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久しぶりに実家の扉を開けたら、足の踏み場がなかった。
このとき最初に頭をよぎるのは、「いくらかかるのか」です。そして調べ始めると、「5万円から」と書いてある業者もあれば、「100万円かかった」という体験談もある。
10倍以上の開きがあるのは、費用の決まり方を誰も説明していないからです。
結論から言うと、片付け費用は「ゴミの量」ではなく「必要な人手と日数」で決まります。同じ2LDKでも、作業員2人で1日終わる現場と、6人で3日かかる現場では、金額が3倍以上違います。
そしてもう一つ、金額より先に確認すべきことがあります。その業者が、家庭のごみを回収できる許可を持っているかです。
環境省は、「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では家庭の廃棄物を回収できないと明確に注意喚起しています。チラシに「許可あり」と書いてあっても、それが正しい許可とは限りません。
この記事では、費用の決まり方と業者の見分け方を、条文と環境省の公表資料にもとづいて整理します。

結論|費用は「量」ではなく「人手と日数」で決まる

片付け業者の見積もりは、次の4つの掛け算でできています。
| 要素 | 内容 | 単価の目安 |
|---|---|---|
| 1. 作業員の人数×日数 | 人件費 | 1人1日 2万〜3万円 |
| 2. トラックの台数 | 運搬費 | 2tトラック1台 3万〜5万円 |
| 3. 処分費 | 廃棄物の処理料金 | 1立方メートル 5,000〜1万5,000円 |
| 4. オプション | 消臭・害虫駆除・ハウスクリーニング | 2万〜20万円 |
「ゴミの量」が効いてくるのは3だけです。全体の3〜4割にすぎません。
残りの6〜7割は、「何人が、何日かけて運び出すか」で決まります。
だから、こういう現場は高くなる
| 現場の条件 | なぜ人手と日数が増えるか |
|---|---|
| エレベーターなしの3階 | 階段で1つずつ運ぶ |
| 前面道路が狭くトラックが停められない | 台車で往復する |
| 貴重品を探しながら | 分別しながら進めるので遅い |
| 近隣に配慮して静かに作業 | 作業速度が落ちる |
| 害虫が発生している | 防護具着用で効率が下がる |
同じ量のごみでも、条件次第で倍以上違う理由がこれです。
間取り別の費用相場

現地の条件が標準的な場合の目安です。
| 間取り | 作業員 | 日数 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 1R・1K | 1〜2人 | 半日〜1日 | 3万〜12万円 |
| 1DK | 2人 | 1日 | 5万〜18万円 |
| 1LDK・2DK | 2〜3人 | 1日 | 8万〜25万円 |
| 2LDK・3DK | 3〜4人 | 1〜2日 | 15万〜45万円 |
| 3LDK・4DK | 4〜5人 | 2日 | 20万〜60万円 |
| 4LDK以上・一戸建て | 5〜8人 | 2〜4日 | 30万〜120万円 |
一戸建てで幅が大きいのは、庭・物置・車庫が含まれるかどうかです。
ゴミの堆積レベルで変わる
同じ間取りでも、ごみの深さで金額が動きます。
| レベル | 状態 | 上乗せの目安 |
|---|---|---|
| レベル1 | 床は見えている。物が多い程度 | 相場の下限 |
| レベル2 | 床の一部が見えない。足の踏み場はある | 相場の中間 |
| レベル3 | 床が完全に見えない。膝下まで堆積 | 相場の上限 |
| レベル4 | 腰から胸の高さまで堆積。天井近くまでの部屋がある | 相場の1.5〜2倍 |
| レベル5 | 生ごみ・排泄物があり、害虫が発生 | 特殊清掃が必要(別途10万〜50万円) |
レベル4以上は、見積もりの前提が変わります。「間取り別の相場」からは外れると考えてください。
費用の内訳を分解する

