通行権)。

  • 通行の場所と方法は、必要かつ損害が最も少ないものを選ぶ(民法211条)
  • 原則として償金を支払う(民法212条)
  • 自動車が通れるかどうかは、事情によって判断が分かれる

私道の通行と掘削

上下水道の引き込みには、私道を掘削する承諾が必要になることがあります。

「通行・掘削承諾書」を隣地・私道所有者から取れているかどうかで、買い手の安心感がまったく変わります。

売る前に確認すること

  • 通行承諾書はあるか
  • 掘削承諾書はあるか
  • 私道の持分を持っているか
  • 上下水道は自分の敷地まで来ているか

承諾書がない場合、取得できるなら取ってから売るほうが、価格にも成約速度にも効きます。


火災保険は必ず掛けておく

再建築不可物件と火災保険

再建築不可の物件では、建物を失うことが、資産を失うことと同じです。建て直せないためです。

空き家でも加入できる

空き家は「一般物件」として扱われ、住宅物件より保険料が高くなりますが、加入自体はできます。

  • 年間2万〜6万円程度が目安
  • 長期間まったく使っていない場合、引き受けを断られることがある
  • 親名義のままの契約は、相続後に契約者変更が必要

「時価」か「再調達価額」か

  • 再調達価額(新価):同じ建物を建て直す費用が出る
  • 時価:経年減価した額が出る

再建築不可では、そもそも建て直せません。 新価で契約していても、建て直しには使えない点を理解しておいてください。それでも、解体費や賠償への備えとして意味があります。

個人賠償責任特約をつける

屋根瓦や外壁が落ちて、通行人や隣家に損害を与えた場合の備えです。古い建物ほど、この危険は高くなります。

地震保険

火災保険とセットでしか加入できません。 保険金額は火災保険の30〜50%が上限です。

契約者が亡くなっている場合

契約者変更の手続きをしないと、保険金の請求で揉めます。 相続登記と一緒に済ませてください。


相続した場合の税金

再建築不可物件と相続税評価・譲渡所得

相続税の評価は下がる

無道路地や、接道が不十分な土地は、相続税評価額が減額されます。

  • 無道路地は、通路開設費用相当額を控除するなどの補正がある
  • 間口が狭い土地には、間口狭小補正率が適用される
  • 奥行が長い土地には、奥行長大補正率が適用される

評価が下がる分、相続税は軽くなります。 ただしその分、売却価格も低いということでもあります。

譲渡所得の計算は通常どおり

売却価格 - 取得費 - 譲渡費用で計算します。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費とできます。

空き家の3,000万円特別控除は使える

再建築不可であること自体は、特例の要件に影響しません。 要件を満たせば適用できます(租税特別措置法35条3項)。

ただし「除却して売る」ルートを選ぶ場合、更地にしても家が建たない点に注意してください。耐震改修のほうも、大規模工事は建築確認が必要になり得ます。

どちらのルートで特例を使うのかは、事前に税理士に確認してください。

税金の全体像は相続した実家の売却にかかる税金に、判断に迷うなら相続に強い税理士の無料紹介を使ってください。


相続人が複数いるとき

相続人が複数いる場合の進め方

再建築不可の実家は、相続人の間で「押し付け合い」になりやすい財産です。

起きやすいこと

  • 誰も相続したがらない
  • 「価値がないから、取得した人が損」という議論になる
  • とりあえず共有名義にして、そのまま10年経つ

共有にすると、さらに動かなくなる

売却には共有者全員の同意が必要です(民法251条)。再建築不可という難しい条件に、合意形成の難しさが重なります。

先に数字を出す

「価値がない」という前提が、そもそも間違っていることがあります。

  • 隣地所有者に売れば市場の70〜100%
  • 2項道路だと判明すれば、通常の物件
  • 買取でも市場の30〜50%

査定を1つ取るだけで、「押し付け合い」が「分け方の相談」に変わります。

決めておくこと

  1. 誰が取得するか(または換価分割にするか)
  2. 役所への確認と査定を誰がやるか
  3. 許可申請や測量の費用を誰が立て替えるか
  4. いくらまでなら売るか

相続放棄は慎重に

他に相続したい財産があるなら、放棄すると全部を失います。 3か月の期限もあります。 まず売れるかどうかを確かめてからにしてください。

共有名義の扱いは共有名義の実家は売れる?に、相続放棄はいらない実家は相続放棄できる?にまとめています。


「建てられないのに税金が上がる」を避ける

住宅用地特例と再建築不可

再建築不可の土地で、いちばん避けたい状態があります。建物を壊して更地にすることです。

何が起きるか

  1. 住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍(地方税法349条の3の2)
  2. その土地には家を建てられない
  3. つまり、特例を取り戻す手段がない