3LDKの一戸建て(レベル3)を例に、内訳を積み上げます。
| 費目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 人件費 | 4人 × 2日 × 2.5万円 | 20万円 |
| トラック | 4tトラック 2台 | 12万円 |
| 処分費 | 約25立方メートル × 8,000円 | 20万円 |
| 家電リサイクル(4品目) | 冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビ | 2万円 |
| 消臭・除菌 | 2部屋 | 4万円 |
| 合計 | 58万円 |
ここから買取(リサイクル)で差し引かれる分があります。
| 買い取ってもらえる可能性があるもの | 相場 |
|---|---|
| 製造5年以内の家電 | 数千円〜3万円 |
| 貴金属・時計 | 買取価格による |
| ブランド食器・骨董品 | 数千円〜数万円 |
| 未使用の日用品ストック | 数百円〜 |
買取で総額が10万円下がった例もあります。ただし過度な期待は禁物です。「買取で相殺できます」と強調する業者は、後から「値段がつきませんでした」と言うことがあります。
自分の家がどの要因に当たるかは、見積もりを1社取れば見えてきます。
高額になる5つの要因

見積もりが跳ね上がるのは、次の5つが絡んだときです。
1|搬出経路が悪い
エレベーターなし、階段が狭い、前面道路にトラックが停められない。運搬の効率が落ち、人数と日数がそのまま増えます。
2|床が抜けている・カビが広がっている
長期間の堆積で床材が傷んでいると、片付け後にリフォームが必要になります。床の張り替えは6畳で10万〜25万円です。
3|害虫・害獣が発生している
ゴキブリ、ハエ、ネズミ。駆除作業が追加され、作業員も防護具を着けるため効率が落ちます。駆除費用は3万〜15万円です。
4|臭いが染みついている
消臭は「換気」では取れません。オゾン脱臭機や薬剤散布が必要で、1部屋2万〜5万円。壁紙まで染みていれば、張り替えになります。
5|貴重品を探しながら作業する
「通帳と印鑑がどこかにあるはず」という現場は、一つずつ確認しながら進みます。作業日数が1.5倍になることも珍しくありません。
貴重品の捜索が必要な場合は、事前に「何を探しているか」を伝えてください。見つかったものを保管する手順が決まっている業者を選びます。
業者の許可を確認する

費用より先に確認すべきことです。
廃棄物処理法7条1項は、こう定めています。
一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域……を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。
つまり、家庭から出るごみを有償で運び出すには、その市区町村の「一般廃棄物収集運搬業」の許可が必要です。
産廃許可・古物商許可では回収できない
環境省は、この点を明確に注意喚起しています。
ご家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の「一般廃棄物処理業許可」や委託が必要です。「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できません。
産業廃棄物処理業許可は、工場や企業の廃棄物を処理するための許可です。古物商の許可は、中古品等の売買を行うための許可です。
これは、業者のチラシやサイトで最も多い誤解の元です。
| 掲げている許可 | 家庭ごみを回収できるか |
|---|---|
| 一般廃棄物収集運搬業許可 | できる |
| 市区町村からの委託 | できる |
| 産業廃棄物収集運搬業許可 | できない |
| 古物商許可 | できない(中古品の売買のみ) |
| 一般廃棄物処理業者との提携 | 提携先の許可番号を確認する |
| 遺品整理士の資格 | 許可ではない(民間資格) |
「許可番号あり」と書いてあっても、それが産廃の番号なら、家庭ごみは扱えません。
確認のしかた
- 見積書か名刺に許可番号があるか見る
- 「一般廃棄物」の許可かを読む(「産業廃棄物」なら別物)
- 実家がある市区町村の許可か確認する(隣の市の許可では回収できません)
- 市区町村のサイトで許可業者一覧を見る——多くの自治体が公開しています
4がいちばん確実です。業者名を検索する前に、自治体のリストを開いてください。
無許可営業の罰則
廃棄物処理法25条1項1号は、無許可営業を重く罰しています。
五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
懲役刑があるという点で、行政法規の中でも重い部類です。それだけ問題が多い分野だと考えてください。
そして、依頼した側にもリスクがあります。
- 回収された物が不法投棄され、そこから持ち主が特定される
- 個人情報を含む書類が適正に処理されない
- 「積んだ後で高額請求」される(トラック1台◯万円と言われ、降ろすなら別料金と言われる)
「無料回収」を掲げる業者には、とくに注意してください。処分には必ず費用がかかります。無料で成り立つなら、その先で何かが起きています。

悪質業者の手口

実際に多い手口を挙げます。どれも「契約前」に見抜けます。
| 手口 | 見抜き方 |
|---|---|
| 現地を見ずに安い金額を提示 | 必ず現地見積もりを求める |
| 「今日契約なら半額」と急かす | その場で契約しない |
| 見積書を出さない/内訳がない | 書面と内訳を必ずもらう |
| 積み込んでから追加請求 | 「追加料金は発生しますか」を書面で確認 |
| 「無料回収」でトラックに載せた後で請求 | 無料をうたう業者は使わない |
| 許可番号を聞くと話をそらす | 答えられない時点で終了 |
| 会社の所在地が不明・電話が携帯のみ | 登記や固定電話を確認 |
見積もりで必ず聞く6つ
- 一般廃棄物収集運搬業の許可番号を教えてください
- この見積もりに、追加料金が発生する条件はありますか
- 貴重品や重要書類が出てきたら、どうなりますか
- 処分場までの流れを教えてください
- 作業当日は何人・何日ですか
- キャンセルする場合の条件は
6つとも即答できる業者なら、まず安心です。言い淀む項目があれば、そこが後で問題になります。
見積書の読み方

見積書を受け取ったら、次の項目が分かれて書かれているかを確認します。
| 項目 | 書かれているべき内容 |
|---|---|
| 作業人数・作業日数 | 「4名×2日」と明記されているか |
| 車両 | 台数と車種(2t・4t) |
| 処分費 | 立方メートル単価か、一式か |
| 家電リサイクル料金 | 4品目は別建てが正しい |
| オプション | 消臭・害虫駆除・ハウスクリーニングの内訳 |
| 搬出条件 | 階段作業・長距離運搬の加算があるか |
| 追加料金の条件 | どんなときに、いくら増えるか |
| キャンセル料 | いつから、いくらか |
「一式」が多い見積書は危ない
「作業一式 45万円」だけの見積書は、比較ができません。
そして追加請求の余地が広いです。「一式に含まれていない」と言われたときに、反論する材料がありません。
まともな業者は、内訳を出すことを嫌がりません。「内訳をください」と伝えて渋られたら、その時点で候補から外して構いません。
相見積もりで比べるときのコツ
金額だけを横に並べても、条件が違えば比較になりません。
| 比べる軸 | 見るところ |
|---|---|
| 総額 | ただし条件が同じ場合に限る |
| 作業人日 | 4人×2日=8人日。ここが極端に少ない見積もりは、当日に増える |
| 処分費の単価 | 立方メートル単価で比べる |
| 含まれていないもの | 家電・エアコン取り外し・エアコン以外の設備 |
| 担当者の説明 | 質問に即答できるか |
「A社が一番安い」ではなく、「A社の見積もりは作業人日が半分だから安い」と読めるようになると、当日の追加請求を避けられます。
家電4品目は別扱い

家電リサイクル法の対象となる4品目は、ほかのごみと同じには捨てられません。
| 対象品目 | リサイクル料金の目安 |
|---|---|
| エアコン | 900〜2,000円程度 |
| テレビ(ブラウン管・液晶・プラズマ) | 1,300〜3,700円程度 |
| 冷蔵庫・冷凍庫 | 3,700〜6,000円程度 |
| 洗濯機・衣類乾燥機 | 2,300〜3,300円程度 |
※メーカーとサイズにより異なります
これに収集運搬料金(1台1,000〜3,000円程度)が加わります。
環境省は、料金を支払うと「家電リサイクル券」が発行され、その番号で自分の廃家電がメーカーに引き渡されたか確認できると案内しています。
片付け業者に頼む場合も、この費用は別建てで請求されるのが正しい形です。「全部込みで◯万円」とだけ書かれた見積書は、内訳を出してもらってください。
パソコンも別
パソコンは家電リサイクル法ではなく、資源有効利用促進法によりメーカーが回収します。PCリサイクルマークがあれば無料です。
データの消去は自分で行ってください。業者に任せる場合は、消去証明書が出るか確認します。
自分でやるか任せるかは、業者の見積額と比べてから決めてください。
自分で片付ける場合の費用