普通の土地なら「また建てれば戻る」のですが、再建築不可ではそれができません。

住宅用地の特例

区分 固定資産税の課税標準
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 6分の1
一般住宅用地(200㎡超の部分) 3分の1

建物があることが条件です。

特定空家・管理不全空家に注意

管理されていない空き家は、勧告を受けた時点で住宅用地の特例が解除されます(空家等対策の推進に関する特別措置法)。2023年の改正で、「管理不全空家」も勧告の対象に加わりました。

建物を残していても、放置すれば同じ結果になります。

やるべき最低限の管理

  • 年数回の通気と通水
  • 草刈り・剪定
  • 屋根・外壁の点検
  • 郵便物の回収

遠方なら、空き家管理の代行(月5,000円〜1万円程度)という選択肢もあります。

「壊さない」「放置しない」 ——この2つを守るだけで、税負担は変わりません。


放置するとどうなるか

再建築不可物件を放置した場合

建物が朽ちるほど、価値がなくなる

再建築不可の価値は、「いまの建物が使えること」に依存しています。建物が住めなくなった時点で、ほぼ土地だけの評価になり、その土地には家が建ちません。

維持費は出ていく

  • 固定資産税・都市計画税:年5万〜15万円
  • 火災保険(空き家料率):年2万〜6万円
  • 管理・草刈り:年5万〜15万円

特定空家のリスク

管理されていない空き家は、特定空家・管理不全空家に指定されると、勧告の時点で住宅用地の特例が解除され、固定資産税が最大6倍になります(空家等対策の推進に関する特別措置法/2023年改正)。

再建築不可の土地では、この負担がとくに重く感じられます。 建て替えて活用する道がないためです。

相続人が増える

放置している間に次の相続が起き、共有者が増えます。 人数が増えるほど、売却の同意は取れなくなります。

放置のリスクは実家を空き家のまま放置する6つのリスクに、共有名義の扱いは共有名義の実家は売れる?にまとめています。


費用と期間の一覧

出口ごとの費用と期間
出口 費用 期間 手取りの目安
2項道路と判明→通常売却 セットバック分の面積減 3〜6か月 市場価格に近い
隣地所有者に売る 測量35万〜80万円 3か月〜1年 市場の70〜100%
隣地の一部を買って接道確保 土地代+分筆10万〜20万円+測量 6か月〜1年 市場価格に近い
43条2項2号の許可を取って売る 20万〜50万円 許可1〜3か月+売却 市場の70〜90%
位置指定道路にする 50万〜150万円+工事費 半年〜数年 市場価格に近い
買取業者に売る 0円(手数料も不要なことが多い) 数日〜1か月 市場の30〜50%
貸す 修繕50万〜200万円 — 賃料収入。特例は失う
放置 年12万〜36万円の維持費 — 建物が朽ちるほど下がる

読み取れること

  • 上に行くほど手取りが多く、時間がかかる
  • 買取は手取りが少ないが、確実で早い
  • 放置だけが、時間とともに悪化する

期限があるなら逆算する

空き家の3,000万円特別控除は、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。

隣地への打診と許可申請を並行して進めても、半年〜1年かかります。期限の1年前には動き始めてください。


ケース別|3つの実例

3つのケースの出口

ケース1|「再建築不可」が誤りだった

仲介会社から「前面道路が3.4mなので再建築不可」と言われ、1年放置。

役所の建築指導課に問い合わせたところ、2項道路でした。片側0.3mのセットバックで建て替え可能と判明。

通常の物件として売り出し、3か月で2,180万円で成約。 確認の電話1本で、状況がまったく変わったケースです。

ケース2|隣地所有者へ売却

接道1.8mの旗竿地。仲介で8か月、内覧ゼロ。買取業者3社の提示は280万〜460万円。

公図で隣接する4軒を調べ、手紙で打診。 1軒から「駐車場として使いたい」と反応。

780万円で成約。 買取の最高提示より320万円多く残りました。

ケース3|43条2項2号の許可を取ってから売却

前面が幅員4mの位置指定されていない通路。役所に確認したところ、同じ地域で許可実績が複数あるとのこと。

建築士に依頼(費用22万円)し、許可を取得。 「許可取得済み」として売り出したところ、住宅ローンを使う買い手が現れ、1,640万円で成約。

許可を取る前の買取提示は610万円でした。22万円の投資で、1,000万円以上の差がつきました。

3つに共通すること

いずれも「役所で確認する」ことから始まっています。 仲介会社の説明を確かめるだけで、出口が変わることがあります。


「再建築不可」と言われた最初の1週間

最初の1週間でやること

動き出しの順番を決めておくと、無駄がありません。

1〜2日目|書類を取る

  • 登記事項証明書(土地・建物)
  • 公図
  • 地積測量図

法務局の窓口でもオンラインでも取れます。 合計2,000円程度です。

3日目|役所に電話する

建築指導課に、地番を伝えて次を聞きます。

  • 前面道路は建築基準法上の道路か。何条何項か
  • 幅員と、接道の長さ
  • 2項道路か
  • 43条2項2号の許可実績、包括同意基準の有無
  • 用途地域・防火地域・市街化調整区域かどうか