業者に頼まず、自治体のルールで処分する場合です。
| 費目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 可燃・不燃ごみ | 指定袋代のみ(1枚10〜80円) |
| 粗大ごみ | 1点200〜2,000円程度 |
| 清掃工場への直接搬入 | 10kgあたり100〜300円程度 |
| 軽トラックのレンタル | 1日5,000〜8,000円 |
| 段ボール・ゴミ袋・軍手・マスク | 5,000〜1万円 |
| 家電4品目 | リサイクル料金+運搬料 |
3LDKを自力で片付けた場合、実費は5万〜15万円程度に収まることが多いです。業者の3分の1以下です。
ただし、現実的かどうかは別
| 制約 | 内容 |
|---|---|
| 時間 | 3LDKなら、2人で毎週末に取り組んで2〜3か月 |
| 体力 | 重量物の運搬。腰を痛める事故が多い |
| 回収日 | 粗大ごみは週1〜月1。一度に大量は出せない |
| 近隣の目 | 大量のごみを出し続けることになる |
| 害虫・カビ | 防護具なしでの作業は健康リスクがある |
レベル3以上(床が見えない)なら、自力は現実的ではありません。
現実的な折衷案は、「分別と貴重品の捜索だけ自分でやり、運び出しは業者に頼む」です。処分量が減れば費用も下がります。
費用を抑える5つの方法

1|複数社から相見積もりを取る
同じ現場で、業者によって2倍の差が出ます。最低3社です。
一括見積もりサービスを使うと、一度の入力で複数社に依頼できます。現地調査の日程も、まとめて調整してもらえます。
2|自分で出せるものは先に出す
可燃ごみ、ペットボトル、古紙。自治体のルールで出せるものを減らしておくと、処分費と作業時間が減ります。
3|買取と組み合わせる
買取もできる業者に依頼すると、その分が相殺されます。ただし買取価格は事前に確定しないので、あてにしすぎないでください。
4|繁忙期を避ける
3月・4月(引っ越しシーズン)、年末は料金が上がります。5〜7月、9〜11月が狙い目です。
5|作業を分割しない
「まず1階だけ」と分けると、車両費と人件費が二重にかかります。一度で終わらせるほうが安く済みます。
一括見積もりサービスの使い方

3社に個別に連絡するのは、思った以上に手間です。1社ずつ電話し、住所と状況を説明し、日程を調整する。これを3回繰り返します。
一括見積もりサービスは、その最初の1往復をまとめてくれる仕組みです。
| 個別に依頼 | 一括見積もり | |
|---|---|---|
| 入力・説明 | 3社に3回 | 1回 |
| 日程調整 | 自分で3回 | 代行してくれることが多い |
| 業者の選定 | 自分で探す | 登録業者から紹介 |
| 費用 | 無料 | 無料(業者が手数料を払う) |
使うときの注意
1|許可の確認は自分でやる
サービスに登録されている=一般廃棄物の許可がある、とは限りません。紹介された業者についても、許可番号は自分で確認してください。
2|連絡方法を指定する
「メール希望」「連絡は18時以降」と書ける欄があるサービスを選ぶと、電話の集中を避けられます。
3|現地調査は必ず入れる
一括見積もりで出てくるのは概算です。正式な金額は現地調査の後になります。概算だけで契約しないでください。
4|断るときは早めに伝える
複数社から連絡が来ます。決めたら、他社にはすぐ断りの連絡を入れる。放置すると追いかけの電話が続きます。
使わないほうがよい場合
- すでに信頼できる業者を知っている
- 近隣に知られたくない事情があり、業者を厳選したい
- 特殊清掃が主で、専門性の高い業者を指名したい
「まず相場を知りたい」段階では有効です。業者が決まっているなら、直接依頼したほうが早く進みます。
依頼から作業完了までの流れ

実際に頼むと、どう進むのかを示します。
| ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 業者を3社選ぶ(許可を確認してから) | 1〜3日 |
| 2 | 現地見積もりを依頼 | 依頼から3日〜1週間 |
| 3 | 現地調査に立ち会う | 1社30分〜1時間 |
| 4 | 見積書を比較し、質問する | 2〜5日 |
| 5 | 契約し、作業日を決める | 作業日は1〜3週間先 |
| 6 | 貴重品の捜索リストを渡す | 契約時 |
| 7 | 作業当日(立ち会う) | 半日〜4日 |
| 8 | 仕上がりを確認し、支払う | 当日 |
依頼してから作業完了まで、2週間〜1か月半を見ておいてください。
現地調査に必ず立ち会う
写真や電話だけで見積もりを出す業者は避けてください。そして、現地調査には自分が立ち会います。
立ち会って伝えること。
- 探してほしいもの(通帳・印鑑・保険証券・写真・貴金属)
- 絶対に捨ててはいけないもの(仏壇・位牌・遺影・アルバム)
- 近隣への配慮が必要な事情(作業時間、駐車、挨拶)
- 鍵の受け渡し方法
「お任せします」は、後悔の元です。
作業当日に立ち会えないとき
遠方でどうしても行けない場合は、次の条件を満たす業者を選んでください。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 作業前・作業中・作業後の写真を送ってくれる | 何が処分されたか確認できる |
| 貴重品を見つけたら都度連絡してくれる | 判断を委ねない |
| 処分品の一覧を出してくれる | 後から「あれがない」を防ぐ |
| 鍵の管理方法が明確 | 預けっぱなしにしない |
少なくとも初日は立ち会うのが理想です。最初の数時間で、その業者の仕事ぶりが分かります。
分別の実務|何を残すか

作業が始まると、判断を求められる場面が連続します。先に決めておくと、当日が楽になります。
絶対に捨てないもの
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 金銭・権利 | 現金、通帳、印鑑、キャッシュカード、有価証券 |
| 契約書類 | 保険証券、年金手帳、不動産の権利証、賃貸借契約書 |
| 身分証明 | マイナンバーカード、健康保険証、運転免許証、パスポート |
| 税務 | 確定申告書の控え、固定資産税の納税通知書 |
| 供養に関するもの | 仏壇、位牌、遺影、過去帳、遺骨 |
| 記録 | アルバム、手紙、日記 |
紙類の中に通帳や権利証が紛れているのが、この手の現場の常です。「紙は全部捨てる」という指示は出さないでください。
迷ったら残す箱を作る
現場では、「これは要る?要らない?」を何百回も聞かれます。
そこで、「保留」の箱を用意します。判断に迷ったものは全部そこへ入れ、後日ゆっくり見る。これだけで作業速度が上がります。
買取に回せるもの
| 品目 | 注意点 |
|---|---|
| 製造5年以内の家電 | 動作確認できるもの |
| 貴金属・宝石 | 壊れていても値がつく |
| ブランド品・時計 | 箱や保証書があると高い |
| 骨董品・美術品 | 素人判断で捨てない |
| 古銭・切手 | 額面以上のことがある |
| 着物 | 証紙があると評価される |
「古いから価値がない」とは限りません。とくに骨董と古銭は、判断を専門家に回してください。
近隣や行政とトラブルになっているとき

すでに近隣から苦情が出ている、行政から連絡が来ているという段階なら、対応の順番が変わります。
ごみ屋敷条例
全国の多くの自治体が、いわゆる「ごみ屋敷条例」を制定しています。名称は「不良な生活環境の解消及び発生の防止に関する条例」などさまざまです。
多くの条例が、次の順で進む仕組みになっています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 実態調査 | 職員が状況を確認 |
| 2. 助言・指導 | 改善を求める |
| 3. 勧告 | 期限を切って改善を求める |
| 4. 命令 | 従わない場合、氏名の公表をする自治体もある |
| 5. 行政代執行 | 自治体が撤去し、費用を本人に請求 |
行政代執行になると、費用は全額本人の負担です。しかも業者選定に自分の意向は入りません。
勧告の段階までに自分で片付けたほうが、費用も内容も自分でコントロールできます。
敷地外にごみがあふれている場合
建物の外にごみが出ているなら、空家等対策特別措置法の「管理不全空家等」や「特定空家等」に指定されるリスクもあります。
指定されて勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が最大6倍になります。
詳しくは実家を空き家のまま放置する6つのリスクにまとめています。
相談先
| 状況 | 相談先 |
|---|---|
| 親の生活能力に不安がある | 地域包括支援センター |
| 認知症の疑いがある | 地域包括支援センター、かかりつけ医 |
| 近隣から苦情が出ている | 市区町村の環境課・生活衛生課 |
| 行政から通知が来た | 通知を出した部署に、まず連絡する |
| 業者とトラブルになった | 消費生活センター(局番なし188) |
行政からの通知を無視するのが、いちばん状況を悪くします。「片付ける意思がある」と伝えるだけでも、進み方が変わります。