聞いた内容は日付とともにメモに残してください。 買い手への説明資料になります。

4日目|結果で分岐する

結果 次にやること
2項道路だった 通常の物件として、複数社に査定を依頼
許可の実績がある 建築士に事前相談
どちらもない 公図で隣地所有者を調べる

5〜7日目|打診と査定を同時に始める

  • 隣地所有者へ手紙を出す(複数あれば同時に)
  • 買取業者3社に査定を依頼する

どちらか一方を待たないでください。並行して進めると、比較ができます。

1週間でここまで来られる

費用は書類代2,000円程度と、切手代だけです。「どうにもならない」と思っていた状態から、選択肢が3つ4つ見えている状態になります。


よくある失敗5つ

再建築不可の売却でやりがちな失敗

1. 役所で確認せず、「再建築不可」を鵜呑みにする

2項道路や、認定・許可の可能性を見落とします。 電話1本で確認できます。

2. 先に解体する

更地にしても家は建ちません。 固定資産税だけが上がります。

3. 隣地に声をかけない

いちばん高く買える相手を飛ばして、買取業者に売ってしまうケースです。

4. 買取を1社にしか聞かない

出口の持ち方で価格が倍以上違います。 「値段がつかない」はその1社の話です。

5. 「リフォームして貸す」を前提にする

2025年4月以降、木造2階建ての大規模修繕には建築確認が必要です。古い情報のまま計画を立てると、途中で行き詰まります。


よくある質問

Q. 再建築不可の物件に、いま住むことはできますか?

A. できます。 既存不適格として、建てた当時は適法だった建物として扱われます。住むことにも、貸すことにも制限はありません。 建て替えと大規模修繕ができないだけです。

Q. 住宅ローンは絶対に組めませんか?

A. 一般の住宅ローンはほぼ通りません。 ノンバンクの不動産担保ローンなら可能な場合がありますが、金利は高くなります。 43条2項2号の許可を取れば、通る可能性が出ます。

Q. リフォームローンは使えますか?

A. 無担保のリフォームローンなら、物件の担保評価に依存しないため、使える場合があります。 ただし工事内容が建築確認を要するものなら、そもそも工事ができません。

Q. 建て替えではなく、曳家(ひきや)ならできますか?

A. 建物を移動する曳家も、建築基準法上は「移転」として扱われ、原則として建築確認が必要です。再建築不可では難しいと考えてください。

Q. 火事や地震で建物がなくなったらどうなりますか?

A. 建て直せません。 土地だけが残り、その土地には家が建ちません。 これが再建築不可のいちばん大きなリスクです。火災保険には必ず入っておいてください。

Q. 固定資産税は安いのですか?

A. 評価額が低くなるため、税額も低くなる傾向があります。ただし解体して更地にすると住宅用地の特例が外れ、最大6倍になります。

Q. 相続放棄したほうがいいですか?

A. 他に相続したい財産があるなら、放棄すると全部を失います。 放棄は3か月以内で、預貯金なども含めてすべて放棄することになります。まず売れるかどうかを確かめてから判断してください。 詳しくはいらない実家は相続放棄できる?にまとめています。

Q. 相続土地国庫帰属制度は使えますか?

A. 建物があると使えません。 更地にする必要があります。また通路として他人が使っている、境界が不明といった土地は却下されます。 再建築不可の土地は、要件を満たしにくい傾向があります。

Q. 前面が私道です。持分を持っていないと売れませんか?

A. 売れないわけではありませんが、大きく不利になります。 私道の持分がないと、通行や掘削のたびに承諾が必要です。承諾書を取得できるなら、取ってから売るほうが価格に効きます。持分を分けてもらえないか、私道所有者に打診する価値もあります。

Q. セットバック済みと言われましたが、本当ですか?

A. 役所の道路台帳と、現地の状況で確認できます。 過去にセットバックしていても、後退部分に塀や門柱が残っていると、有効な後退と認められないことがあります。現地で実測してもらってください。

Q. 隣地の人が「買ってもいいが安くしろ」と言っています

A. 相場の根拠を持って交渉してください。 買取業者3社の提示額があれば、「この金額以下では業者に売ります」と言えます。比較対象がないと、言い値になります。

Q. 再建築不可でも、住宅ローン控除は使えますか?

A. そもそも住宅ローンが組めないことが多いため、実務上ほとんど問題になりません。仮に自己資金で買っても、住宅ローン控除は借入れが前提なので使えません。

Q. 家を解体せずに、建物だけ売ることはできますか?

A. 建物だけを売って、土地は貸す(借地にする)という形は理論上可能ですが、買い手がほぼつきません。 土地と建物をセットで売るのが現実的です。