特殊清掃が必要になるケース
通常の片付けと別料金になるのは、次の場合です。
| 状況 | 追加費用の目安 |
|---|---|
| 排泄物・体液がある | 10万〜50万円 |
| 害虫が大量発生 | 3万〜15万円 |
| 臭いが壁・床に染みている | 5万〜30万円 |
| 床材の撤去が必要 | 10万〜40万円 |
片付け業者と特殊清掃業者は、別の技能です。「特殊清掃も対応」と書いてあっても、実績を確認してください。
孤独死があった場合の費用は孤独死の特殊清掃費用はいくら?にまとめています。
片付けた後に売る場合もあります。まず回収と整理の見積もりで総額を確かめてください。
片付けたあと、どうするか

片付けは目的ではなく、次の判断のための前提です。
| その後の選択肢 | 片付けとの関係 |
|---|---|
| 売る | 室内が見えないと査定できない。片付けが必須 |
| 解体して売る | 解体費に残置物処分費が含まれるか要確認 |
| 賃貸に出す | 原状回復のリフォームが必要 |
| 親が住み続ける | 再びゴミ屋敷化しない仕組みが要る |
解体するなら、順番に注意
解体業者は、家財が入ったままでも解体できます。ただし残置物の処分費は「一般廃棄物」として別料金になり、割高になることが多いです。
先に片付けてから解体するほうが、総額では安くなるケースが多くあります。両方の見積もりを取って比べてください。
解体費用の相場は実家の解体費用はいくら?に、売却の判断は相続した実家におすすめの不動産一括査定サービス比較にまとめています。
親が住み続ける場合
片付けただけでは、また戻ります。
- 定期的に人が入る仕組みを作る(介護サービス、見守り、家事支援)
- ごみ出しを代行してもらう(自治体のふれあい収集など)
- 地域包括支援センターに相談する
本人を責めても解決しません。背景に認知症、うつ、セルフネグレクトがあることが少なくありません。
実家がゴミ屋敷になる理由

責める前に、何が起きていたのかを知っておいてください。
| 背景 | 何が起きているか |
|---|---|
| 身体機能の低下 | ごみ袋を持って階段を下りられない |
| 認知機能の低下 | 分別ルールが分からなくなる。収集日を忘れる |
| 配偶者との死別 | 生活の張りを失い、片付ける動機がなくなる |
| セルフネグレクト | 自分の生活に関心を持てなくなる |
| 物を捨てられない価値観 | 戦中戦後を知る世代に多い |
| 孤立 | 訪ねてくる人がいないので、片付ける必要がない |
「だらしないから」ではありません。多くは高齢化と孤立の結果です。
そして、親自身が「困っている」と言えないことが問題を長引かせます。恥ずかしさが先に立つからです。
よくある質問
Q. 親が片付けを拒否しています
本人の同意なしに家財を処分すると、後でトラブルになります。まずは「一部屋だけ」「使っていない部屋から」と範囲を区切って提案してください。全部を一度に、は通りません。
Q. 見積もりは無料ですか
多くの業者が現地見積もりを無料で行っています。ただし遠方の場合は出張費がかかることがあるので、依頼時に確認してください。
Q. 当日、追加料金を請求されました
見積書に「追加料金の条件」が書かれていなければ、支払う義務があるかは争えます。その場で支払わず、消費生活センター(局番なし188)に相談してください。
Q. 賃貸物件でもゴミ屋敷の片付けを頼めますか
頼めます。ただし原状回復の範囲は貸主との契約次第です。床や壁の損傷があると、片付け費用とは別に修繕費を請求されます。
Q. 遺品整理とゴミ屋敷の片付けは違いますか
作業は似ていますが、目的が違います。遺品整理は「残すものを選ぶ」作業を含み、仕分けに時間をかけます。ゴミ屋敷の片付けは「運び出す」ことが中心です。どちらの比重が大きいかを業者に伝えてください。
Q. 相続した実家がゴミ屋敷です。相続放棄したほうがいいですか
片付け費用と、他の相続財産の額を比べて判断します。片付けに60万円かかっても、預金が500万円あるなら相続したほうが手元に残ります。ただし相続放棄を検討中なら、家財に手をつけてはいけません(民法921条の法定単純承認)。判断はいらない実家は相続放棄できる?にまとめています。
Q. 作業中に近所から苦情が来ないか心配です
事前の挨拶で、ほとんど防げます。業者が代行してくれることも多いので、「近隣挨拶はしてもらえますか」と聞いてください。作業日・時間帯・トラックの駐車位置を伝えておけば、苦情はまず出ません。
Q. 火災保険や補助金は使えますか
通常の片付けには使えません。ただし自治体によっては、高齢者世帯向けのごみ出し支援や、ごみ屋敷対策の相談窓口があります。まず地域包括支援センターに相談してください。
まとめ

費用の決まり方
- 「ゴミの量」ではなく「人手と日数」で決まる
- 処分費は全体の3〜4割にすぎない
- 搬出経路の悪さ、貴重品の捜索が、金額を大きく動かす
相場
- 1R・1K 3万〜12万円/2LDK・3DK 15万〜45万円/一戸建て 30万〜120万円
- 床が完全に見えないレベル4以上は、相場の1.5〜2倍
- 自分でやれば5万〜15万円。ただし3LDKで2〜3か月かかる
業者選びで最優先すること
- その市区町村の「一般廃棄物収集運搬業」の許可があるか(廃棄物処理法7条1項)
- 産業廃棄物の許可、古物商の許可では家庭ごみを回収できない(環境省)
- 自治体サイトの許可業者一覧で確認するのが最も確実
- 無許可営業は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(同法25条1項1号)
- 「無料回収」を掲げる業者は使わない
費用を抑える
- 3社以上から相見積もり
- 自分で出せるものは先に出す
- 買取と組み合わせる
- 3〜4月と年末を避ける
- 作業を分割しない
片付けは、売却・解体・賃貸のすべての前提になります。室内が見えなければ、査定も設計もできません。
そして、親が住み続けるなら、片付けただけでは戻ります。背景にある孤立や身体機能の低下に手を打たないと、同じことが繰り返されます。
実家じまい全体の進め方は実家じまいの進め方に、空き家のまま放置するリスクは実家を空き家のまま放置する6つのリスクにまとめています。
量が多いときは、回収と整理を分けて見積もる
本文のとおり、不用品回収と遺品整理では料金の出し方が違います。 両方から見積もりを取って、安いほうに寄せるのが確実です。
本欄はプロモーションを含みます。掲載内容・条件は各サービスの公式サイトで最新のものをご確認ください。
この記事について
執筆:葉山 湊(はやま みなと)
自身の家族の実家じまいを経験し、そのときに「どこにも書かれていなかったこと」を出発点にこのサイトを立ち上げました。司法書士・税理士などの資格は保有していません。制度や法令については、必ず一次情報(法務省・国税庁・国土交通省・各自治体)にあたって記事に反映しています。
本記事の主な出典は次のとおりです。
・一般廃棄物処理業の許可・罰則:廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第7条第1項・第25条第1項第1号
・無許可の回収業者に関する注意喚起:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」
・家電リサイクル法の対象品目とリサイクル券:同上
費用は業者・地域・現場の状況により大きく異なります。本記事の内容は2026年9月5日時点の情報にもとづきます。 実際の依頼前には、必ず複数社の現地見積もりを取り、許可の有無を市区町村にご確認ください。