Q. 空き家バンクには登録できますか?

A. 自治体によります。 再建築不可を受け付けない自治体もあれば、そのまま掲載する自治体もあります。 掲載は無料のことが多いので、仲介や買取と並行して試す価値はあります。

Q. 隣地の所有者も相続で揉めていて、話が進みません

A. 時期を待つのも判断です。半年〜1年後に、もう一度手紙を出すという進め方があります。その間は買取の査定を取っておき、いつでも動ける状態にしておいてください。

Q. 相続税評価が低いなら、持っていても損はないのでは?

A. 評価が低いのは、換金しにくいことの裏返しです。相続税は軽くなりますが、維持費は毎年出ていき、建物が朽ちるほど価値は下がります。 「税評価が低い=持ち続けてよい」ではありません。

Q. 43条2項2号の許可を取れば、住宅ローンは通りますか?

A. 通る可能性が出ますが、金融機関によって判断が分かれます。 許可は建築のたびに必要なので、「次も必ず取れる」保証がないためです。事前に金融機関に確認したうえで、買い手に説明してください。

Q. 買取業者に売った後、高く転売されていました

A. 買取は、業者がリスクと手間を負って再販する前提の取引です。差が出ること自体は仕組み上のものです。納得できる価格で売るには、複数社を比較し、隣地への打診も並行するしかありません。


まとめ|まず役所、次に隣地、最後に業者

再建築不可の実家を売るまでの順番

進める順番

  1. 公図・地積測量図を取る
  2. 役所の建築指導課で、前面道路の種別と接道の長さを確認する
  3. 2項道路なら、セットバックで建て替え可能。通常の物件として売る
  4. 2項2号の許可実績があるか聞く。あるなら取得を検討する
  5. 隣地所有者に手紙で打診する(複数あれば同時に)
  6. 隣地の一部を買って接道を満たせないか検討する
  7. それでも決まらなければ、買取業者に複数社から査定を取る
  8. 解体は、買主が決まってから

再建築不可の実家は「売れない」のではなく、「普通の売り方では売れない」だけです。

そして、最初の一歩は役所への電話です。費用はかかりません。 そこで「2項道路です」と言われれば、この記事の後半はすべて不要になります。

実家じまい全体の進め方は実家じまいの進め方に、売れないときの立て直しは実家が売れないに、告知事項がある場合は孤独死した実家は売れる?にまとめています。

出口は1つではない

再建築不可を専門に扱う業者は、43条の許可や隣地との一体化まで見て値段を出します。 「扱えない」と言われた物件でも、金額が出ることがあります。査定は無料で、決めていなくても構いません。

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本欄はプロモーションを含みます。掲載内容・条件は各サービスの公式サイトで最新のものをご確認ください。

この記事について

執筆:葉山 湊(はやま みなと)

自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。司法書士・税理士・宅地建物取引士・建築士などの資格は保有していません。制度や法令については、必ず一次情報(国土交通省・法務省・国税庁)にあたって記事に反映しています。

本記事の主な出典は次のとおりです。

・接道義務・許可の規定:建築基準法 第43条

・道路の定義・2項道路:建築基準法 第42条

・建築確認の対象(いわゆる4号特例の見直し):国土交通省「2025年4月(予定)から4号特例が変わります」

・囲繞地通行権:民法 第210条〜第213条

・住宅用地の課税標準の特例:地方税法 第349条の3の2

・特定空家・管理不全空家:空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年改正)

・被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

価格水準に公的な統計はなく、本記事の数値は取引実務で言われている目安です。本記事の内容は2026年9月7日時点の公表情報にもとづきます。 建築の可否は個別の敷地条件と自治体の運用によって変わります。実行前に必ず、対象地を管轄する特定行政庁と専門家にご確認ください。

この記事を書いた人
葉山 湊実家じまいガイド運営者

企業の財務・事業の調査(デューデリジェンス)や資産の評価を本業としています。費用は内訳と前提条件に分けて示し、制度や税金は法令と国税庁・法務省・国土交通省・各自治体などの一次情報で確かめて、出典と情報の時点を記事に明記しています。

税理士・司法書士・宅地建物取引士などの資格は保有していません。個別の税務・法律の判断は、専門家にご確認ください。

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